海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回扱うのは、『ビッグバン★セオリー』シーズン3 第15話に登場する、恋人のいないラージが「彼女がいなくてもバレンタインは楽しめる」と宣言する場面です。周囲がスイス出張やレストランの予約でバレンタインの予定を固めていく中、恋人のいないラージだけが違う立場に置かれています。毎年恒例のロティサリーチキンから一転、自分のための一日を宣言するラージの姿には、独身のバレンタインの過ごし方の一つの型が見えてきます。
「I’m going to have a me day.」という一言から見ていきましょう。
毎年恒例だった、ロティサリーチキンでの一人の夜
同僚たちがそれぞれのバレンタインの予定を披露し合う朝の場面で、恋人と過ごす予定を語る面々の中、冒頭でラージだけが、恋人がいない自分の毎年のバレンタインの過ごし方を、こう振り返っています。
Raj: Well, if anyone’s interested, I’ll be spending this Valentine’s Day the same way I spend every Valentine’s Day. Buying a rotisserie chicken from the supermarket, taking it home, standing over the sink and eating it out of the package with my bare hands like an animal.
(まあ、興味があるなら教えるけど、今年のバレンタインも毎年と同じように過ごすつもりだよ。スーパーでロティサリーチキンを買って、家に持ち帰って、シンクの前に立って、パックのまま素手で動物みたいにかぶりつくんだ。)TBBT Season3 Episode15 (The Large Hadron Collision)
自嘲気味に語られるこの”恒例行事”は、恋人がいない状態でバレンタインを迎えることへの、ある種の諦めが込められた過ごし方として描かれています。standing over the sink(シンクの前に立ったまま)、with my bare hands(素手で)という具体的な描写の積み重ねが、”毎年同じことの繰り返し”という諦めのニュアンスを強めています。the same way I spend every Valentine’s Day(毎年のバレンタインと同じように)という言い回しも、変化のない過ごし方をあえて自分から先に言ってしまう自虐的な語り口を支えています。この場面が、後半で描かれるもう一つの過ごし方との対比の起点になっています。
恋人がいなくても楽しめると宣言するラージ
エピソード後半、ラージは方針を変えてこう宣言します。
Raj: You know what? Even though I don’t have a girlfriend, I can still have a good time on Valentine’s Day.
(ねえ、恋人がいないからって、バレンタインを楽しめないわけじゃないよ。)TBBT Season3 Episode15 (The Large Hadron Collision)
Even though I don’t have a girlfriend, I can still have a good time. は、「〜がなくても、それでも〜できる」と、恋人の有無を条件にせず自分の一日を楽しもうとする発想を端的に言い表す一言です。You know what? という前置きは、これから話す内容への注意を引く合図で、ここでは冒頭の諦めムードから一転した宣言であることを際立たせています。still は「(状況が変わらなくても)それでもなお」という意味合いを添える語で、恋人がいないという条件を変えずに「それでも楽しめる」と言い切る強さを支えています。これに対して、恋人がいるはずのハワードが懐疑的な反応を返します。
Howard: Trust me, you can’t. I’ve tried.
(信じろって、無理だから。俺も試したことあるんだ。)TBBT Season3 Episode15 (The Large Hadron Collision)
冒頭の”恒例行事”での諦めムードから一転、恋人の有無にかかわらず自分の一日を楽しもうとする姿勢へと切り替わる流れが、この対比から見えてきます。Trust me, you can’t. I’ve tried. という軽口も、恋人がいる立場からの茶化しとして描かれており、ラージの宣言に対する周囲の温度差がそのまま表れている場面です。それでもラージが自分の計画を引っ込めずに続けていく点が、次のH2で見る「me day」の具体的な中身につながっていきます。
「me day」の中身と、自分をいたわる過ごし方
懐疑的な反応にもめげず、ラージは自分なりの一日の過ごし方を組み立てていきます。
Raj: No, no, no, I’m going to have a me day. First I’m going to go to one of those spas in Koreatown, take a steam and get a massage. Then I’m going to stop at a pet store and get licked by puppies.
(いやいやいや、僕は自分のための一日を過ごすんだ。まずコリアタウンのスパに行って、スチームを浴びてマッサージを受ける。それからペットショップに寄って、子犬たちに舐めてもらうんだ。)TBBT Season3 Episode15 (The Large Hadron Collision)
a me day は、「自分のための一日」を指す口語表現で、恋人の予定に左右されず自分自身をいたわることに時間を使う一日という発想を端的に表しています。First … Then … という組み立て方で、スパでのスチームとマッサージ、ペットショップでの触れ合いという二つの予定を順番に並べているのも、思いつきではなく前もって計画された一日であることを感じさせます。ラージが挙げるこれらの過ごし方は、いずれも自分へのご褒美として位置付けられる過ごし方の一例です。
恋人がいることを前提にしたイベントとして扱われがちなバレンタインデーですが、英語圏では treat yourself(自分にご褒美をあげる)という発想のもと、恋愛関係の有無にかかわらず自分自身をケアする日として捉え直す過ごし方も一般的になってきているとされます。スパでのトリートメントやマッサージは、こうした「自分をいたわる時間」の代表的な過ごし方の一つとして紹介されることが多く、恋人と過ごす特別な一日というバレンタインデーの一般的なイメージとは異なる楽しみ方を示しています。日本語の「ご褒美デー」に近い響きを持つ表現ですが、贈り物という形ではなく、時間や体験を自分自身に差し出すという点に特徴があります。冒頭のロティサリーチキンの”恒例行事”と、この「me day」宣言という二つの過ごし方が並んで描かれているのも、独身のバレンタインの過ごし方には複数のスタイルがあることを示していると言えます。
まとめ|恋人の有無に左右されない、自分のための一日
Even though I don’t have a girlfriend, I can still have a good time.、a me day、treat yourself。恋人がいないことを理由にせず、自分自身のために一日を組み立てる発想と、その具体的な過ごし方が、ラージの宣言には表れています。毎年恒例のロティサリーチキンから、スパとペットショップを組み合わせた「me day」へ。同じ独身のバレンタインでも、過ごし方の選び方一つで印象が大きく変わることも見えてきます。
『ビッグバン★セオリー』を観ながら、登場人物それぞれのバレンタインの過ごし方を見比べてみるのも面白いところです。
このエピソードの他のコラムやフレーズ記事もあわせて読むと、場面全体の英語がより立体的に見えてきます。


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