海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『フレンズ』シーズン3第2話では、パーティーへ出かける前のわずかな時間に、チャンドラーとジョーイが1脚の椅子を巡って言い合いを続けます。どちらも相手の言葉の穴を見つけては、理屈をこねて言い返します。
この回の言い合いでは、相手の言葉をそのまま拾って返す形が何度も出てきます。先にいた・離れた、言った・言っていない、正反対の取り合いという3つの場面から、その言い回しを見ていきます。
「I was sitting there」と「But then you left」
浴室から戻ったチャンドラーは、さっきまで座っていた椅子にジョーイが座っているのを見て Get up. と言います。そこから二人の言い合いが始まります。
Chandler: I was sitting there.
(俺がそこに座ってたんだよ。)
Joey: But then you left.
(でも、そのあと離れただろ。)
Chandler: Well, it’s not like I went to Spain. I went to the bathroom. You knew I’d be back.
(いや、スペインに行ったわけじゃないし。トイレに行っただけだよ。戻ってくるって分かってただろ。)
Joey: What’s the big deal? Sit somewhere else!
(何が問題なんだよ?ほかに座れよ!)
Chandler: The “big deal” is, I was sitting there last! So… it’s my seat.
(「問題」はね、最後にそこに座ってたのは俺だってこと!だから……俺の席なの。)
Joey: Well, actually, the last place you were sitting was in there, so…
(いや、正確に言うと、お前が最後に座ってたのはあっちだからな……)
Friends Season3 Episode2(The One Where No One’s Ready)
ジョーイの But then you left. の then は「そのあと」です。先に座っていたことは否定せず、「でも離れた」という別の事実を持ち出して相手の主張をかわしています。チャンドラーの it’s not like 〜 は「〜というわけじゃない」という意味で、スペインという大げさなたとえを否定することで、「少し席を外しただけ」と伝える返しです。
ジョーイの What’s the big deal? は「何が問題なの?」と、相手のこだわりを小さく見せる問いです。チャンドラーはその big deal をそのまま拾い、The “big deal” is, 〜 と言い返します。相手の言葉を引用し直して自分の主張につなげる形で、作中ではこの形で言い合いが続いていきます。
最後のジョーイの Well, actually, は「いや、正確に言うと」と、相手の言葉を訂正するときの前置きです。チャンドラーの「最後に座っていた」という言い分を文字どおりに受け取り、浴室を指して「最後に座っていたのはあっち」と返しています。言葉の定義を細かく突く、屁理屈の典型と言えます。
「You didn’t say anything about cushions」と言われていないことを盾にする
ジョーイは一度 You can have the chair. と椅子を譲りますが、すぐに取り消します。着替えを済ませたチャンドラーは、You’ll notice that I’m fully dressed. I, in turn, have noticed that you are not. と、自分は着替えたがジョーイはまだだと指摘します。in turn は「今度はこちらが」という意味で、notice を2回重ねたあらたまった言い方が皮肉を強めています。ジョーイは立ち上がりますが、椅子のクッションを持っていこうとします。
Joey: You didn’t say anything about cushions.
(クッションのことは何も言ってなかっただろ。)
Chandler: They’re the essence of the chair!
(クッションこそ椅子の本質だろ!)
Joey: That’s right! I’m taking the essence.
(そうだよ!だから本質を持っていくんだ。)
Friends Season3 Episode2(The One Where No One’s Ready)
You didn’t say anything about 〜 は「〜については何も言っていなかった」という意味です。取り決めに含まれていなかったことを盾に、「だから自分は約束を破っていない」と主張する形で、屁理屈の言い回しとして分かりやすい例です。
チャンドラーの essence は「本質」「肝心なところ」という意味で、クッションがなければ椅子とは言えない、と抗議しています。ジョーイはその言葉にすぐ乗って、That’s right! と同意してから「だから本質をもらっていく」と返します。相手の強い言葉を否定せず、逆に自分の行動の理由に変えてしまう形です。抗議した側の言葉が、そのまま相手の言い分の材料になってしまう流れが分かります。
「Opposite is opposite」仕返しの屁理屈と、同じ理屈が返ってくるオチ
このあと、チャンドラーがジョーイの服を隠したことが分かります。ジョーイは仕返しを宣言します。
Joey: Okay. You hide my clothes. I’m gonna do the exact opposite to you.
(よし。お前は俺の服を隠す。なら俺はお前に正反対のことをしてやる。)
Chandler: What, are you gonna show me my clothes?
(何、俺の服を見せてくれるの?)
Joey: Hey, opposite… is opposite.
(おい、正反対は……正反対なんだよ。)
Chandler: He’s got nothing!
(何も思いついてないな!)
Friends Season3 Episode2(The One Where No One’s Ready)
the exact opposite は「まったくの正反対」です。チャンドラーは「隠す」の反対は「見せる」だと言葉どおりに返し、ジョーイの宣言の穴を突きます。言い返せないジョーイの Opposite is opposite. は、同じ語を繰り返すだけの返事です。ジョーイが部屋を出ていくと、チャンドラーは He’s got nothing!(何も思いついてないな)と言います。have got nothing は「手札がない」「言うことがない」という意味の口語です。
やがてジョーイは、チャンドラーの服を全部着て現れます。
Joey: Okay, buddy boy, here it is. You hide my clothes. I’m wearing everything you own.
(よし、お前、これが答えだ。お前は俺の服を隠す。俺はお前の服を全部着てやる。)
Chandler: Oh, my God!
(うそだろ!)
Friends Season3 Episode2(The One Where No One’s Ready)
ラストはパーティー会場です。ロスに声をかけて論文をほめたシャーマン・ホイットフィールドが、チャンドラーの席に座ります。チャンドラーは You’re kind of sitting in my seat. と、kind of でやわらげて声をかけますが、「俺の席」とはどういうことかと問い返されます。「座っていた」「でも立った」というやりとりのあと、こう続きます。
Chandler: But I never left the room.
(でも、部屋からは一度も出てませんよ。)
Whitfield: But you left the chair area.
(ですが、椅子の周りからは離れましたよね。)
Friends Season3 Episode2(The One Where No One’s Ready)
チャンドラーがジョーイに言われたのと同じ型の理屈を、今度は別の相手から返されるという場面です。最後にチャンドラーは、ジョーイとのときと同じ仕返しを持ち出して場面が終わります。
まとめ|言葉の穴を突く英語の言い回し
But then you left、it’s not like 〜、Well, actually,、You didn’t say anything about 〜、the exact opposite と、相手の言葉を拾って返す言い回しを見てきました。仕組みが分かると、言い合いの場面も聞き取りやすくなります。
椅子の言い合いが会場まで続く流れを追うと、屁理屈の英語が場面ごと記憶に残ります。
このエピソードのほかのコラムやフレーズ記事では、出かける前の別の場面の英語も扱っています。


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