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言いにくいお願いや相談を、どう切り出そうか迷ってタイミングを逃してしまった、ということはありませんか。
そんな「切り出す」という行為を表すのが「bring it up」というフレーズです。話題を会話の場に持ち出す、という意味の句動詞で、シットコム『ビッグバン★セオリー』シーズン3第5話の中盤、レナードがペニーに頼みごとを切り出せずにいる言い訳を並べる場面に登場します。どんな使い方なのか、一緒に見ていきましょう。
「bring it up」の意味とニュアンス
bring it up(bring ~ up)
意味:(話題・件)を切り出す、持ち出す、言い出す
bring ~ up は「〜を上へ持ってくる」が文字どおりの意味です。ここから、話題を会話の表面に「持ち上げて出す」というイメージが生まれ、「(話)を切り出す・持ち出す」という用法になりました。
特に、言い出しにくいことやセンシティブな話題を切り出す場面で頻繁に使われます。it のほか、the subject(その話題)、the topic(その件)、過去の出来事などを目的語に取ります。「あえて話題として持ち出す」という踏み込みのある表現で、ただ軽く触れる程度の mention とは温度感が異なります。
【ここがポイント!】
- 核は「話題を会話の表面に持ち上げて出す」イメージ
- 言いにくいこと・センシティブな話を切り出すときの定番表現
- 「あえて持ち出す」踏み込みがあり、軽く触れるだけの mention より重い一言
『ビッグバン★セオリー』S03E05のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
大学のカフェテリアで、ハワードが「ペニーにもう話したのか」とレナードを催促します。紹介の件を切り出せていないレナードが、その理由を次々と並べていく場面です。
Howard: So, have you talked to Penny yet?
(で、もうペニーに話したのか?)Leonard: Because I’ve been busy, because I haven’t figured out a way to bring it up, and mostly, and I can’t stress how key this is, because I don’t want to.
(忙しかったし、どう切り出すか思いつかなかったし、そして何より、これが一番大事なんだが、言いたくないからだ)The Big Bang Theory Season3 Episode5(The Creepy Candy Coating Corollary)
シーン解説と心理考察
レナードは理由を三つ並べますが、その積み上げ方にコメディの呼吸があります。「忙しかった」「切り出し方が分からなかった」と体裁のいい言い訳から入り、最後に “because I don’t want to(言いたくないから)” という身も蓋もない本音に着地する流れが見どころです。
haven’t figured out a way to bring it up という言い回しには、「切り出すこと自体のハードルの高さ」を言い訳に使うレナードの心理がにじみます。本当は約束を履行する気がないのに、「切り出し方が難しい」という建前で先延ばしにしている。その本音と建前のあいだで揺れる様子が、淡々とした口調の裏から伝わってきます。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
会話のテーブルの下に、レナードが隠している「紹介の件」という重い箱があると想像してください。それを両手で、みんなの見えるテーブルの上へ「持ち上げて(up)出す(bring)」のが bring it up です。
レナードはその箱に手をかけたまま、重くて持ち上げられずにいる――そんな絵を思い浮かべると、「言いにくいことを切り出す」というニュアンスが体感的に定着します。up が「表面に出す」方向を示している、と覚えておくと、come up(話題が出る)など同じ up を持つ句動詞ともつながります。
例文で覚える「bring it up」
言いにくいことを切り出す場面で力を発揮するフレーズです。3つの場面でニュアンスを確かめてみましょう。
I wanted to ask for a raise, but I couldn’t find the right moment to bring it up.
(昇給をお願いしたかったけど、切り出すいいタイミングが見つからなかった)
言いにくい相談を切り出せずにいる、劇中に近い状況の例です。切り出すタイミングを計る気持ちがよく表れています。
Please don’t bring up my ex tonight.
(今夜は元カレの話を持ち出さないでね)
触れてほしくない話題に釘を刺す、否定形の使い方です。「あえて持ち出す」という踏み込みがあるからこそ、止める言い方も自然になります。
A: There’s something we should probably talk about.
B: I know it’s awkward, but someone has to bring it up.
(A:たぶん話しておくべきことがあるんだけど)
(B:気まずいのは分かってる。でも誰かが切り出さないとね)
言いにくいことを誰かが切り出す必要がある、という会話例です。切り出しにくさを前提にしたやり取りで使えます。
あわせて覚えたい関連表現
raise (a subject / an issue)
(話題・問題を提起する)
raise はややフォーマルで、会議や議論の場で「議題を提起する」ときに向きます。bring up は同じ場面でももっと口語的で、日常会話にもなじむ点が違います。
mention
(〜のことを口にする、言及する)
mention は「軽く触れる」程度の言及です。bring up が「意図的に話題として持ち出す」踏み込みを持つのに対し、mention はさらりと触れるだけ、という温度差があります。
broach (a subject)
(言いにくい話題を切り出す)
broach は「センシティブな話題を初めて切り出す」専用に近い、硬い語です。同じ場面を、bring up はもっとカジュアルに言える、という使い分けになります。
Note|言いにくいことを切り出す英語の作法
レナードが「どう bring it up すればいいか分からなかった」と言うように、英語にも「切り出しにくさ」とどう向き合うかの作法があります。
英語では、言いにくいことを bring up する前に、クッションとなる前置きを添える習慣があります。たとえば “Sorry to bring this up, but…(こんな話を持ち出して悪いんだけど)” や “I hate to bring this up, but…” のように、切り出すこと自体への申し訳なさを先に示してから本題に入ります。これは、相手に身構える時間を与え、唐突さをやわらげるための配慮です。日本語の「言いにくいんだけど」「ちょっと言いづらいことなんだけど」とよく似た働きをしています。レナードの場合は、この前置きを口に出す代わりに「切り出し方が分からない」という言い訳に変えてしまっているわけで、裏を返せば、彼が本題の重さを意識していることの表れとも読み取れます。
このクッション表現とセットで覚えておくと、bring up を「ただ持ち出す」だけでなく、「角を立てずに持ち出す」ところまで使いこなせるようになります。
言い出しにくいことほど、切り出し方の一工夫が会話を左右します。
まとめ|レナードの言い訳から学ぶ「切り出す」一言
bring it up は、話題を会話の表面に持ち上げて出す、というイメージの句動詞です。とりわけ言いにくいことを切り出す場面で活躍します。
この表現が使えると、「言い出しにくいんだけど」という気持ちを抱えたまま黙り込むのではなく、クッションを添えて自分から話を切り出せるようになります。
レナードのように本音を最後まで隠す必要はありません。切り出したい場面を思い浮かべながら、会話のレパートリーに加えてみてください。


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