海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『フレンズ』シーズン1第1話では、キャロルが荷物を運び出したその日の夜、ロスの部屋でジョーイとチャンドラーが新しい家具の組み立てを手伝います。落ち込むロスを前に、ジョーイが持ち出すのがアイスクリームを使ったたとえです。
不安を口にする言い方、たとえで言い返す型、そして同じ言葉が場面をまたいで繰り返される流れを、3つの場面から順に見ていきます。
「What if ~?」で、先の不安を口にする
家具を組み立てるふたりのそばで、ロスはこう切り出します。
Ross: You know what the scariest part is? What if there’s only one woman for everybody?
(何がいちばん怖いか分かる?もし誰にとっても、相手になる女性が1人しかいないとしたら?)
Ross: What if you get one woman and that’s it?
(1人の女性と出会って、それで終わりだとしたら?)
Friends Season1 Episode1(The One Where Monica Gets a Roommate)
You know what the scariest part is? は「何がいちばん怖いか分かる?」と、本題の前に相手の注意を引く前置きです。ここでも答えを待たずに自分で続けており、You know what the best part is? のように形容詞を入れ替えても使えます。
What if ~? は「もし〜だったらどうしよう」と、まだ起きていないことへの不安を口にするときの型です。if の後ろは現在形で、仮定の話でも過去形にしなくて構いません。2文目の and that’s it は「それで終わり」「それっきり」という意味で、後に何も続かないことを強調する言葉です。
ロスの2つの問いは、どちらも「もし1人しかいないなら」という同じ不安を言い方を変えて重ねたものです。英語では、こうして What if を続けて並べることで、不安が膨らんでいく様子を表すことができます。このあとジョーイが返すのは、その不安をたとえで崩す言葉です。
「That’s like saying ~」で、たとえて言い返す
ロスの言葉を聞いたジョーイは、すぐに言い返します。
Joey: What are you talking about?
(何言ってんだよ。)
Joey: That’s like saying there’s only one flavor of ice cream for you.
(それって、お前にはアイスクリームの味が1つしかないって言ってるようなもんだぞ。)
Friends Season1 Episode1(The One Where Monica Gets a Roommate)
What are you talking about? は直訳すると「何の話をしているの?」ですが、ここでは「何を言ってるんだ」と相手の考えに反対する働きをしています。相手の言葉をそのまま受け止めず、まず「おかしい」と示してから自分の考えを出す、という流れの入り口になる一文です。
That’s like saying ~ は「それは〜と言うようなものだ」という意味で、相手の考えを別のものに置き換えて、その無理を見せる型です。ジョーイは「相手は1人しかいない」というロスの考えを「アイスの味は1つしかない」に言い換えました。アイスの味が1つではないことは身近な事実なので、置き換えた瞬間に、ロスの考えが行き過ぎだと伝わる仕組みです。
ジョーイはこのあとアイスの味やトッピングの名前をいくつも挙げ、「This is the best thing that ever happened to you.」と言ってから、こう締めくくります。
Joey: Welcome back to the world. Grab a spoon.
(おかえり、世の中へ。スプーンを持てよ。)
Friends Season1 Episode1(The One Where Monica Gets a Roommate)
Welcome back to ~ は「〜へおかえり」で、しばらく離れていた場所や状態に戻ってきた人を迎えるときに使われます。Grab a spoon. はたとえの続きで、「いろいろな味があるのだから、スプーンを持って食べ始めよう」、つまり新しい出会いに手を伸ばせという意味になります。一般的な決まり文句ではなく、この場面のたとえの中で意味が生まれている一言です。
「Grab a spoon」が、場面をまたいで繰り返される
別の場面で、ロスはジョーイの言葉を自分から持ち出します。
Ross: Grab a spoon. Do you know how long it’s been since I grabbed a spoon?
(スプーンを持て、か。俺がスプーンを持ったのなんて、どれだけ前だと思う?)
Friends Season1 Episode1(The One Where Monica Gets a Roommate)
Do you know how long it’s been since ~? は「〜してからどれだけたつか分かる?」という意味で、長いあいだ何かをしていないことを訴えるときの言い方です。since の後ろは過去形で、ここでは grabbed が入ります。ロスはこの場面で続けて、たとえ女性を誘えるところまで立ち直れたとしても、誰を誘えばいいのかと口にします。
物語の終わり近く、ロスはレイチェルとふたりで話し、高校時代の気持ちを打ち明けます。そのあと部屋に入ってきたモニカとのやりとりがこちらです。
Monica: What’s with you?
(どうしたの?)
Ross: I just grabbed a spoon.
(今、スプーンを持ったんだ。)
Friends Season1 Episode1(The One Where Monica Gets a Roommate)
What’s with you? は「どうしたの?」と、普段と様子が違う相手に、理由を尋ねるくだけた聞き方です。ロスの答えは、ジョーイのたとえを自分の行動に当てはめたものです。モニカはジョーイの話の場にいなかったため、この一言の背景を知らないまま聞くことになります。最初は否定的に繰り返していた言葉を、ロスが自分の一歩として言い直すまでの流れが、3つの場面でつながります。
まとめ|たとえで背中を押す英語
What if ~? で不安を口にし、That’s like saying ~ でたとえて言い返し、Grab a spoon. で次の一歩を促す流れを見てきました。たとえの言葉は、場面をまたいで繰り返されることで新しい意味を帯びていきます。
ジョーイの一言がロスの中でどう変わっていくのか、『フレンズ』を観ながら追いかけてみるのもひとつの楽しみ方です。
同じ回のほかのコラムやフレーズ記事では、レイチェルやモニカのやりとりから別の英語も扱っています。


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