海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回の題材は、『ビッグバン★セオリー』シーズン9 第6話です。駐車場での怪しげな取引からアパートのソファまで、シェルドンが相手かまわず語の使い方を訂正し続ける、この回ならではの会話を追いかけます。
stalemate は本当に「こう着状態」なのか。3者の話に between を使ってよいのか。単語の選び方をめぐる応酬は、英語の語感を磨く格好の素材です。一緒に見ていきましょう。
「Not technically.」から始まる語の訂正
駐車場の場面。代金を先に渡すかどうかでヘリウムの取引が行き詰まり、相手がその状況を stalemate(こう着状態)という単語で形容します。これをシェルドンは聞き流しません。
Sheldon: Not technically. In chess, a stalemate refers to a situation in which there are no remaining moves.
(厳密には違うな。チェスでステイルメイトとは、指せる手が残っていない状況を指すのだ。)TBBT Season9 Episode06
Not technically.(厳密には違う)は、相手の言葉をおおむね受け止めつつ、定義のレベルで訂正を入れる切り出しです。続く X refers to a situation in which ~(Xは〜という状況を指す)は語の定義を述べるときの型で、辞書の説明文にもよく見られる形になっています。
この訂正を受けた相手は、長年 stalemate を使ってきたが、本当に言いたかったのは impasse(行き詰まり)だったと認めます。指せる手が残っていないのが stalemate、打開策が見つからないのが impasse。定義に立ち返ると、駐車場の状況に近いのは後者だと整理できます。
「We clarified nomenclature together.」が生む連帯感
同じ駐車場で取引をやり直す場面。相手が「ヘリウムは引き取るが代金は返さない」と告げると、シェルドンは思わぬ理屈で抗議します。
Sheldon: You’re taking advantage of us? We clarified nomenclature together.
(僕たちを食い物にするのか? 一緒に用語法をはっきりさせた仲じゃないか。)TBBT Season9 Episode06
nomenclature は「用語法・呼び方の体系」を指す硬い単語です。clarify(はっきりさせる)と組み合わせて、先ほどの語義のすり合わせを一緒に成し遂げた共同作業のように持ち出すのが、いかにもシェルドンらしい理屈です。
相手は、語義の脱線は嫌いではないが、これはあくまで商売だと切り返します。言葉の話とお金の話は別、という線引きの前に、用語法の連帯感は通用しませんでした。
take advantage of ~ も押さえておきたい表現です。「(人)につけ込む・(人)を食い物にする」という意味で、不当な扱いを受けたと抗議する場面で登場します。
「between」と「among」、そして「amongst」
場面は変わってアパート。レナードがウィキペディアのある慣用句についての記述を読み上げると、シェルドンは内容ではなく語の選び方に注目します。
Sheldon: How can you trust Wikipedia if they use between to refer to three parties?
(3者について between を使うようなウィキペディアを、どうして信用できるのだ?)TBBT Season9 Episode06
学校文法では、between は2者の間、among は3者以上の間に使うというのが基本の整理です。3者のことなのに between が使われている——シェルドンの不信感は、この原則に立った理屈だと読み取れます。
相手が among を挙げると、シェルドンはさらに一段古い形を持ち出します。
Sheldon: Or amongst, if they were feeling whimsically archaic.
(あるいは、気まぐれに古風ぶるなら amongst だな。)TBBT Season9 Episode06
amongst は among の異形で、セリフ自身が archaic(古風な)と評しているとおり、古めかしい響きを持つ形です。whimsically(気まぐれに)という副詞の選び方も含めて、語そのものを面白がる姿勢が最後まで一貫しているのが分かります。
記事の信頼性を中身ではなく前置詞の使い方で測る、という理屈の飛躍が笑いどころです。それでいて、between と among の使い分け自体はまっとうな文法知識として持ち帰れる、お得な場面でもあります。
まとめ|定義に立ち返ると会話が見えてくる
今回は、Not technically. の訂正の切り出し、X refers to ~ の定義の型、nomenclature と clarify の組み合わせ、between / among / amongst の使い分けを見てきました。語の定義に立ち返る姿勢は、シェルドンの理屈っぽさであると同時に、語感を磨く学習の入り口でもあります。
言葉の選び方ひとつで会話がどう転がるのか。『ビッグバン★セオリー』の世界をこれからも楽しんでいきましょう。
この回の英語は、他のコラムやエピソードまとめでも別の角度から扱っています。


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