海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン7第13話では、父ジェイの会社を率いる立場になったクレアが、オフィスを訪れたフィルに本音をこぼします。フィルからはうまくやっているように見えても、本人は自信が持てずにいるという場面です。
「自分は見かけ倒しだ」と打ち明けられたとき、どんな言葉を返せばよいのか。二人のやり取りには、その答えになる英語がいくつも含まれています。
「I am faking it」――不安を言葉にする
場面は、クレアのオフィスです。届け物に来たフィルの前で、クレアは張り詰めていた気持ちを一気に話し始めます。
Claire: It’s just all of this.
(とにかく、何もかもなの。)Claire: I’m so stressed.
(すごくストレスがたまってる。)Claire: Phil, I’ve never been a boss before, and I am freaking out.
(フィル、私、人の上に立ったことなんて一度もないの。もう気が気じゃない。)Phil: But you’ve been handled it so well.
(でも、ちゃんとこなしてるじゃないか。)Claire: I am faking it, Phil.
(できるふりをしてるだけよ、フィル。)Claire: I have no idea what I’m doing.
(自分が何をしてるのか、全然分かってないの。)Modern Family Season7 Episode13 (Thunk in the Trunk)
I’m so stressed. は、追い詰められた気分をそのまま伝える、日常会話でなじみのある一文です。I’ve never been a boss before は「上に立つのは初めて」という事情を添える言い方で、不安の理由を短く説明する役割を果たしています。
続く I am faking it の fake は「ふりをする、装う」という動詞で、fake it で「分かっているふり、できるふりをする」という意味になります。I have no idea what I’m doing. は「何をしているのか自分でも分からない」という自己評価で、新しい役目に就いた人がこぼしやすい言葉と言われることが多い一文です。
なお、途中の freaking out は「ひどく動揺する」という口語表現で、使い方はこの回のフレーズ記事で詳しく扱っています。
フィルが少し時間をかければいいと声をかけると、クレアは次のように返します。
Phil: Give it a little time.
(少し時間をかけなよ。)Claire: There is no time.
(そんな時間はないの。)Claire: I’m in charge now.
(今は私が責任者なんだから。)Claire: And I live every day in constant fear of everyone discovering that I’m a fraud.
(それに、私が見かけ倒しだってみんなにバレるんじゃないかって、毎日びくびくしてる。)Modern Family Season7 Episode13 (Thunk in the Trunk)
Give it a little time. の it は「状況」を指し、「慣れるまで少し待とう」と促す言い方です。I’m in charge now. は「今は自分が責任を負う立場だ」という意味で、立場の重さがにじみます。in constant fear of ~ing は「〜するのではないかと絶えずおびえて」、fraud は「詐欺師」のほか「中身の伴わない人、見かけ倒し」も指す語です。
「You are not a fraud」――相手の言葉で打ち消す
クレアの言葉を受けて、フィルはまずこう言い切ります。
Phil: Hey, you are not a fraud.
(おい、君は見かけ倒しなんかじゃないよ。)Claire: I haven’t had the guts to sit at my dad’s desk since he left.
(パパがいなくなってから、パパの机に座る勇気が出ないの。)Claire: I still feel like the little girl who used to play hide-and-seek under it.
(いまだに、その下でかくれんぼしてた小さな女の子みたいな気がして。)Phil: Look.
(いいかい。)Phil: This is your desk now.
(これはもう君の机だ。)Phil: You’ve earned it.
(君が自分の力で手に入れたんだよ。)Phil: You are not a little girl anymore.
(もう小さな女の子じゃない。)Phil: In fact, you’re the strongest, smartest woman I know.
(それどころか、俺が知ってる中で一番強くて賢い女性だ。)Modern Family Season7 Episode13 (Thunk in the Trunk)
フィルの返しで目を引くのは、クレアが使った fraud や little girl を、そのまま not で打ち消している点です。相手の言葉を借りて否定すると、「その見方は違う」という意図がはっきり伝わります。
I still feel like the little girl who used to ~ は「昔〜していた子どものままのような気がする」という言い方で、used to が過去の習慣を表しています。机に座れない理由が、子どものころの思い出と結びつけて語られています。途中の have the guts to ~(〜する勇気がある)はフレーズ記事でも取り上げています。
これに対する This is your desk now. は、now で「今はもう」と時間の区切りを示します。You’ve earned it. の earn は「働いて得る」が基本の意味で、ここでは「実力で手にした」と相手の積み重ねを認める働きをしています。
短い Look. は「いいかい」と注意を向けさせる前置きで、大事なことを言う前の合図になります。
「I don’t worry about you」――心配の向け先をずらす
フィルの励ましには、冗談めかした続きがあります。家族を会社にたとえて、こう話します。
Phil: The hardest company in the world to run is Dunphy Co., and you’ve kept us in business for 22 years.
(世界一経営が難しい会社はダンフィー社だ。君はそれを22年間つぶさずにやってきた。)Phil: I don’t worry about you in this job.
(この仕事で君のことは心配してない。)Phil: I worry about the poor chump who has to follow you.
(心配なのは、君の後を引き継がなきゃいけない気の毒なやつのほうだよ。)Modern Family Season7 Episode13 (Thunk in the Trunk)
keep ~ in business は「〜の商売を続けさせる、つぶさずにおく」という意味です。家族を会社に見立てたうえで、これまでの年月を「実績」として示す組み立てになっています。
I don’t worry about you. I worry about ~. は、心配の対象をずらす組み立てです。「あなたは大丈夫」と直接言う代わりに、「心配なのは後任のほうだ」と回り道をすることで、相手の有能さを伝えています。chump は「お人よし、かわいそうなやつ」というくだけた語で、ここでは冗談の調子を作る役目です。
同じ形は、新しい仕事を任された同僚への声かけにも応用できます。I’m not worried about you. I’m worried about whoever has to compete with you.(君のことは心配してないよ。心配なのは君と張り合う人のほうだ)のように、後半を入れ替えるだけで励ましの一言になります。
正面からの「大丈夫」と、ユーモアを交えた言い回し。フィルは両方を重ねて、クレアの不安に応えています。
まとめ|自信をなくした相手への返し方
I am faking it や I’m a fraud で表された不安に対し、フィルは You are not a fraud.、You’ve earned it.、I don’t worry about you. と言葉を重ねました。相手の言葉を打ち消し、実績を示し、冗談で和らげるという流れが分かります。
ほかの場面の英語も手がかりに、次回も『モダンファミリー』と一緒に表現を広げていきましょう。
同じ回のほかのコラムでは、想像がふくらむ相手との会話や、相手を巻き込む一言を取り上げ、個々の表現はフレーズ記事でも扱っています。


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