ドラマで学ぶ英会話|『BONES』S7E1に学ぶ「fugue state」の意味と使い方

fugue state

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

今回は『BONES』シーズン7第1話から、記憶喪失に伴う失踪を意味する「fugue state」を解説します。
少し専門的なこの表現、知っていると海外ドラマがぐっと面白くなりますよ。

目次

実際にそのシーンを見てみよう!

ブースとFBI心理学者のスイーツが、被害者クレアの夫・セラーノ牧師に事情聴取を行っている場面です。
妻が失踪中の記憶を全く持たずに戻ってきたと語る夫に対し、スイーツが専門的な見地から解説を加えます。

Booth: Wait a second. You mean to tell me that she can’t remember that, either?
(待ってくれ。彼女は当時のことも覚えていないって言うのか?)

Sweets: No, it happens, Agent Booth. Her amnesia caused her to establish a new identity. It’s called a fugue state.
(いや、あり得ることです、ブース捜査官。彼女の記憶喪失は、新しい人格を確立させました。これは遁走(とんそう)状態と呼ばれます。)

Sweets: It’s a survival technique that can disappear as quickly as it appears.
(突然現れるのと同じくらい、突然消えることもある生存のためのテクニックなんですよ。)

Serrano: But Claire came back to me. And she was starting to remember.
(でもクレアは私の元へ戻ってきました。そして思い出し始めていたんです。)

BONES Season7 Episode1(The Memories in the Shallow Grave)

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シーン解説と心理考察

牧師の妻クレアは、ある日突然姿を消し、数ヶ月後に記憶を失った状態で戻ってきました。
自分が誰なのかさえわからないまま帰ってきた妻との生活を、夫は信仰を支えに送ってきたと語ります。

失踪中のことすら覚えていないという事実にブースは驚愕しますが、心理学の専門家であるスイーツは冷静です。
人間の脳は、自分では処理しきれないほどのトラウマや強烈なストレスに直面した時、完全に壊れてしまわないように「自分自身の記憶をシャットダウンする」という究極の防衛手段を取ることがあります。

スイーツが語る “survival technique(生存のためのテクニック)” という言葉が印象的です。
クレアが別の人間を故意に演じていたのではなく、無意識のうちに過去を消し去り新しいアイデンティティを作ることで、心を守り生き延びようとしていた——そう読み解くと、この事件の裏にある人間の脆さと強さが一気に浮かび上がってきます。

「fugue state」の意味とニュアンス

fugue state
意味:解離性遁走(かいりせいとんそう)、遁走状態、記憶喪失に伴う失踪

「fugue(フーガ)」はラテン語の「fuga(逃走)」を語源とする言葉で、「state(状態)」と組み合わさることで精神医学における特殊な症状を指す専門用語になります。

自分が誰であるかという記憶を失い、無意識のうちに家庭や職場から突然姿を消して、遠く離れた場所で全く新しい自分として生活を始めてしまう状態のことです。

【ここがポイント!】

このフレーズを理解する上での最大のポイントは、「単なる物忘れ(amnesia)」とは異なり、「物理的な逃亡(遠くへ行くこと)」と「新しい人格の形成」が必ずセットになっているという点です。

精神的に追い詰められた人間の究極の現実逃避であり、本人には嘘をついている意識も悪意もありません。
犯罪捜査ドラマにおいて、容疑者や被害者の不可解な空白期間を説明する際の強力なキーワードとして頻出する表現です。

実際に使ってみよう!

専門用語ですが、法廷サスペンスドラマの鑑賞時や、「完全に無意識だった」ことを大げさに表現する日常会話にも使えます。

The suspect claims he was in a fugue state during the incident.
(容疑者は事件当時、遁走状態にあったと主張しています。)
犯罪捜査ドラマなどで、弁護士が容疑者の責任能力のなさを主張する際によく登場する典型的な場面です。

Extreme stress triggered a dissociative fugue state.
(極度のストレスが解離性遁走状態を引き起こしました。)
トラウマや過度なストレスが原因で引き起こされた症状であることを、心理学・医学の文脈で客観的に説明する表現です。

I was so exhausted yesterday, I drove home in a fugue state.
(昨日は疲れすぎていて、無意識のうちに車を運転して帰宅しました。)
「どうやって家に着いたか全く記憶がない」ほど疲れ果てた状態を、少し大げさにユーモラスに表現する比喩的な使い方です。

『BONES』流・覚え方のコツ

「fugue(フーガ)」という単語の響きが、「逃亡者」を意味する「fugitive(フュージティブ)」にとてもよく似ていますよね。
この音の近さは偶然ではなく、両方とも「逃げる」という同じ語源から来ています。

「fugitive=逃げ続ける人」というイメージを入口にして、「fugue state=記憶から逃げ出した状態」と結びつけると、音と意味が一気につながって覚えやすくなります。

似た表現・関連表現

amnesia
(記憶喪失、健忘症)
「fugue state」の要因ともなる、記憶が失われることを指す最も一般的な医学用語です。スイーツのセリフにも登場しました。頭部外傷や精神的な原因の両方に使われますが、「別の場所へ逃げる」「別人格を作る」といった行動は必ずしも伴いません。

blackout
(意識を失うこと、一時的な記憶喪失)
お酒の飲み過ぎや極度の疲労などで一時的に記憶が飛んでしまうことを指す、日常会話でよく使われるカジュアルな表現です。

lose one’s mind
(正気を失う、気が狂う)
極度のパニックや怒り、悲しみなどで一時的に正常な思考ができなくなる状態を表すイディオムです。医学的な記憶喪失ではなく、感情のコントロールが効かなくなっている精神状態を指します。

深掘り知識:音楽の「フーガ」と精神医学の意外なつながり

「fugue」という単語を見て、クラシック音楽の「フーガ(遁走曲)」を思い浮かべた方もいるかもしれません。
バッハの『小フーガ ト短調』などが有名ですね。

実は、音楽用語のフーガと精神医学の遁走状態(fugue state)は、全く同じラテン語の「fuga(逃亡)」という語源から生まれています。

音楽の「フーガ」は、一つの主題が次々と別の声部に追いかけられ、音が「逃げては追いかけられる」ように複雑に絡み合っていく作曲技法です。
一方は「追いかけてくる過去から無意識に逃げ出す人間の心」、もう一方は「他のメロディーから逃げるように展開していく美しい音楽」。

全く異なる分野の言葉が、根底では「逃げる」という一つのイメージでつながっている——これを知ると、単語の暗記が「知的な謎解き」に変わりますよね。
語源を辿る習慣が身につくと、英語の語彙が面白いほど広がっていきます。

まとめ|人間の心の奥深さを表す専門用語

今回は『BONES』の心理学的なアプローチが光るシーンから、記憶喪失による失踪を意味する「fugue state」をご紹介しました。
スイーツが静かに語る “survival technique” というひと言に、人間の心が持つ驚くべき防衛本能が凝縮されていましたね。

難易度は高めですが、ミステリーやサスペンスドラマでは物語の核心に迫る重要なカギとなることが多い表現です。
「fugitive(逃亡者)」との音のつながりを手がかりに、ぜひ自分のものにしてみてください。

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