海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
誘われた趣味や集まりに気乗りしないとき、はっきり「嫌い」とは言わずに、やんわりと興味のなさを伝えたくなる場面が、ドラマには時々あります。
そんな場面にぴったりの「not one’s thing」を、『ホワイトカラー』シーズン4第13話の中盤、クラブの裏手で兄弟がやり取りをする中、弟のアンジェロが店の出演者への無関心をさらりと口にするシーンから、一緒に見ていきましょう。
「not one’s thing」の意味とニュアンス
not one’s thing
意味:自分の好みではない
not one’s thing は、thing(もの・こと)という万能な口語表現を使い、「それは自分の得意分野・好みの対象ではない」という穏やかな拒否や関心のなさを表す言い回しです。強い嫌悪感を示す言葉ではなく、「向いていない」「ピンとこない」程度の柔らかいニュアンスで使われることが多い表現です。
isn’t really my thing や ain’t my thing のように、be動詞の否定形と一緒に使われるのが基本の形で、誘いをやんわりと断るときや、自分の得意でない分野についてさらりと話すときによく登場します。断定的に否定するのではなく、あくまで自分の好みの範囲外だと伝える、その距離の取り方に英語らしい柔らかさが表れています。「嫌い」と言い切ってしまうと相手を否定するような響きが出てしまいますが、not one’s thingであれば、単に自分には合わないというだけの、対象への評価を含まない言い方に留められます。
【ここがポイント!】
- 「not one’s thing」の核は、thingという万能名詞で「好み・関心事」全般を指す発想
- 強い嫌悪ではなく、向いていない・ピンとこない程度の柔らかい否定
- 誘いを断るときも得意分野を話すときも、角を立てずに使える万能フレーズ
『ホワイトカラー』S04E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
クラブ裏手のバックルームで、店主デルモンと弟アンジェロが金曜の再オープンと書類鞄の受け渡しをめぐってやり取りをしています。金曜には来ないつもりかと兄に問い詰められたアンジェロが、出演予定のジャズ演奏への無関心を口にする一言に注目です。
Angelo: What? There’s a “no swapping briefcases” rule?
(何だよ、「書類鞄の受け渡し禁止」なんてルールでもあるのか?)Delmon: I just don’t want you getting into trouble.
(お前が面倒に巻き込まれるのが嫌なだけだ。)Angelo: Then help me out. Now, open the safe.
(なら手を貸してくれよ。さあ、金庫を開けて。)Delmon: So you’re not coming on Friday?
(じゃあ、金曜には来ないつもりか?)Angelo: I told you. Dusty jazz acts ain’t my thing.
(前にも言っただろ。古臭いジャズなんて僕の好みじゃない。)White Collar Season4 Episode13 (Empire City)
シーン解説と心理考察
書類鞄の受け渡し計画をめぐって、デルモンとアンジェロの兄弟は微妙にかみ合わないやり取りを続けています。金曜に来るかどうかを念押しされたアンジェロは、はぐらかすように「古臭いジャズなんて僕の好みじゃない」と切り返し、兄が力を入れている店の出演者への無関心をあっさり口にします。裏では違法な受け渡しを進めながら、表向きは店の趣味の話に興味がなさそうに振る舞う、そのちぐはぐさが会話の緊張感をやわらげています。兄が大切にしている店の方向性に対して弟が抱く温度差が、この短いやり取りの中にじわりと表れています。本題である受け渡しの計画からさりげなく話をそらすような答え方にも、この場をやり過ごそうとするアンジェロの立ち回りのうまさが見え隠れしています。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
not one’s thing を覚えるコツは、自分の手元にすっと収まるはずの「thing(もの)」が、自分のものではなくよそへするりと流れていくイメージを思い浮かべることです。thing自体は「もの・こと」全般を指す万能な単語で、not one’sを付けるだけで「自分のもの(好み)ではない」というシンプルな否定になります。
劇中のアンジェロのように、興味のなさを深刻ぶらずに伝える軽いトーンで使われる点も合わせて覚えておくと実践的です。手元からするりと逃げていく「thing」のイメージを持っておけば、誘いを断る場面でも自然に口から出てきます。
例文で覚える「not one’s thing」
誘いを断る場面から得意不得意を語る場面まで、not one’s thing を、3つの例文で確認していきましょう。
Thanks for the invite, but karaoke really isn’t my thing.
(誘ってくれてありがとう、でもカラオケは僕の好みじゃないんだ)
誘いを柔らかく断る日常会話の場面です。Thanks for the invite を添えることで、断りながらも感謝の気持ちが伝わります。
Modern jazz just isn’t my thing; I prefer classic rock.
(モダンジャズは僕の好みじゃなくて、クラシックロックの方が好きなんだ)
音楽の好みについて話す場面です。I prefer 以下を続けることで、単なる否定ではなく好みの方向性まで伝わります。
A: Want to come rock climbing this weekend?
B: Thanks, but extreme sports aren’t really my thing.
(A:今週末ロッククライミングに来る?)
(B:ありがとう、でも過激なスポーツはあまり僕の好みじゃないんだ)
趣味の誘いを断るカジュアルな会話です。Thanks, but の型を覚えておくと、様々な誘いにそのまま応用できます。
あわせて覚えたい関連表現
not my cup of tea
(自分の好みではない)
not one’s thing とほぼ同じ意味を持ちますが、やや古風で英国的な響きを持つ定番表現です。趣味や好みについて使われることが多い言い回しです。
not for me
(自分には向いていない)
よりシンプルでカジュアルな表現です。thingほど「得意・不得意」の含みは強くなく、単純な好みの表明に近いニュアンスになります。食べ物や活動の好き嫌いを気軽に伝えたいときに向いています。
I’m not really into it
(あまり興味がない)
thingのような名詞的な表現ではなく、動詞的に「はまっていない」ことを伝える表現です。会話でより頻繁に使われる言い回しで、対象を漠然と指したいときに便利です。
Note|「thing」という万能語が担う、日本語に一語で移せない領域
英語のthingという単語は、「もの」「こと」だけでなく、「好み」「関心事」「趣味」「専門分野」まで幅広く指し示せる、驚くほど守備範囲の広い名詞です。not one’s thing のほかにも、do one’s own thing(自分のやり方を通す)、make a big thing of it(大げさに騒ぎ立てる)など、thingを軸にした口語表現は数多く存在します。
日本語でこの守備範囲をそのまま一語に置き換えようとすると、うまくいきません。「好み」「関心事」「性分」「柄」など、文脈ごとに違う日本語を当てはめる必要が出てきます。日本語がその都度具体的な語を選ぶのに対し、英語はthingという抽象度の高い一語に意味を委ね、前後の文脈で具体的な中身を補わせる発想を取っているとも言えます。この一語で済ませる発想は、話し手にとっても聞き手にとっても、いちいち対象を具体的に言い換える手間を省く効率の良さを持っています。
劇中でアンジェロが口にした ain’t my thing も、まさにこの抽象性を生かした使い方です。「ジャズという趣味・関心事」全体を thing という一語でまとめて指し示すことで、細かい説明を省きながらも意味がすっと伝わる、簡潔さのある言い回しになっています。
一語に多くを託す発想の違いが、日本語話者にとってのthingの面白さであり、難しさでもあります。
まとめ|角を立てずに好みを伝える一言
not one’s thing は、強い拒否感を出さずに「自分の好みではない」と柔らかく伝えられる表現です。thingという万能語が「好み・関心事」全般を指すという発想を覚えておけば、誘いを断る場面でも得意不得意を語る場面でも自然に使いこなせます。
友人からの誘いに気乗りしないときも、自分の得意でない分野についてさらりと話すときも、この一言があれば角を立てずに気持ちを伝えられます。
出演予定のジャズへの無関心をさらりと口にしたアンジェロの姿には、裏で違法な取引を進めながらも表向きは飄々と振る舞う、そのちぐはぐな二面性が表れていると言えます。深刻ぶらずに好みを伝える、そんな軽やかな言い回しとして、会話のレパートリーに加えてみてください。


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