海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回は『BONES』シーズン2第18話から、相手を出し抜いてこっそり逃れる際に使われる、少しユーモラスで実用的なイディオムをご紹介します。
日常のちょっとした「逃亡劇」をスマートに表現できる、知っていて損はないフレーズですよ。
実際にそのシーンを見てみよう!
キャム、ブレナン、ブースの3人が、現場で見つかった脚の身元について話しているシーンです。
キャムがブースをからかうように問いかけます。
Cam: West Virginia state troopers got a DNA sample at Ice Pick’s arrest. This is definitely his leg. Was she pretty?
(ウェストバージニアの州警察がアイスピックの逮捕時にDNAサンプルを採取していたわ。これは間違いなく彼の脚よ。彼女、美人だった?)Brennan: Ice Pick is a male.
(アイスピックは男性よ。)Cam: I mean, the bounty hunter who gave Booth the slip.
(ブースをまいた賞金稼ぎのことよ。)Booth: You know, she didn’t get away ‘cause she was pretty…
(あのな、彼女が逃げたのは美人だからじゃないぞ…)
BONES Season2 Episode18 (The Killer in the Concrete)
シーン解説と心理考察
脚の持ち主が殺し屋のアイスピックだと判明した直後、キャムはわざと「彼女は美人だった?」とブースに水を向けます。
ブレナンが真面目に「男よ」と訂正したのを受けて、キャムは「ブースを出し抜いた女賞金稼ぎのことよ」とチクリ。
タフで優秀なFBI捜査官としてのプライドが高いブースが、よりによって女性に一杯食わされて逃げられたという事実を、愛のある皮肉でいじっているんですね。
図星を突かれてムキになって言い訳をするブースの、長年の付き合いを感じさせるユーモラスなやり取りです。
フレーズの意味とニュアンス
give A the slip
意味:A(人)をまく、Aから逃れる、Aを出し抜く
give(与える)とthe slip(滑ること、こっそり逃げること)を組み合わせたイディオムです。
直訳すると「滑り逃げることを相手に与える」となりますが、そこから「追跡者から気付かれないようにスッと姿を消す」「相手の目を盗んで逃げ切る」という意味で使われます。
【ここがポイント!】
このフレーズの核心的なニュアンスは「相手を意図的に欺いて逃げる、知能犯的な巧妙さ」です。
力ずくで振り切って逃げるというよりも、相手の注意をそらしたり人混みに紛れたりして、相手に隙を作らせて「ツルッと滑り落ちるように」出し抜く様子を鮮やかに表現できます。
実際に使ってみよう!
I managed to give my talkative boss the slip and left the office early.
(おしゃべりな上司をなんとかまいて、早めに退社したよ。)
捕まると長話になりそうな相手から、気付かれないようにサッと身をかわして逃れた時の、ちょっとした達成感を表すのにぴったりです。
The party was so boring, so we gave everyone the slip and went for coffee.
(パーティーがすごく退屈だったから、みんなを出し抜いてコーヒーを飲みに行ったんだ。)
つまらない飲み会や集まりから、誰にも挨拶せずにこっそりと抜け出した際によく使われる、少しユーモラスな表現ですね。
My dog gave me the slip when I opened the front door.
(玄関のドアを開けた時、うちの犬に隙を突かれて逃げられちゃった。)
人間だけでなく、素早いペットがこちらの意表を突いてスルリと逃げ出してしまった時などにも、この巧妙なニュアンスが活きてきます。
BONES流・覚え方のコツ
ブースは非常に優秀なFBI捜査官ですから、彼から逃げ切れる犯罪者はそう多くありません。
そんなブースの目を欺き、手から「ツルンと滑り抜けて(slip)」姿を消した凄腕の女賞金稼ぎ。
その事実をキャムにからかわれて、「美人だから逃がしたわけじゃない!」とムッとしているブースの悔しそうな表情とセットで記憶してみましょう。
このフレーズが持つ「巧妙に相手を出し抜く」という情景が、しっかりと脳裏に焼き付きますよ。
似た表現・関連表現
sneak out
(こっそり抜け出す)
見つからないように足音を忍ばせて、その場から離れる動作そのものに焦点を当てた表現です。「give A the slip」が誰か特定の「人」を出し抜くのに対し、こちらは「場所」から抜け出す際によく使われます。
elude
(〜を(巧みに)逃れる、〜を回避する)
give A the slipと似た「巧みに逃げる」という意味を持ちますが、よりフォーマルな響きの単語です。警察の捜査網や、困難な状況そのものから身をかわす時などに使われます。
shake off
(〜を振り切る)
犬が体をブルブルと振って水気を飛ばすように、自分にまとわりつく追跡者や尾行者を「力強く振り落として逃げる」という、よりアグレッシブで物理的な響きを持ったフレーズです。
深掘り知識:「slip」に隠された意図的なニュアンス
誰もが楽しめる、さらに一歩踏み込んだ知見としてご紹介したいのが、冠詞「the」の働きです。
ただ滑るだけなら「slip」ですが、ここに「the」がつくことで、「the slip(あの見事な逃走劇、例の出し抜き方)」という、一つの確立された名詞の塊になります。
つまり、偶然足を滑らせたのではなく、計算し尽くされた「見事な逃走」を相手に「プレゼントしてやった(give)」という、逃げた側の余裕や意図がこの短いフレーズにたっぷりと込められているのです。
日常のうっかりミスを表す単語が、組み合わせ次第でこんなにもドラマチックで計算高い表現に変わるのは、英語のとても面白いところですよね。
まとめ|日常の「こっそり」を彩る便利なイディオム
いかがでしたでしょうか。今回は、サスペンスドラマの追跡劇でよく耳にする表現ですが、実は日常のちょっとした「逃亡劇」にも使える便利なフレーズをご紹介しました。
面倒な相手から逃げ切った時や、退屈な場からこっそり抜け出した時など、ぜひ心の中で「I gave them the slip!」と唱えながら、その巧妙なニュアンスを楽しんでみてくださいね。


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