『ドラマdeエイゴ』では、海外ドラマのセリフを通じて英語表現を学びます。
『ビッグバン★セオリー』シーズン4第21話「The Agreement Dissection」の中心にあるのは、ルームメイト協定第9条という架空の条文です。シェルドンはバスルームの使用権をめぐってレナードとプリヤを条文で追い詰めようとし、プリヤは法律家らしい理屈でその主張を切り崩していきます。同じ「規則を盾に取る」やり取りでも、条文を読み上げるシェルドン、争いを避けたいレナード、法律論で反論するプリヤとでは、使う英語の長さも温度もまったく違って聞こえます。
この回のフレーズ10選は、既存の個別記事に結び付く5表現と、台本から新しく選んだ5表現を合わせた構成です。前半の force majeure や so much for のような法廷ごっこの語彙と、後半の tag along や on and off のような日常寄りの語彙を並べることで、同じエピソードの中で硬さの違う英語が行き来する様子を追えるようにしています。
あらすじ(ネタバレなし)
『ビッグバン★セオリー』シーズン4第21話は、バスルームをめぐる小さな衝突から始まります。シェルドンは協定の条文を盾に自分の権利を主張し、プリヤはその条文の穴を法律家らしく突いていきます。二人のやり取りが一段落したあとは、女子会に誘われたペニーとシェルドンのやり取り、そしてシェルドンとエイミーの関係が思わぬ形で進む場面へと話が移っていきます。
エピソードの後半では、規則を盾にする側と、規則の隙を突く側の立場が入れ替わる場面も出てきます。誰がどんな英語で自分の立場を守ろうとしているかに注目すると、フレーズの意味だけでなく、その場を収めるための言葉の選び方も見えてきます。
このエピソードで学べる英語フレーズ
1. force majeure
「不可抗力(当事者の力では避けられない事態)」という意味で使われる表現です。本来は契約書で使われる硬い法律用語ですが、シェルドンはこれを日常のトイレ事情にそのまま持ち込みます。
シェルドン: According to the roommate agreement, paragraph nine, subsection B, the right to bathroom privacy is suspended in the event of force majeure.
(「ルームメイト協定第9条B項によれば、不可抗力が生じた場合、トイレのプライバシー権は停止される」という場面です)
レナードとプリヤが先にバスルームを使っていたところへ、シェルドンが条文の番号まで挙げて割り込む場面です。force majeure は本来、災害や事故など当事者に責任のない事態を指す契約用語ですが、シェルドンはこれを膀胱の限界という個人的な事情に適用し、規則の言葉を都合よく拡大解釈しています。
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2. so much for
「〜もこれまで、〜はおしまい、〜なんてこんなものだ」を表します。話し手が一つの話題や主張を切り上げるときに使う短い決まり文句です。
プリヤ: So much for count one.
(「これで一件目の申し立てはおしまいね」という場面です)
プリヤは、シェルドンが持ち出した条文の緊急事態の定義があいまいであることを指摘し、契約はそれを作成しなかった側に有利に解釈されるという法律の原則を持ち出します。シェルドンの一件目の訴えを退けたところで、この一言で話を締めくくります。長い法律論の後に置かれる短いフレーズなので、理屈で押し切られたシェルドンとの対比が際立ちます。
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3. suit yourself
会話では「好きにすれば、ご自由に、お好きなように」に近い内容を伝える表現です。誘いを断られた側が、それ以上は引き止めないという態度を示すときに使われます。
Penny: Okay, suit yourself.
(「わかった、好きにすれば」という場面です)
ペニーがシェルドンを女子会に誘ったところ、女子っぽい話題に気乗りしない返事をされ、ペニーはこの一言で誘いを引っ込めます。ところがすぐあとに「プリヤの悪口で盛り上がる」という一言を付け加えると、シェルドンは態度を一変させて同行を決めます。相手に判断を委ねる素っ気ない言い方が、直後の一言をきっかけに会話の流れを変えています。
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4. play dirty
「汚い手を使う、卑怯な手を使う、反則する」という意味で使われる表現です。スポーツやゲームだけでなく、人間関係の駆け引きにも使われる言い方です。
Sheldon: Are you suggesting I play dirty?
(「僕に卑怯な手を使えって言うのか」という場面です)
エイミーは、縄張りに踏み込まれた動物が大人しく引き下がったりしないという例えを持ち出し、シェルドンにも同じように強気に出るよう促します。シェルドンはこの助言を「卑怯な手を使え」という意味だと捉え直し、聞き返す形でこの表現を使います。相手の提案を疑問形で言い直すことで、自分の理解が正しいかを確かめる話し方が表れています。
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5. preach to the choir
「釈迦に説法、すでに同意している相手に力説する」を表します。相手がすでに同意している内容を、あらためて力説されたときに返す表現です。
Sheldon: You’re preaching to the choir, sister.
(「それは釈迦に説法だよ、ねえさん」という場面です)
エイミーとの気まずいやり取りが一段落したところで、部屋の外からレナードがプリヤに「自分といると恥ずかしいだろう」とぼやく声が聞こえてきます。シェルドンはその内容にとくに驚くふうもなく、すでに同意している相手にわざわざ説くようなものだと切り返します。直前の場面とは無関係な会話に横から茶々を入れる、シェルドンらしい間の悪さも表れた一言です。
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6. for the record
会話では「念のため言っておくと/はっきりさせておくと」に近い内容を伝える表現です。本題からいったん外れて、自分の立場や事実関係をはっきりさせておきたいときに使う前置きです。
Sheldon: But for the record, I’m an excellent dancer.
(「でも念のため言っておくけど、僕はダンスがうまいんだ」という場面です)
バーナデットにダンスの誘いを笑いながら断られたシェルドンが、誘い自体は断りつつも、自分の評価だけは正しておきたくてこの前置きを使います。このあとにルンバやワルツといった具体的なダンスの種類を挙げて自分の腕前を説明しており、否定に対して事実を並べて反論するシェルドンらしい応じ方です。
7. tag along
「(誘われて、あるいは勝手に)おまけのように一緒について行く、同行する」という意味で使われる表現です。誘う側が気を遣って、無理のない形で同行を促すときに使われる言い方です。
Penny: But you’re welcome to tag along.
(「一緒に来てくれてもいいのよ」という場面です)
ピザナイトを楽しみにしていたシェルドンに、ペニーは女子会の予定があると告げて謝りつつ、断りきれずにこの一言を添えます。誘いというより、その場の空気を和らげるための社交辞令に近い言い方で、シェルドンが実際に付いてくるとまでは想定していない口ぶりです。
8. propose a toast
「乾杯の音頭をとる、乾杯の発声をする」を表します。その場を仕切る人が、飲み会や集まりの始まりを宣言するときに使う定型表現です。
Penny: Okay, I’d like to propose a toast to a wonderful girls’ night out.
(「それじゃ、素敵な女子会に乾杯したいと思います」という場面です)
バーに着いたペニーが、集まった面々を代表して乾杯の音頭を取る場面です。カジュアルな女子会の始まりにしては、あらたまった言い回しを選んでいるところに、ペニーなりの場の盛り上げ方が表れています。
9. on and off
会話では「つき合ったり別れたり、断続的に、ついたり消えたり」に近い内容を伝える表現です。動作が途切れながら続く様子を表す言い方で、時間の長さを示す語句と組み合わせてよく使われます。
Sheldon: Last night you gave me some excellent advice regarding my problem here at home, you kissed me and then vomited on and off for 40 minutes, following which you passed out on your bathroom floor.
(「昨夜、君は僕の家の問題について的確なアドバイスをくれた後、僕にキスをして、40分間断続的に吐き続けて、最後はバスルームの床で気を失ったんだ」という場面です)
前夜の記憶がないエイミーに、シェルドンが起きたことを順序立てて説明する場面です。キスと嘔吐という対照的な出来事を同じ調子で淡々と並べ、感情を交えずに事実だけを報告するシェルドンらしい語り口が、on and off という継続の表現によってさらに際立っています。
10. count on
「〜を頼りにする/当てにする/信頼する/期待する」という意味で使われる表現です。見出しの語呂は日常会話でよく使う言い方ですが、この場面のシェルドンは同じ count という語を、起訴状の「〜条」を数える形式張った使い方で読み上げています。
Sheldon: Count the first: On or about the 28th day of April the accused did knowingly and with malice aforethought deny access to the shared bathroom in a time of emergency to wit, my back teeth were floating.
(「一件目。4月28日前後、被告は悪意をもって承知の上で、緊急時にもかかわらずトイレの使用を拒んだ。すなわち、僕の奥歯はもう限界だった」という場面です)
レナードに対する「告発」を、法廷の起訴状さながらの言い回しで読み上げる場面です。日付や場所を几帳面に述べたうえで、実際の訴えの中身は「トイレを使わせてもらえなかった」という些細な話にすぎず、大仰な形式と内容の落差がこの場面の面白さになっています。
このエピソードの英語学習ポイント
S04E21の学習ポイントは、規則の言葉を使う場面と、素の口語を使う場面が交互に出てくるところです。force majeure や so much for のように法廷ごっこの中で使われる硬い語彙と、suit yourself や tag along のように女子会の場面で使われるくだけた語彙を並べて見ると、同じ英語でも状況によって選ばれる語彙の硬さがまったく違うことが分かります。
シェルドンの発話は、条文の番号や日付まで挙げる几帳面さが特徴で、プリヤの発話は、その規則の穴を法律の原則で突き崩す簡潔さが特徴です。両者のやり取りを聞き比べると、同じ「規則」という話題でも、規則を作る側の言葉と、規則の抜け穴を指摘する側の言葉では、文の長さも語調も違って聞こえてきます。
一方、バーでの女子会の場面では、for the record や propose a toast のように、本題からいったん外れて自分の立場を確認したり、場を仕切ったりする表現が使われています。規則を盾にする硬い場面と、その場のノリで進む柔らかい場面、両方の英語を聞き比べられるのがこの回の面白さです。
キャラクター別|英語の特徴
シェルドン|条項の読み上げ
条項の読み上げというシェルドンの特徴は、感情的な言い争いを避け、規則の文言をそのまま武器にする話し方に表れています。
シェルドン: According to the roommate agreement, paragraph nine, subsection B, the right to bathroom privacy is suspended in the event of force majeure.
(条項番号まで正確に引きながら、緊急事態を訴える発話です)
第9条B項という具体的な番号を挙げることで、単なる言い訳ではなく契約に基づく正当な権利だという体裁を整えています。
同じ状況でも、感情に訴えるのではなく条文の番号で説得しようとするところに、シェルドンの話し方の癖が表れています。
レナード|交渉
交渉というレナードの特徴は、シェルドンと正面から言い合うのではなく、話を第三者に委ねてやり過ごそうとするところに表れています。
レナード: I’d like to refer that to my attorney.
(「その件は弁護士に任せるよ」と、シェルドンの追及を真正面から受けず、プリヤに交渉を委ねる一言です)
attorney という単語を使うことで、恋人であるプリヤを弁護士として立てる冗談めかした言い方になっています。
自分の意見を主張するより、話を持ち出した相手にそのまま返すレナードらしい受け流し方です。
プリヤ|法的表現
法的表現というプリヤの特徴は、シェルドンが持ち出す規則を、法律の理屈でそのまま切り返すところに表れています。
プリヤ: So much for count one.
(法律用語を使って、シェルドンの主張の欠陥を的確に指摘する発話です)
契約はそれを作成しなかった側に有利に解釈されるという原則を持ち出し、シェルドン自身が作った協定の欠陥を、シェルドンに跳ね返す形で指摘しています。
感情的に反論するのではなく、法律の原則を根拠にして相手の主張を静かに退けるところに、プリヤの話し方の特徴が表れています。
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