海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
「全部が嫌ってわけじゃないんだけど…」と、言い切りたくない気持ちをやんわり濁したくなる瞬間はありませんか。
そんなときに役立つ「per se」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン4第1話の前半、シェルドンに「他に予定でもあるのか」と問い詰められたペニーが言葉を濁すシーンから、一緒に見ていきましょう。
「per se」の意味とニュアンス
per se
意味:それ自体は/厳密に言えば
per se は「そのもの・本質としては」と限定をかけるときに使う表現です。多くの場合 not と組み合わせて「(完全に)〜というわけではない」と婉曲に否定したり、「厳密に言えばこうだ」と定義をきっちり区切ったりする場面で機能します。
ラテン語がそのまま英語に取り込まれた言い回しのため、日常会話の中ではややフォーマルで知的な響きを持ちます。”It’s not illegal per se, but it’s not a great idea.”(それ自体は違法ではないが、いい考えとは言えない)のように、断定を避けて細かいニュアンスを足したいときに重宝します。名詞や形容詞のすぐ後ろに置くのが基本の語順です。
【ここがポイント!】
- per se の核は「そのもの・本質としては」と範囲を限定する一言
- not per se の形で「完全にそうとは言えない」と婉曲に濁せる、便利な逃げ道
- フォーマルで知的に響く反面、多用すると気取って聞こえるので使いどころが大事
『ビッグバン★セオリー』S04E01のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
シェルドンが突然「今すぐエイミーとのデートに送ってくれ」とペニーに頼みます。反発しようとするペニーですが、「他に予定でもあるのか」と切り返され、予定が無いことを認めたくない一心で苦し紛れの一言を口にします。
Sheldon: I’m sorry. Do you have other plans?
(失礼。君、他に予定があるのか?)Penny: Well, no, not per se, but…
(まあ、無いけど、厳密にはね、でも…)The Big Bang Theory Season4 Episode1(The Robotic Manipulation)
シーン解説と心理考察
「無い」とはっきり言えば、論理の権化であるシェルドンに即座に論破されてしまう——それが分かっているからこそ、ペニーは not per se という曖昧でフォーマルな逃げ道を選びます。普段は砕けた話し方をするペニーが、ここでわざわざラテン語由来の言い回しを持ち出すあたりに、なんとか言い負かされまいとする気構えがにじんでいます。
しかし相手はシェルドン。その曖昧さすら「では、この会話は無意味だな」と一刀両断され、背伸びした語彙はあっさり裏目に出ます。賢く濁したつもりが、かえって逃げ場を失う——言葉選びの一手が即座に詰みにつながる、二人のテンポの良い掛け合いが見どころです。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
per se は、英語という文章の中に紛れ込んだ「ラテン語の小石」とイメージすると、その硬くてフォーマルな手触りが掴めます。se はラテン語で「それ自身」。per(〜を通して)+ se(それ自体)=「それ自体を通して見れば」と分解すれば、「本質に絞って言えば」という意味の芯が立ち上がってきます。
ペニーが「予定は無い」と認めたくなくて not per se と言い淀む場面ごと覚えておくと、「ハッキリ言いたくないときに差し込む、ちょっと知的なクッション語」という体感が記憶に残ります。
例文で覚える「per se」
per se は「Xそのものは〜ない」と一部だけ限定して否定するときに力を発揮します。フォーマル度の異なる3つの場面で見てみましょう。
I don’t hate the job per se — I just hate the commute.
(仕事そのものが嫌いなわけじゃない。通勤が嫌なだけ。)
不満を口にしつつ本音を整理する日常の場面です。「全部が嫌なのではなく、嫌なのはこの一点」と切り分けるニュアンスが出ます。
This isn’t a rule per se, more of a guideline.
(これは厳密にはルールというより、ガイドラインに近い。)
仕事で方針の性質を説明する場面です。「ルールと呼ぶには厳密すぎる」と、定義をきっちり区切るフォーマルな使い方です。
A: Are you two dating?
B: Not per se. We’re just figuring things out.
(A:あなたたち、付き合ってるの?)
(B:厳密にはね。まだいろいろ見極めてる最中なの。)
踏み込んだ質問をやんわりかわす会話です。Yes でも No でもない微妙な関係を、断定を避けて伝えられます。
あわせて覚えたい関連表現
in itself / in and of itself
(それ自体は)
per se とほぼ同義ですが、より口語的で日常会話になじみます。フォーマルに締めたいときは per se、さらっと使いたいときは in itself という棲み分けです。
as such
(そういうものとしては)
「その名や定義に値するものとしては」というニュアンス。”There’s no plan as such.”(計画と呼べるものは特に無い)のように、per se と近い限定の働きをします。
strictly speaking
(厳密に言えば)
文頭に置いて文全体を限定する副詞句です。名詞・形容詞の直後に置く per se と、置く位置が異なる点を押さえておくと使い分けやすくなります。
Note|英語に残るラテン語フレーズ per se
普段使いの英語に、実はラテン語がそのままの形で生き残っている——per se はその代表格です。なぜこんな古い言葉が現代の会話に残っているのでしょうか。
per se はラテン語で「by itself / through itself(それ自体によって)」を意味し、もともとは法律・哲学・学術の世界で使われてきたとされます。英語にはこうした「輸入されたラテン語」が数多く残っており、たとえば e.g. は exempli gratia(例えば)、etc. は et cetera(その他もろもろ)、i.e. は id est(すなわち)の略です。これらが略語や決まり文句として定着したのは、長く学問やフォーマルな文書の言語がラテン語だった歴史の名残だとされています。per se もその流れの中で、「本質に絞って言えば」という限定の役割を保ったまま、現代の口語にまで降りてきた一語です。
このルーツを知っておくと、per se が会話の中でなぜ少し改まった響きを持つのかが腑に落ちます。ペニーが背伸びして使い、シェルドンに即論破された場面も、「日常会話にラテン語を差し込んだ」ささやかな違和感として味わえます。
言葉の手触りは、その出どころを知ると一段深く感じられます。
まとめ|「それ自体は」と上手に範囲を区切る一言
per se は、物事の範囲を「本質・そのものとしては」と絞り込み、断定を避けながらニュアンスを足す表現です。全部を肯定も否定もしたくないとき、この一語があるだけで会話に細やかな陰影が生まれます。
「嫌いってわけじゃない」「ルールというほどでもない」——白黒つけきれない微妙な領域を言葉にできると、伝え方の精度がぐっと上がります。少し知的な響きも添えてくれる per se を、表現の引き出しに加えてみてください。


コメント