海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回ご紹介するのは、前回に続き『BONES(ボーンズ)-骨は語る-』シーズン1・第3話から、いかにもブレナンらしい知性に溢れたフレーズです。
現場の状況や直感から、すぐに「これは事件だ!」と断定したがるブースに対し、ブレナンは常に慎重です。彼女にとって、確固たる証拠がない段階で口にする言葉は、単なる「推測」に過ぎません。
プロフェッショナルとして、また誠実な一人の人間として、安易な答えを出さない彼女の姿勢が凝縮されたこの一言。曖昧さを排除し、正確に状況を伝えたい時に非常に役立つ表現を深掘りしていきましょう。
実際にそのシーンを見てみよう!
Booth: …so you’re saying he was murdered? (ブース:……つまり、彼は殺害されたと言いたいのか?)
Brennan: No, I’m saying I don’t know what happened to the boy because I need more data. I don’t have all the facts. (ブレナン:いいえ、私が言っているのは、その少年に何が起きたか分からないということ。なぜならもっとデータが必要だから。すべての事実が揃っていないわ。)
BONES season1 episode3 (A Boy in the Tree)
「殺されたのか、そうじゃないのか」という白黒はっきりした答えを求めるブース。それに対してブレナンは、否定でも肯定でもなく、「データが足りないから判断できない」という極めてフラットな回答を返します。
このシーンでの彼女の表情は、決して突き放しているわけではありません。「事実(Facts)」を何よりも尊重する彼女にとって、「わからない」と言うことは無知をさらけ出すことではなく、真実へ辿り着くための誠実なステップなのです。
フレーズの意味とニュアンス
I need more data は、日本語に訳すと「もっとデータが必要です」となりますが、ここでの data は数値や統計だけでなく、「判断材料」「情報」「証拠」といった広い意味を含んでいます。
この表現のポイントは、「自分の能力不足ではなく、外部の情報が不足している」という点を明確に伝えられることです。
ネイティブがこのフレーズを使う時、そこには以下のような心理的ニュアンスが込められています。
- 客観性の維持: 主観や直感で話しているのではないというプロ意識。
- 判断の保留: 今この場で無理に答えを出して、後で間違いだったと判明するリスクを避けたい慎重さ。
- 論理的な要求: 「答えが欲しいなら、判断するための材料を揃えてください」という建設的なメッセージ。
ビジネスの会議や、重大な決断を迫られた場面で、安易に「Yes/No」を言わずに**「今はまだその段階ではない」と知的に伝える**のに最適な表現です。
実際に使ってみよう!
I can’t give you an estimate right now. I need more data regarding the project scope.
(現時点で見積もりを出すことはできません。プロジェクトの範囲について、もっと詳細なデータが必要です。)
根拠のない数字を出すことを避け、正確な仕事をしたいというプロフェッショナルな姿勢を示すシチュエーションです。
That’s an interesting theory, but I need more data before I can agree with you.
(それは興味深い理論ですが、同意する前にもっと判断材料が必要です。)
相手の意見を否定せず、かつ安易に同調もせず、冷静に議論を続けたい時に有効な返しです。
To find the cause of this error, we definitely need more data from the user side.
(このエラーの原因を突き止めるには、ユーザー側からの情報がどうしてももっと必要です。)
問題解決のために何が欠けているのかを、チームに対して明確に提示する場面です。
[BONES]流・覚え方のコツ
このフレーズを覚えるときは、ブレナンがラボで骨をスキャンしたり、顕微鏡で成分を分析したりしている「検証中」の姿をイメージしてください。
彼女の頭の中には、たくさんの「空のボックス」があります。そのボックス一つひとつに、顕微鏡で見た結果や化学分析のデータがパズルのように埋まっていくまでは、彼女の「結論(Conclusion)」という大きな扉は開きません。
「今、私のパズルはまだ完成していない(ボックスが空だ)」 そう感じた時に I need more data と呟くイメージを持つと、自然と口から出てくるようになりますよ。
似た表現・関連表現
I need more information (もっと情報が必要です)
data よりも一般的で、日常会話でもよく使われます。内容を問わず「もっと教えて」と言いたい時に便利です。
I don’t have enough to go on (判断材料が足りません)
「go on(〜に基づいて進める)」ための材料が足りない、というニュアンスです。口語的で、現場でよく使われる表現です。
Let me look into it further (もう少し詳しく調べさせてください)
「情報が足りない」と直接言う代わりに、「自分がもっと調査する」という能動的な姿勢を示す丁寧な表現です。
深掘り知識:科学者としての「誠実な保留」
ブレナンが使う data という言葉には、彼女のバックボーンである科学的思考が反映されています。
科学の世界では、「わからない(Unknown)」と認めることは恥ではなく、むしろ科学的な美徳とされます。十分な証拠がないのに「こうだと思う」と言ってしまうことは、バイアス(偏見)を生み、真実を歪めてしまうからです。
私たち現代人は、SNSやスピード感のあるビジネスの現場で、つい「即答」することに価値を置きがちです。しかし、ブレナンのように I need more data と言って立ち止まる勇気を持つことは、周囲からの信頼を勝ち取ることにも繋がります。
「わからない」を「データ不足」という言葉に置き換えるだけで、会話のトーンは驚くほど知的で、建設的なものに変わります。
まとめ|「わからない」を武器に変えるフレーズ
ブースのように情熱的に動くことも大切ですが、時にはブレナンのように一歩引いて事実を見つめる視点も必要です。
判断に迷った時、プレッシャーに負けて適当な答えを出すのではなく、胸を張って I need more data と言ってみてください。その一言が、あなたを「思慮深く、信頼できる学習者」として印象づけてくれるはずです。


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