海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
言葉は、口にしただけでは相手に届きません。こちらの話が相手の中まで入っていったとき、英語では、ある動詞と前置詞の組み合わせを使います。
ルークの言い分に出てくる「get through to someone」を、『モダンファミリー』シーズン8第20話の終盤、ルークがマニーに返した一言から取り上げます。
「get through to someone」の意味とニュアンス
get through to someone
意味:(人に)言いたいことが伝わる、心に届く
get through to someone は、こちらの話や気持ちが、相手にきちんと届いて理解されることを表す表現です。聞く耳を持たない相手や、なかなか分かってくれない相手に、ようやく言葉が通じた、という場面でよく似合います。
組み立てを分けると、get は「至る」、through は「通り抜けて」、to は「〜のところまで」です。壁のような隔たりを通り抜けて、相手のところまで至る、という動きがそのまま意味になっています。
主語は、話し手でも、話の内容でも構いません。I finally got through to him. なら「やっと彼に分かってもらえた」と、話し手が主役です。Her words got through to me. なら「彼女の言葉が私に届いた」と、言葉が主役です。ドラマの She got through to me. は、she が話し手として、me に届いた、という形になっています。
to の後ろには、届く先の人を置きます。got through to me、got through to them のように、人称代名詞でも名前でも同じ形です。
もう一つ、同じ形に「(電話などで)連絡がつく」という意味もあります。I couldn’t get through to anyone. なら「誰ともつながらなかった」です。前後に、気持ちや考えが出てくるのか、電話や窓口が出てくるのかで、どちらの意味かを見分けられます。
【ここがポイント!】
- 「get through to someone」の核は、隔たりを越えて、こちらの言葉が相手にまで届くこと
- 主語は話し手でも言葉でもよく、to の後ろに届く先の人を置く
- 同じ形で「電話がつながる」の意味もあり、前後の話題で見分ける
『モダンファミリー』S08E20のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ルークとマニーは、女性たちのマーチに来ています。マニーと微積分の授業が一緒のダニエル・パルドもその場にいて、マニーはルークの様子を疑っています。ルークが言い返すところから、ダニエルが拡声器で呼びかけを始める場面までを見ていきます。「got through to me」が使われるのは、ルークの返答の後半です。
Manny: I can’t believe she’s falling for this. I’ve believed in this cause my whole life. You spend an afternoon faking it and she kisses you almost on the lips.
(信じられない、彼女がこんな手に引っかかるなんて。僕はこの運動の理念をずっと信じてきたのに。君は午後いっぱい本気のふりをしただけで、彼女に唇のすぐそばにキスされるんだから。)Luke: I’m not faking anything. She got through to me.
(ふりなんかしてないよ。彼女の言葉が、僕に届いたんだ。)Danielle Pardo: Women and girls and the men who honor us
(女性たち、少女たち、そして私たちを敬う男性のみなさん…)Luke: It’s a crime what women in this country have to go through, and I’m with her 100%.
(この国で女性たちが耐えなきゃいけないことは、犯罪だよ。僕は彼女を100%支持する。)Modern Family Season8 Episode20 (All Things Being Equal)
シーン解説と心理考察
マニーの I can’t believe she’s falling for this. は、ダニエルがルークの振る舞いを信じてしまっていることへの、驚きの言葉です。fall for は、ここでは「引っかかる、だまされる」という意味で、this はルークの振る舞いを指しています。
続く I’ve believed in this cause my whole life. は、マニー自身の立場の表明です。cause は「主義、運動」という意味で、自分は長年この運動を信じてきたのだと言っています。それに対して You spend an afternoon faking it と、ルークは午後いっぱいふりをしただけだと、自分の長年の信念と比べています。マニーはルークを、ふりをしているだけだと見ています。
ルークの I’m not faking anything. は、その疑いをまっすぐ打ち消す返事です。そのあとの She got through to me. で、彼女の言葉が自分に届いたのだと、自分の側から理由を述べます。ふりではないと言い、その根拠を言葉の力に置いているところが、この台詞の軸です。
ここで、ダニエルが拡声器で呼びかけを始めます。Women and girls and the men who honor us と、集まった人たちに向けた言葉が続きます。
最後のルークの It’s a crime what women in this country have to go through, and I’m with her 100%. は、ダニエルの呼びかけに続けて、自分の立場を口にする台詞です。I’m with her は「彼女の側に立つ」という言い方で、100% が加わって、その強さを示しています。マニーはふりだと見ており、ルークは届いたと言う。二人の見方は食い違ったまま、場面は進んでいきます。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
through は「通り抜けて」です。相手が閉じた壁の向こうにいて、こちらの言葉が壁をすり抜けて、相手のところまで届く姿を頭に置いてみます。壁を抜けて届くからこそ、「伝わる」「心に届く」という意味になります。
ルークの台詞では、ダニエルの言葉が壁を抜けて、ルークのところまで届いたという形です。主語の she が話し手、to の後ろの me が届いた先です。誰の言葉が、誰のところまで届いたのかが、この短い文に収まっています。
身につけるなら、get through to の後ろの人を入れ替えていきます。get through to him、get through to her、get through to the kids と続けて言うと、届く先を to の後ろに置く形が、そのまま口に残ります。
例文で覚える「get through to someone」
意味が二つあることも含め、悩み、友人への報告、電話の場面で使い方を見ていきます。
I’ve tried to explain it many times, but I can’t get through to him.
(何度も説明しようとしたけれど、彼にはどうしても伝わらない。)
話が通じない相手への悩みを話す場面です。can’t と否定にすると、届かない苦労が前に出ます。
A: Did you talk to Mia?
B: Yes, and I think I finally got through to her.
(A:ミアと話した?)
(B:うん、やっと分かってもらえたと思う。)
友人との話し合いの結果を報告する会話です。finally を添えると、時間をかけてようやく届いた感じが加わります。
I called the office all morning, but I couldn’t get through to anyone.
(午前中ずっと会社に電話したけれど、誰ともつながらなかった。)
「連絡がつく」の意味の例です。called や office といった電話に関わる語が前後にあると、気持ちが届くのではなく、電話がつながる意味だと分かります。
あわせて覚えたい関連表現
reach someone
((人の)心に届く、気持ちをつかむ)
reach someone は、相手の心に働きかけて動かすことに重点があります。get through to someone は、閉じていた相手にようやく伝わるという、隔たりを越えた感覚が強い言い方です。
make someone understand
((人に)理解させる)
make someone understand は、理解という結果を表します。get through to someone は、理解に至るまでの手間や障害を含んだ言い方です。
strike a chord with someone
((人の)共感を呼ぶ)
strike a chord with someone は、話や作品が共感を呼ぶことを言い、主語はたいてい話の内容です。get through to someone は、話し手が相手に届くという関係に重点があります。
Note|「届く」と「通じる」の訳し分け。get through to someone が選ぶ日本語
get through to someone を日本語にするとき、迷いやすいのが「届く」と「通じる」のどちらを選ぶかです。どちらも「伝わる」の仲間ですが、焦点が少し違います。
「届く」は、言葉や気持ちが相手のところまで到達して、相手の心を動かしたという感じです。「通じる」は、話が相手に理解されて、意思の疎通ができたという感じで、動かされたかどうかまでは言いません。
ドラマの She got through to me. を「彼女の言葉が、僕に届いた」と訳しているのは、ルークが、ダニエルの言葉で自分の気持ちが動かされたと言っているからです。「彼女の話が僕に通じた」と訳すと、話が理解された、という事務的な響きになり、ルークの言い分とずれてしまいます。
反対に、I finally got through to him. のように、何度言っても理解してくれなかった相手に分かってもらえた場面なら、「やっと彼に通じた」「やっと分かってもらえた」のほうが合います。心が動いたかどうかより、理解されたかどうかが焦点だからです。
相手の気持ちが動いたのなら「届く」、理解が得られたのなら「通じる」。この使い分けを覚えておくと、どちらの場面にも get through to someone をそのまま当てはめられます。
まとめ|隔たりを越えて、言葉を届ける
get through to someone は、こちらの話や気持ちが、相手にきちんと届くことを表す表現です。to の後ろに届く先の人を置き、同じ形で「電話がつながる」の意味にもなります。
マニーがふりを疑う中で、ルークは I’m not faking anything. と打ち消し、She got through to me. と、その理由を自分の側から述べました。二人の見方が食い違ったままでも、この一言は、届いたという実感をまっすぐ言い切っています。
話が伝わらなくて困ったとき、あるいは言葉がちゃんと届いたと感じたとき、get through to を使えば、その手応えを短く言い表せます。


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