海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン8第5話では、ハロウィンの夜、キャメロンが毎年キャンディを多めに取っていく男の子を「宿敵」と呼び、夫のミッチェルとの言い合いに発展します。
日本語ではどちらも「宿敵」と訳されがちな nemesis と archenemy ですが、響きや使われ方には違いがあります。夫婦の会話と、思いがけない真相が明らかになる場面を手がかりに、恨みや正義感をめぐる英語をまとめて見ていきます。
「nemesis」と「archenemy」、宿敵の呼び方
キャメロンは、毎年同じ男の子にキャンディをわしづかみにされることが許せません。ミッチェルに向かって、こう訴えます。
Cameron: You know what, Mitchell? That same little jerk grabs a handful of candy every year.
(ねえミッチェル、あのちびのいやな子、毎年キャンディをわしづかみにしていくんだよ。)Cameron: He’s my Halloween nemesis.
(あいつは僕のハロウィンの宿敵なんだ。)Cameron: There is a social contract.
(社会契約ってものがあるんだよ。)Cameron: You say “trick or treat,” you get one piece of candy.
(“トリック・オア・トリート”って言ったら、キャンディは1個。)Modern Family Season8 Episode5 (Halloween IV: Revenge of Rod Skyhook)
nemesis は「因縁の相手、なかなか打ち負かせない敵」を表す語です。特定の1人と何度もぶつかり合う関係を指すことが多く、キャメロンが「毎年」の相手をこう呼ぶのはその使い方に合っています。とはいえ子ども相手に使うには大げさな語で、その大げささも含めてキャメロンらしい言い方と読み取れます。social contract は本来は政治思想の用語ですが、ここでは「暗黙のルール」くらいの意味で大げさに使われており、その落差が笑いを生んでいます。
その後、卵を当てた犯人探しを続けるキャメロンに、ミッチェルはこう言います。
Mitchell: Cam, I feel terrible that you got hit with an egg, but you’re ruining the night for Lily.
(キャム、卵をぶつけられたのは本当に気の毒だと思うけど、リリーの夜が台無しだよ。)Mitchell: Do you have to nurse every single grudge?
(いちいち全部の恨みを抱え続けなきゃ気がすまないの?)Cameron: I don’t do that.
(そんなことしてないよ。)Mitchell: Are you kidding me? You have more archenemies than the actual Batman.
(冗談でしょ? 本物のバットマンより宿敵が多いじゃないか。)Modern Family Season8 Episode5 (Halloween IV: Revenge of Rod Skyhook)
archenemy の arch- は「主要な、第一の」を表す接頭辞で、「最大の敵」という響きがあります。漫画やアニメのヒーローの敵役を指す語としても使われるため、ミッチェルがバットマンを引き合いに出すのは自然な流れです。nemesis が「因縁」に重心があるのに対し、archenemy は「敵としての格」に重心があると言われることが多い語です。
My older brother was my nemesis in every board game.(兄はどのボードゲームでも宿敵だった。)のように、身近な張り合いを冗談めかして言うときにも使われます。
「nurse a grudge」と、味方をするということ
ミッチェルの nurse a grudge は、恨みを「看病する」ように大事に抱え続けるという言い方です。一般的には hold a grudge(恨みを持つ)が広く使われますが、nurse を使うと、わざわざ育てているような含みが加わります。ミッチェルに次々と例を挙げられたキャメロンは、ひとまずこう認めます。
Cameron: Okay, you know what? Maybe I do have an overdeveloped sense of justice.
(わかった、いいよ。確かに僕は正義感が強すぎるのかもしれない。)Mitchell: Thank you.
(どうも。)Cameron: But maybe I wouldn’t if my partner took my side every once in a while.
(でも、パートナーがたまには僕の味方をしてくれたら、こうはならないかもね。)Mitchell: I take your side when I agree with you.
(賛成できるときは味方してるよ。)Cameron: That’s easy.
(そんなの簡単だよ。)Cameron: Anybody can do that.
(誰にだってできる。)Cameron: Marriage is about sticking up for your partner, even when you don’t agree with him.
(結婚っていうのは、賛成できないときでもパートナーをかばうことなんだ。)Modern Family Season8 Episode5 (Halloween IV: Revenge of Rod Skyhook)
an overdeveloped sense of justice は「発達しすぎた正義感」が直訳で、「正義感が強すぎる」と自分の性分を認める言い方です。overdeveloped を付けると、長所が行き過ぎて短所になっているニュアンスが出ます。
後半の take someone’s side は「〜の側につく」で、どちらが正しいかの判断と結びつきやすい表現です。一方の stick up for ~ は「〜をかばう、擁護する」で、相手が責められている場面で守りに入る動きを表します。I’ll always stick up for you.(何があっても君をかばうよ。)のように、支える約束としても使えます。キャメロンは「賛成のときだけ味方するのは誰にでもできる」と言い、2つの言い方の違いをそのまま夫婦の問題に置き換えています。
「yank someone’s chain」と、黙っていられない理由
このやりとりの後、キャメロンを責める男の子の父親に向かって、ミッチェルが口を開きます。9歳の男の子とその父親の前での一幕です。
Father: What kind of person does that?
(どういう人間がそんなことをする?)Mitchell: I will
(僕が)Mitchell: I will tell you what kind of person.
(僕が教えてあげますよ、どういう人間か。)Mitchell: Someone who believes in a civilized society, who believes that the future of our country depends on the lessons that we teach our children.
(文明社会を信じ、この国の未来は子どもたちに教える教訓にかかっていると信じる人間です。)Mitchell: A hero.
(ヒーローですよ。)Modern Family Season8 Episode5 (Halloween IV: Revenge of Rod Skyhook)
What kind of person ~? は「どんな人間が〜するのか」と非難する問いかけで、ミッチェルはその言葉をそのまま受けて I will tell you what kind of person. と切り返します。相手の問いを引き取って答えに変える形が、反論の型として参考になります。少し前まで味方をめぐって言い合っていたミッチェルが、ここではキャメロンをかばっているのが見どころです。
ところが、卵を投げたのは別の人物だったことが分かります。
Boy: I didn’t do it!
(僕じゃないよ!)Mitchell: Oh, come on.
(よく言うよ。)Mitchell: We heard you laughing!
(笑い声が聞こえたんだ!)Boy: Cause the blonde lady with an Axe in her head threw an egg at you.
(だって、頭に斧が刺さった金髪の女の人が卵を投げたんだもん。)Mitchell: Blonde lady?
(金髪の女の人?)Cameron: Axe?
(斧?)Modern Family Season8 Episode5 (Halloween IV: Revenge of Rod Skyhook)
卵を投げた側であるクレアの言い分は、こう語られます。
Claire: That squirting flower really yanked my chain.
(あの水が飛び出す花には、本当に頭にきたのよ。)Claire: Could not go unanswered.
(やり返さずにはいられなかった。)Modern Family Season8 Episode5 (Halloween IV: Revenge of Rod Skyhook)
yank someone’s chain は「からかう」「いらだたせる」の意味で使われる口語表現です。go unanswered は「返事がないままになる」で、否定の could not go unanswered は「黙って見過ごすわけにはいかなかった」という言い分になります。その直前、ミッチェルとキャメロンが男の子の言葉を一語ずつ繰り返して聞き返す Blonde lady? Axe? は、驚きをそのまま示す短い疑問の作り方です。
まとめ|宿敵と恨みをめぐる英語
因縁に重心のある nemesis と、敵の格を表す archenemy、恨みを抱え続ける nurse a grudge、立場の違う take someone’s side と stick up for。宿敵騒動から、対立と味方を表す英語の使い分けが見えてきます。
『モダンファミリー』の夫婦の言い合いを観ながら、言葉の重心の違いに注目すると、表現を選びやすくなります。
パーティーの空気を動かす言い方や、途中で作戦を切り替えるひと言は同じ回のほかのコラムで、個々の表現の使い方はフレーズ記事で扱っています。


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