海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手の意見が正しかったと認めたあとで、「あとでこの件を持ち出さないでね」とひとこと添えたくなった経験はありませんか。
そんな状況にぴったりの「throw this in my face」を、『モダンファミリー』シーズン4第22話の後半、ヘイリーをほめようとするアレックスの一言から、一緒に見ていきましょう。
「throw this in my face」の意味とニュアンス
throw this in my face
意味:これを持ち出して(あとで)私に突きつける、蒸し返して言い返す
throw something in someone’s face は、相手が過去に言ったことや認めたこと、失敗などを、あとから持ち出して相手に突きつける表現です。直訳は「something を someone の顔に投げつける」で、投げつけられるのは、過去の発言や失敗、貸しといった内容です。
本来は、責める場面やとがめる場面で使う表現です。口論のさなかに、相手の過去の失敗を持ち出して責めるような状況を表します。ただし、今回のシーンのように、「あとで蒸し返して、からかわないでほしい」という軽い冗談の意味で使われることもあります。
形は throw A in someone’s face で、A に何を持ち出すのかが入ります。今回のシーンでは、A の位置に this が入り、in my face の my で、突きつけられる相手が自分であることを表しています。所有格の部分は、突きつけられる側が誰なのかによって、my、your、his、her のように変わります。
今回の this は、直後に続く「ヘイリーはときどき本当に頭がいい」というアレックスの評価を受けています。認めた内容そのものを、あとで持ち出さないでほしいと、先回りして頼んでいるわけです。
【ここがポイント!】
- 「throw this in my face」の核は、認めたことや失敗をあとから持ち出して突きつけるイメージ
- 「throw A in someone’s face」の形で、A に持ち出す内容、someone’s に突きつけられる人が入る
- 本来は責める場面の表現だが、軽い冗談として、蒸し返さないでほしいと頼む使い方もある
『モダンファミリー』S04E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
アレックスがあの子の反応をヘイリーに確認する場面です。二人でその場を離れた理由をヘイリーが説明すると、アレックスは、これから言うことをあとで持ち出さないでほしいと前置きして、ヘイリーをほめます。ヘイリーの説明と、アレックスの前置きの言い方に注目です。
Alex: So he didn’t like me?
(じゃあ、あの子は私のこと気に入らなかったの?)Haley: No, he totally liked you.
(ううん、絶対あなたのこと気に入ってたわよ。)Alex: Then why’d we walk away?
(だったら、どうして私たちは立ち去ったの?)Haley: ‘Cause it was never about him. This was about getting you some confidence. Guys will pick up on that. Better guys. Guys who can lose to a girl without feeling e-masculated.
(だって、最初からあの子が目的じゃなかったから。あなたに自信をつけさせるのが狙いだったの。そういうのって男の子は感じ取るのよ。もっといい男の子たちがね。女の子に負けても「男らしさを傷つけられた(e-masculated)」なんて感じない男の子たち。)Alex: Okay, try not to throw this in my face one day, but sometimes you’re actually really smart.
(いい、いつかこれを持ち出して私に突きつけないでほしいんだけど、あなたってときどき、本当に頭がいいのよ。)Modern Family Season4 Episode22 (My Hero)
シーン解説と心理考察
アレックスは、あの子が自分を気に入らなかったのかを、ヘイリーに確認します。ヘイリーの答えは、「絶対に気に入ってた」という言い切りの返事です。それを聞いたアレックスは、「だったらどうして立ち去ったの?」と、理由を重ねて尋ねます。
ヘイリーは、あの場を離れたのは最初からあの子が目的ではなく、アレックスに自信をつけさせるのが狙いだったと説明します。さらに、その自信は男の子たちに気づかれるものだ、と自分なりの考えを語ります。アレックスが状況を確かめるたびに、ヘイリーが理由を補っていく、という運びです。
その説明を聞いたアレックスは、Okay と一度区切ってから、「いつかこれを持ち出して私に突きつけないでほしいんだけど」と前置きします。そのうえで、「あなたってときどき、本当に頭がいい」と認めます。ほめ言葉のはずなのに、ほめる側が先に「あとで持ち出さないで」と予防線を張っている点が、この一言の面白さです。
素直にほめるのではなく、あえて前置きを挟むところに、アレックスらしい照れ隠しの言い回しがにじんでいます。ヘイリーの説明に納得したことは認めつつも、認めたこと自体をあとで話の種にされるのは避けたい、という含みが、この短い一言に表れています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
相手の顔に向かって、何かを投げつける様子を思い浮かべてみましょう。投げつけられるのは、過去の発言や失敗、貸しといった内容です。相手の顔のすぐ前に突きつけられるので、逃げ場がなく、言い返しにくい状況になります。
このイメージが出発点なので、本来は責めるための言い方だということが、自然に頭に入ります。今回のシーンのような軽い冗談の場面でも、「顔に投げつける」という語感はそのまま残っています。
アレックスの一言は、ほめ言葉を口にしたあと、それを顔に投げつけられる場面を先に思い浮かべて、「投げつけないでね」と頼むものです。認めたことが、あとで自分に向けて投げ返される様子を思い浮かべると、この表現の意味がつかみやすくなります。
「顔に投げつける」と「蒸し返す」を、それぞれ頭の中で結びつけておくと、日本語の「蒸し返す」に近い場面で、この表現を思い出せるようになります。
例文で覚える「throw this in my face」
口論、職場、思い出話と、場面を変えながら、3つの例文で確認していきましょう。
Please don’t throw my mistake in my face every time we argue.
(口論のたびに私のミスを持ち出さないでください。)
過去の失敗を蒸し返されて困る場面です。throw の後ろの my mistake が、持ち出される内容にあたります。
A: I admit you were right about the schedule.
B: Nice. I’m going to throw that in your face at the next meeting.
(A:スケジュールについては、君が正しかったと認めるよ。)
(B:いいね。次の会議でそれを持ち出すからね。)
同僚同士の軽い冗談を言い合う往復会話です。責める意図はなく、認めてもらったことを軽くからかう調子で使われています。
He never threw my past failures in my face.
(彼は私の過去の失敗を持ち出して責めたことが一度もなかった。)
寛大な人について語る場面です。threw と過去形になり、my past failures が持ち出される内容を示しています。
あわせて覚えたい関連表現
rub it in
(相手の失敗や不利な事実を、しつこく指摘して嫌な思いをさせる)
rub it in は、相手の傷に触れ続けるような言い方で、今まさに起きている状況に使えます。throw something in someone’s face は、過去の発言や事実を持ち出す点に重点があります。
bring something up
(話題や過去のことを持ち出す)
bring up は、中立的に話題を出すだけの表現です。throw in one’s face には、相手を責めたりからかったりする含みがあります。
hold something against someone
(人の過去のことを根に持つ)
hold something against someone は、心の中で根に持つ態度を表します。throw in one’s face は、実際に言葉にして持ち出す点が違います。
Note|「try not to … but」で先に予防線を張る、ほめ言葉の前置き
アレックスの一言には、throw this in my face のほかに、もうひとつ注目したい形があります。「try not to + 動詞」と but で組み立てられた、前置きの型です。
try not to + 動詞は、「〜しないようにしてね」という、控えめな頼み方です。don’t + 動詞のように強く禁止するのではなく、できればそうしないでほしい、という穏やかな響きになります。今回のシーンでは、try not to throw this in my face で、「これを持ち出して突きつけないでほしい」という頼みになっています。
続く but は、前置きと本題をつなぐ役割を果たします。前置きで予防線を張ったあと、but のあとで、本当に言いたいこと、つまり「あなたってときどき本当に頭がいい」という評価を続けています。前置きが先、本題が後ろに来る構造です。
さらに、one day(いつか)が添えられている点にも注目できます。「今すぐ」ではなく、先の未来に持ち出される場面を想像していることが、この語から伝わります。
この型は、認めたくない気持ちと、認めざるを得ない気持ちの両方を、ひとつの文の中に収める方法として使えます。「Okay, try not to … but …」と組み立てると、素直にほめる前に、ひとこと照れ隠しや予防線を挟むことができます。アレックスが選んだ言い回しは、この型を使って、ほめ言葉の中に軽い冗談を混ぜたものでした。
まとめ|ほめる前に、先に釘を刺す
throw something in someone’s face は、相手が過去に言ったことや認めたこと、失敗などを、あとから持ち出して突きつける表現です。本来は責める場面で使い、冗談まじりに、蒸し返さないでほしいと頼む使い方もあります。
過去の失敗を持ち出された場面、認めたことを冗談で蒸し返す場面、寛大な人を語る場面など、形を変えながら幅広く使えます。「try not to … but …」の前置きと組み合わせると、ほめ言葉に軽い予防線を添えることもできます。
ヘイリーの説明を聞いたアレックスが、「いつかこれを持ち出さないでね」と前置きしてから、「ときどき本当に頭がいい」と認めたシーンには、この表現の持ち味が詰まっていました。素直に言いにくいことを口にするときの言い回しとして、表現の引き出しに加えてみてください。


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