「a red herring」の意味と使い方|『メンタリスト』S02E12で学ぶ英会話

「a red herring」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

会議で誰かが数字を持ち出して、その場は納得しかけたのに、あとから考えると本題とは関係なかった。そんな「話を逸らされた」経験はありませんか。

そんなときにぴったりの「a red herring」を、『メンタリスト』シーズン2第12話の中盤、爆破された事務所の外でチームが次の捜査方針を決めているところに、ジェーンが横から口を挟むシーンから、一緒に見ていきましょう。

目次

「a red herring」の意味とニュアンス

a red herring
意味:人の注意をそらすもの、偽の手がかり

直訳すると「赤いニシン」。ニシンを燻製にすると身が赤黒く変色し、独特の強いにおいを放つようになります。その燻製ニシンを地面に引きずって道をつけると、猟犬は本来たどるべきにおいを見失って別の方向へ走り出す。ここから、本筋から注意を逸らすものを指すようになりました。

大切なのは、これが「嘘」ではないという点です。猟犬はだまされたのではなく、より強いにおいに正直に反応しただけ。同じように red herring も、内容そのものが虚偽とは限りません。事実であっても、本題と関係のないところへ関心を引き寄せるなら、それは red herring です。

使われる場面は幅広く、推理小説の仕掛け、捜査の空振り、議論での論点ずらし、プレゼンでの話題転換などに及びます。意図的に仕掛けられた場合にも、結果的にそうなった場合にも使えます。

冠詞をつけて a red herring、複数形は red herrings。動詞と組ませるなら、plant a red herring(偽の手がかりを仕込む)、chase a red herring(空振りの線を追う)が定番です。

【ここがポイント!】

  • 核は「においの付け替え」。嘘をつくのではなく、注意を別の方向へ引っぱるという一言
  • 内容が事実でも成立する。本題と関係があるかどうかが判定の分かれ目
  • 議論の交通整理に使える。That’s a red herring. の一言で本筋に戻せるのが便利なところ

『メンタリスト』S02E12のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

爆破された現場事務所の外で、チームが次の一手を確認しています。環境活動家のジャスパーが最有力の容疑者として浮上しており、リズボンは部下にその線を追わせようとしたところ。そこへジェーンが割って入り、リズボンが見事な切り返しを見せます。

Lisbon: You guys look into this Jasper character.
(あなたたちはジャスパーという男を調べて)

Jane: Don’t bother. He’s a red herring.
(その必要はない。あれはただの目くらましだ)

Rigsby: What does that mean, anyway– a red herring?
(そもそも、レッド・ヘリングって何なんです?)

Lisbon: A red herring is what you look in to regardless of what Jane tells you.
(レッド・ヘリングっていうのはね、ジェーンが何と言おうと調べるべきもののことよ)

The Mentalist Season2 Episode12(Bleeding Heart)

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シーン解説と心理考察

リズボンの切り返し方が見どころです。ジェーンの主張に正面から反論すれば、部下の前で議論が始まってしまう。かといって従えば、指揮系統が崩れます。彼女が選んだのは、ジェーンが使った言葉そのものを借りて、定義をすり替えるという方法でした。

これは辞書の説明としては明らかに間違っています。それでも部下には、何をすべきかが完全に伝わる。言葉を奪い返すことで、議論を始めずに指示を通したことになります。

リグスビーの What does that mean, anyway? という素朴な問いが、この切り返しを可能にしている点も見逃せません。彼が聞かなければ、リズボンにこの余地は生まれませんでした。ジェーンの勘は当たることが多く、それを承知のうえで手順を守らせようとするリズボン。二人の力関係が、たった一往復に凝縮されている場面と言えます。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

燻製にされて赤黒く変色したニシンを想像してみてください。強烈なにおいを放つそれを、誰かが地面に引きずりながら歩いていく。あとから来た猟犬は、追うべき足跡のにおいを見失い、ニシンの通った道をまっすぐ走っていきます。

ここで思い出したいのは、犬はだまされていないということです。より強いにおいに、正直に反応しただけ。だから red herring は「嘘」ではなく「注意の付け替え」を指します。

劇中でも、ジェーンが red herring と言った直後に、リズボンが定義ごと言い換えて返しました。においの強いほうへ引かれていく犬の姿を頭に置いておけば、議論が本筋から外れた瞬間に、この言葉が自然と口をついて出てきます。

このエピソードの他のフレーズ

例文で覚える「a red herring」

議論の場で使いやすい表現なので、指摘の一言として覚えておくと便利です。3つの場面で確かめてみましょう。

That statistic is a red herring—it doesn’t answer the question.
(その統計は論点そらしです。問いの答えになっていません)
会議で相手が数字を持ち出してきたときの切り返しです。ダッシュのあとに理由を続けることで、否定だけで終わらず、議論を本筋へ戻す形になります。

The author plants a red herring in the second chapter.
(作者は第2章に偽の手がかりを仕込んでいる)
読んだ小説について語る場面です。plant(仕込む)と組み合わせるのが定番で、作り手が意図的に配置したという含みが出ます。

A: Should we look into the vendor’s pricing complaint first?
B: I’d say that’s a red herring. The real issue is the delivery delay.
(A:業者からの価格に関する苦情を先に調べるべきかな?)
(B:それは論点そらしだと思う。本当の問題は納品の遅れだよ)
優先順位を相談するやり取りです。The real issue is と続けることで、何が本題かをその場で示せます。

あわせて覚えたい関連表現

a wild goose chase
(無駄骨、当てのない追跡)
red herring が注意を逸らす材料そのものを指すのに対して、こちらは逸らされた結果として生じる徒労を指します。原因と結果の関係にあると考えると整理しやすくなります。

a smoke screen
(煙幕、目くらまし)
全体を覆って見えなくする、という方向の表現です。red herring が別の方向へ誘導するのに対して、smoke screen は本体を隠します。隠すか、逸らすかの違いになります。

a straw man
(わら人形論法)
相手の主張をわざと歪めて、その歪めた形に反論する詭弁を指します。red herring が論点そのものを移すのに対して、straw man は論点を残したまま中身をすり替えます。

Note|猟犬を惑わせたニシンの話

赤いニシンがなぜ「偽の手がかり」を意味するようになったのか。この語源には、しばしば一人の人物の名前が登場します。

19世紀初頭、イギリスの著述家ウィリアム・コベットが、猟犬の訓練に燻製ニシンを使う話を書いたとされています。においの強いニシンを引きずって別の道をつくり、そちらへ走ってしまう犬を鍛える。コベットはこの話を、当時の新聞報道が世間の関心を本題から逸らすさまへのたとえとして持ち出したと伝えられています。1807年のことだったという説明が広く流通していますが、その逸話自体が実際の訓練法だったのか、比喩のために作られた話だったのかについては議論があります。

比喩としての red herring が一般化するのは、それよりあとの時代です。20世紀に入って推理小説が大衆娯楽として広がると、読者を欺くために配置された偽の手がかりを指す技法名として定着していきました。この用法には暗黙の作法があり、後から読み返したときに伏線として筋が通っていなければ、単なる読者への裏切りになってしまう。フェアであることが条件とされてきたわけです。

劇中でジェーンが放った He’s a red herring. という一言も、まさにこの推理小説の文脈に立っています。捜査ものの登場人物が、自分たちの物語の構造を言い当てているような響きがある。そしてリズボンは、その定義をひっくり返して現場の指示に変えました。

言葉の来歴を知っていると、あの一往復の面白さがもう一段深くなります。

まとめ|定義をひっくり返したリズボンの一手

a red herring は、注意を本筋から別の方向へ引っぱるものを指す表現です。嘘とは限らず、事実であっても本題と関係がなければ成立する。この線引きを押さえておくと、使いどころを外しません。

議論の場では、指摘のための一言として役立ちます。相手を嘘つき呼ばわりせずに、その話は本題ではないと伝えられる。感情的にならずに軌道修正できる表現は、それだけで持っている価値があります。

劇中のリズボンは、その言葉を借りて定義ごと作り替えるという、もう一歩先の使い方を見せました。言葉を奪い返すという発想も含めて、表現の引き出しに加えてみてください。

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