海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手が怒ると分かっていて、それでもわざと一言そえてしまう。あるいは自分が、明らかに乗せられていると気づきながら、つい言い返してしまう。そんな場面に心当たりはありませんか。
そんなときにぴったりの「wind someone up」を、『メンタリスト』シーズン2第12話の中盤、市長を怒らせて聞き取りを打ち切られたジェーンが、廊下でリズボンに理由を明かすシーンから、一緒に見ていきましょう。
「wind someone up」の意味とニュアンス
wind someone up
意味:(人を)からかって怒らせる、挑発する
wind は「巻く」。ぜんまい仕掛けの時計やおもちゃのネジを回して、内部のバネを張りつめさせる、あの動作を指します。それを人に対して行うのが wind someone up で、相手の感情を少しずつ高ぶらせていく行為を表します。
ポイントは、偶然そうなったのではなく、意図してやっている点です。相手が反応すると分かったうえで、あえて言葉を選んでいる。ですから「怒らせてしまった」ではなく「怒らせにいった」という含みになります。
イギリス英語とアメリカ英語で、受け取られ方が少しずれます。イギリスでは友人同士の軽い冗談として日常的に使われ、Are you winding me up? は「冗談でしょ?」に近い響きになります。アメリカでは苛立たせる側の意味が前に出て、冗談の色が薄れる傾向があります。
語形は wind someone up と wind up someone のどちらも使えますが、目的語が代名詞のときは wind me up のように必ず間に挟みます。過去形は wound(発音はワウンド)で、winded ではない点にも注意が必要です。
【ここがポイント!】
- 核はぜんまいを巻く動作。少しずつ張りつめさせて、限界で反応させるという時間差の表現
- うっかりではなく、狙ってやっている。この意図の有無が意味の中心にある一言
- イギリスでは冗談寄り、アメリカでは苛立ち寄り。相手の出身で受け取り方が変わるのがコツ
『メンタリスト』S02E12のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
市長への聞き取りの最中、ジェーンが踏み込みすぎた一言を放ち、二人はまとめて部屋を追い出されてしまいます。廊下に出たリズボンは、自分まで感情的になってしまったことに腹を立てている様子。そこへジェーンが、いつもの調子で説明を始めます。
Lisbon: You blew my cool. I swear, sometimes I think you need medication. It’s like you’ve got A.D.D. or something.
(あなたのせいで冷静さを失ったじゃない。本当に、たまに薬が要るんじゃないかと思うわ。注意欠陥か何かみたい)Jane: Well, “A,” I’m not so sure that A.D.D. even exists, and “B,” I was winding her up for a reason.
(まず1つ、それが実在するのかも怪しいね。2つ目、理由があって彼女を怒らせたんだ)Lisbon: Which is?
(その理由って?)Jane: A diversion. The message the aide brought in made her nervous, so I took it.
(気をそらすためさ。秘書が持ってきたメモに動揺していたから、いただいた)The Mentalist Season2 Episode12(Bleeding Heart)
シーン解説と心理考察
ジェーンの返答が「A」「B」と番号を振る形になっているところに、この人物の性格がよく出ています。怒っている相手に対して、まず論点を整理してから答える。謝る気配がまったくないうえに、順序立てて話すぶん、余計にリズボンの苛立ちを煽る構造になっています。
for a reason という言い方も見どころです。挑発したことは認めながら、それが目的ではなく手段だったと主張している。実際、市長が動揺した隙にメモを抜き取っており、騒ぎを起こすこと自体が視線を集める役割を果たしていました。
一方のリズボンは、Which is? と短く聞き返すだけで先を促します。呆れながらも話を最後まで聞く。この一往復に、彼女がジェーンをどう扱ってきたかの積み重ねが表れています。振り回される側でありながら、結果は出ると知っている。二人の関係が短いやり取りから見えてくる場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
ぜんまい仕掛けのおもちゃを思い浮かべてみてください。ネジを回すたびに内部のバネが張りつめていき、限界まで巻いたところで手を離すと、一気に走り出します。
wind someone up が指しているのは、この「巻いて張りつめさせる」作業そのものです。巻いている最中は静かで、動き出すのは手を離した瞬間。だから挑発から反応まで、わずかな時間差があります。
ジェーンは市長を巻き上げて席を立たせ、その隙にメモを抜き取りました。巻いて、離して、動き出したところを利用する。この一連の流れごと覚えておけば、wind someone up が単なる悪ふざけではなく、目的があって仕掛ける場合もある表現だと腑に落ちます。
例文で覚える「wind someone up」
進行中の行為として使われることが多く、-ing 形との相性が良い表現です。3つの場面で確かめてみましょう。
Stop winding him up—he’s had a long day.
(もうからかうのはやめて。彼は一日中大変だったんだから)
家族や友人がじゃれ合っているのを、横から止める場面です。stop -ing の形を使うことで、すでに始まっている行為を今この場でやめさせるニュアンスが出ます。
He has a talent for winding people up in meetings.
(彼は会議で人を苛立たせる才能があるんだ)
同僚の困った癖を、少し呆れながら評する言い方です。talent for と組み合わせると、褒めているように見せかけた皮肉になります。
A: Did you really tell your boss you’d finished the report?
B: Are you winding me up? I would never say that.
(A:上司に報告書は終わったって本当に言ったの?)
(B:からかってるの? そんなこと言うわけないでしょ)
信じがたい話を聞かされたときの返しです。イギリス英語ではこの形が「冗談でしょ?」に相当し、疑問文ひとつで軽く受け流せます。
あわせて覚えたい関連表現
push someone’s buttons
(人の気に障ることをする)
相手の弱点を正確に突く、という含みが強い表現です。wind someone up が少しずつ張りつめさせていくのに対して、こちらは一点を的確に押して即座に反応させるイメージになります。
get a rise out of someone
(からかって反応を引き出す)
相手が反応することそのものが目的である点が特徴です。wind someone up は感情が高ぶった状態まで含みますが、こちらは反応が返ってきた時点で目的が達成されます。
yank someone’s chain
(からかう、かつぐ)
嘘やほら話を使ってだます色が濃い表現です。wind someone up が事実を突いて苛立たせる場合もあるのに対して、こちらは中身が作り話であることが前提になります。
Note|英と米で半歩ずれる wind up
同じ英語圏でも、この句動詞は大西洋を挟んで受け取られ方が変わります。イギリスで wind someone up と言われたときと、アメリカで言われたときでは、聞き手の身構え方が違ってくるのです。
イギリス英語では、これは友人同士のじゃれ合いを指す日常語です。相手をからかって反応を楽しむ文化が言葉の側にも反映されていて、Are you winding me up? が「まさか、冗談だろう?」に相当する定型句として定着しています。名詞形の wind-up も、「かつぎ」「いたずら」の意味で普通に使われます。悪意の有無で言えば、悪意なし側に置かれる表現です。
対してアメリカ英語では、意味の重心が「苛立たせる」の側へ寄ります。冗談として使えないわけではありませんが、まず頭に浮かぶのは annoy や provoke に近い方向で、名詞形の wind-up が「かつぎ」の意味で使われる場面も少なくなります。アメリカの話者が同じ状況を言うなら、mess with someone や pull someone’s leg を選ぶことのほうが多いでしょう。
このずれを知っておくと、劇中のジェーンの発言も読みやすくなります。ここでの winding her up は、明らかに冗談ではありません。市長を意図的に苛立たせ、判断力を落としたところで隙を作った。アメリカのドラマらしい、挑発寄りの使い方です。
同じ語でも、渡る海によって温度が変わる。句動詞の面白さは、こういうところにあります。
まとめ|挑発が手段になるとき
wind someone up は、ぜんまいを巻くように相手の感情を張りつめさせていく表現です。うっかり怒らせてしまうのではなく、狙って巻きにいく。この意図の有無が、意味の中心にあります。
覚えておくと、自分が乗せられている場面にも名前をつけられるようになります。Don’t let him wind you up. と言えば、相手の狙いを見抜いたうえで受け流している、という姿勢まで伝わる。感情のやり取りを一段引いた場所から言葉にできる表現です。
劇中のジェーンにとって、挑発は目的ではなく手段でした。何のために巻いたのか。そこまで含めて読み解くと、この句動詞の使いどころが見えてきます。会話のレパートリーに加えてみてください。


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