海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
素性のよく分からない相手が、実は特定の分野に恐ろしく詳しいと知らされて、ぞっとするような場面が、犯罪ドラマにはよくあります。
そんな緊張感の中で登場する「know one’s way around something」を、『ホワイトカラー』シーズン2第4話の中盤、危険な武器密売人の正体をピーターが明かす場面から、一緒に見ていきましょう。
「know one’s way around something」の意味とニュアンス
know one’s way around something
意味:(物事に)精通している、扱いに慣れている
know one’s way around は、道に迷わず目的地へたどり着けるほど土地に詳しいという意味から転じて、特定の分野・道具・場所などの扱いに習熟していることを表す口語表現です。around の後に来る対象は、街や建物といった場所に限らず、機械や専門分野など幅広い名詞に置き換えられます。
新しい職場やソフトウェアに早くも慣れてきた様子を語るときにも、武器や道具の扱いに慣れた人物を描写するときにも使える、応用範囲の広い表現です。ある人物のスキルや経験の豊富さを、さりげなく伝えたいときに重宝します。
be good at something(何かが得意だ)と似た場面でも使えますが、know one’s way around には、単なる得意・不得意を超えて「その世界の勝手が分かっている」という、経験に裏打ちされた馴染み深さのニュアンスが加わります。
【ここがポイント!】
- 「know one’s way around」の核は、迷わず勝手が分かっているという感覚
- 場所・道具・分野など、around の後ろを入れ替えれば応用範囲が広がる表現
- 何に精通しているかで、褒め言葉にも警戒すべき情報にもなる点を読み取るのがコツ
『ホワイトカラー』S02E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
危険な武器密売人ナバロの元へ無断で足を踏み入れてしまったニールとモジーの前に、ピーターが割って入ります。動揺するモジーを前に、ピーターがナバロの正体を明かして核心を突く質問を投げかけ、それにニールが答える場面に注目です。
Mozzie: That’s what you’d expect me to do.
(僕がそうすると、お前は思っていたんだろ。)Peter: All right, this is not a game. That guy that you walked in on… Cristofer Navarro, Colombian. Washed his hands of drugs, moved on to weapons and racketeering. Knows his way around a machete and a handgun. He’s been on our radar for a long time. How’d he get on yours?
(いいか、これは遊びじゃないんだぞ。お前たちが乗り込んだあの男は……クリストファー・ナバロ、コロンビア人だ。麻薬からは足を洗って、武器と恐喝に手を出している。マチェーテと拳銃の扱いに精通している。うちも前々からマークしていた男だ。どうやってお前らのレーダーに引っかかったんだ?)Mozzie: An acquaintance of mine left margo’s diner this morning and has not been seen since.
(知り合いが今朝マーゴのダイナーを出たきり、それ以来姿を見せていないんだ。)Neal: He was worried about her, so we stopped by her apartment.
(彼が彼女のことを心配していたから、僕たちは彼女の部屋に立ち寄ったんだ。)White Collar Season2 Episode4 (By the Book)
シーン解説と心理考察
モジーが「僕がそうすると、お前は思っていたんだろ」とはぐらかすように返すと、そこへピーターが割って入り、「これは遊びじゃない」と厳しい口調でナバロの正体を明かします。
麻薬から手を引き、武器と恐喝に手を染め、マチェーテと拳銃の扱いに精通しているという説明から、ナバロがいかに危険な人物であるかが伝わってきます。そのうえでピーターが「うちも前々からマークしていた男だ。どうやってお前らのレーダーに引っかかったんだ」とモジーに水を向ける瞬間には、FBIの正式な捜査線上にいた人物と、裏社会の情報網を持つモジーの世界が思いがけず交差したという緊張感が漂います。
この問いに、モジーは知り合いがマーゴのダイナーを出たきり姿を見せていないとだけ答え、続けてニールが「彼が彼女のことを心配していたから、僕たちは彼女の部屋に立ち寄ったんだ」とここまでの経緯を補足します。モジーが素性を多くは語らないところに、事情をすぐには明かそうとしない彼らしい慎重さがにじみ、すかさず言葉を継ぐニールとのコンビネーションの良さも、このやり取りから伝わってきます。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
初めて訪れた街でも、何度も歩き回るうちに近道や目印を覚えて、道が分かるようになる感覚を思い浮かべてみましょう。know one’s way around はまさにその「勝手が分かっている」感覚を、道以外の物事にも広げた表現です。
劇中では、危険な男が「マチェーテと拳銃の扱いに精通している」という物騒な文脈で使われていましたが、根っこにあるのは同じ「勝手知ったる」感覚です。街の地図を思い浮かべながら、対象を武器や機械、専門分野に置き換えていくと、この表現の幅広さが実感として身につきます。
覚えておきたいのは、この表現が「知識として知っている」のではなく「体が覚えるほど慣れている」状態を指す点です。know about は情報として知っているだけの場合にも使えますが、know one’s way around は実際に何度も足を運び、手を動かした経験の裏付けがあってはじめて使える表現です。
例文で覚える「know one’s way around something」
料理からキャリアの話まで、know one’s way around something が使われる3つの場面を見ていきましょう。
He definitely knows his way around a kitchen; the food was amazing.
(彼は間違いなく料理の腕が立つ。料理は最高だった。)
武器以外の日常的な対象への応用例です。料理上手な人物をさりげなく褒める使い方です。
As a former mechanic, she knows her way around any engine.
(元整備士の彼女は、どんなエンジンにも精通している。)
専門的な経歴を紹介する場面です。職業経験の裏付けとして機能しています。
A: She’s new to the company, but she already knows her way around the software.
B: Yeah, she picked it up faster than anyone else on the team.
(A:彼女は入社したばかりだが、もうそのソフトの扱いに慣れている。)
(B:うん、チームの誰よりも早く覚えていたよ。)
新人の飲み込みの早さを評価する会話です。
あわせて覚えたい関連表現
be well-versed in something
((ある分野に)精通している)
know one’s way around がやや口語的でカジュアルな響きを持つのに対し、be well-versed in はよりフォーマルで、学術的・専門的な分野について語る際に好まれる表現です。
have a knack for something
(コツをつかんでいる、才能がある)
know one’s way around が経験による習熟を表すのに対し、have a knack for は生まれ持った才能やセンスのニュアンスがより強く出ます。
be no stranger to something
((何かに)慣れている、初めてではない)
know one’s way around が積極的な熟練度を表すのに対し、be no stranger to something は経験済みで抵抗がないという、やや消極的なニュアンスも含みます。困難な状況に慣れているという文脈でもよく使われる表現です。
Note|道に迷わない感覚から生まれた「精通している」という言い回し
know one’s way around という言い回しの根っこには、文字通り「道を知っている」という、非常に古くからある身体的な感覚があります。
around という前置詞は、もともと「あるものの周囲を回る」という空間的な動きを表す語で、one’s way around とセットになることで「目的地までの道筋、周辺の地理」を指すようになりました。地図もカーナビもなかった時代、見知らぬ土地で迷わず歩けることは、その土地に住み着いた人間の証でもありました。know one’s way around a city(街の地理に詳しい)という使い方は、この最も直接的で古い意味を今も保っています。
この「道に迷わない」という具体的な感覚が、時代とともに比喩的に拡張され、道以外のあらゆる対象に応用されるようになりました。台所という around、エンジンの内部という around、ソフトウェアの画面という around。対象が物理的な土地から、専門分野や道具の「勝手」へと広がっていく過程は、英語の空間的な語彙が抽象的な習熟度の表現へと転用されていく典型例です。
劇中でピーターが武器密売人ナバロを評して使った know his way around a machete and a handgun という一言も、この拡張の延長線上にあります。土地勘ならぬ「武器勘」とでも言うべき習熟度を、たった一つの前置詞句で表現しているわけです。
道に迷わないという素朴な身体感覚が、専門分野への精通という抽象的な評価にまで広がっている。その変遷をたどると、このフレーズの持つ具体性の強さがより実感として伝わってきます。
まとめ|迷わず動ける「勝手知ったる」感覚
know one’s way around something は、道に迷わないほど土地に詳しいという感覚を、道具や分野など幅広い対象に応用した表現です。街の地理を思い浮かべながら覚えておけば、料理でも機械でも専門分野でも、自然に意味をつかめます。
新人の飲み込みの早さを評価するときも、経歴に裏付けられたスキルを紹介するときも、この一言があれば表現の幅が広がります。
危険な人物の正体を説明する中でこの表現を使ったピーターの一言には、捜査官としての情報の正確さと、部下を守ろうとする緊張感が同時ににじんでいました。武器の扱いに精通した相手と、裏社会の情報網を持つモジーの世界が交わる瞬間として、記憶に残る場面です。
道に迷わないという素朴な感覚が、危険な相手を評する重い一言にまでつながっている。その振れ幅の大きさも、この表現の面白さのひとつです。


コメント