海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
夜遅くのオフィスで、いるはずのない場所に誰かがいるのを見つけて、思わず身構えてしまうような瞬間があります。相手も自分も、後ろめたさを抱えているとなればなおさらです。
そんな探り合いの空気を映し出す「be up to something」を、『ホワイトカラー』シーズン2第8話の中盤、深夜の監査人のオフィスに忍び込んでいたジェシカを見つけたジョージが、互いの立場を牽制し合う場面から、一緒に見ていきましょう。
「be up to something」の意味とニュアンス
be up to something
意味:何か良からぬことをたくらんでいる、何かこそこそやっている
be up to something は、相手の行動が普段と違っていたり、説明のつかない不自然さがあるときに「何か企んでいるな」と疑う際の定番表現です。実際に悪事だと確定していなくても、「怪しい」「裏があるのでは」という疑念を表すニュアンスで日常的に使われます。
up to は本来「~に近づく」「~に至るまで」という意味合いを持つ前置詞句で、そこに漠然とした something がつくことで、「何に向かっているのか分からないけれど、確実に何かをしている」という不透明さが生まれます。
疑問文の What are you up to? は「最近どうしてる?」という軽い挨拶として使われることも多く、be up to something とはニュアンスが変わる点も覚えておくと便利です。文脈や声のトーンによって、単なる近況確認にも、疑いを含んだ問いかけにもなる、振れ幅の大きい表現でもあります。
同じ疑いを表す be suspicious of と違い、be up to something は「何をしているか具体的には分からないが、とにかく何かしている」という、対象の曖昧さそのものに焦点がある点が特徴です。
【ここがポイント!】
- 核は何かに向かって静かに近づいていく、正体のつかめない不透明さ
- 悪事が確定していなくても「怪しい」と疑う場面で幅広く使える表現
- 疑問形 What are you up to? は日常の軽い挨拶にもなる点に注意
『ホワイトカラー』S02E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
夜遅く、ノービス社の従業員ジョージが、監査人(実はニールの偽名)のオフィスにジェシカがいるのを見つけて驚きます。互いに用件を済ませたあと、なぜ警備を呼ばなかったのかとジェシカに問い詰められたジョージが返す一言に注目です。
Jessica: I needed to see R&D’s field studies on product launch.
(製品発表に向けた研究開発部門のフィールド調査資料を確認する必要があったの。)George: Oh, those are in Records on 12.
(ああ、それなら12階の記録室にあるよ。)Jessica: Twelve?
(12階?)George: Mm-hm.
(ああ。)Jessica: Got it. So, uh, why didn’t you call security? You could’ve reported me.
(わかったわ。ところで、どうして警備を呼ばなかったの?私のこと、通報できたはずでしょ。)George: I’m here after hours. I could be up to anything. Which means you could probably report me too.
(僕だって定時後にここにいるんだ。何をたくらんでいてもおかしくない。つまり、僕のことだって君は通報できたはずってことさ。)White Collar Season2 Episode8 (Company Man)
シーン解説と心理考察
用件をめぐるやり取りが一段落したあと、ジェシカがふと核心の疑問に戻ります。「どうして警備を呼ばなかったのか」という問いは、この場にいること自体が二人とも本来説明のつかない状況だという事実を突きつけるものです。
それに対する「僕だって定時後にここにいるんだ。何をたくらんでいてもおかしくない」という返しには、お互いの立場が対等であることを示す牽制の意図がにじみます。相手を通報できる資格が自分にはない、という力学を、遠回しに、しかし的確に言い当てている一言です。
この後に続く「僕のことだって君は通報できたはずだ」という指摘は、腹の探り合いをしている二人が、あえて何も追及しないという暗黙の了解を結ぶ瞬間としても機能しています。互いの疑念を言葉にしながらも、あえて深追いしない距離感が会話の温度を変えています。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
何かに向かって静かに近づいていく足音を思い浮かべてみましょう。up to は「~に至るまで」「~に近づく」という意味合いを持ち、そこに漠然とした something がつくことで、正体のつかめない不透明さが生まれます。
劇中のジョージのように、後ろめたい状況にいる者同士が互いに「I could be up to anything」と牽制し合う場面をイメージすると、疑念と探り合いのニュアンスが記憶に残りやすくなります。相手の足音は聞こえるのに、何をしているのかは見えない、そんな感覚で覚えておくと実用的です。夜のオフィスに響く足音そのものが、このフレーズの正体不明さを体現していると言えます。
例文で覚える「be up to something」
家族の様子から友人へのからかいまで、be up to something を、3つの例文で確認していきましょう。ちょっとした違和感を言葉にするときに便利な表現です。
My kids have been awfully quiet. I think they’re up to something.
(子どもたちがやけに静かだ。何かたくらんでいるに違いない。)
子どもの不自然な静けさに気づく家庭の場面です。awfully quiet という普段との落差が、疑念を後押ししています。
The company denied it, but investors suspected something was up.
(会社は否定したが、投資家たちは何かあると疑っていた。)
企業の不自然な動きを報道で説明するビジネスの場面です。something was up という形で、be up to something のバリエーションが使われています。
A: You’ve been smiling all day. What’s going on?
B: Nothing. Why do you think I’m up to something?
(A:一日中ニヤニヤしてるけど、どうしたの?)
(B:別に。どうして何か企んでると思うわけ?)
友人や同僚の様子を問いただすカジュアルな会話です。疑われた側が軽く否定しつつ切り返す、日常的なやり取りが伝わってきます。
あわせて覚えたい関連表現
plot something
(何かを企てる、たくらむ)
be up to something よりも意図的で計画的な悪事を指すことが多く、より強い響きを持つ表現です。漠然とした不透明さより、具体的な企みに焦点があり、疑いというより確信に近い語感を持ちます。
have something up one’s sleeve
(何か隠し玉を持っている)
必ずしも悪事とは限らず、まだ明かしていない切り札や計画がある、という前向きな文脈でも使われます。be up to something の疑念のニュアンスとは対照的な、期待を含む表現として使い分けられます。
act suspiciously
(怪しい様子で振る舞う)
be up to something が「何かをしている」という行為そのものに焦点を当てるのに対し、こちらは様子・態度そのものを描写する表現です。行為か様子か、という視点の違いがあります。
Note|upが持つ「近づく・至る」というイメージの広がり
be up to something の up to は、単独でもさまざまな表現に姿を変える便利な前置詞句です。up という語自体には「上へ」という方向のイメージがありますが、to と結びつくことで「~の方向へ近づいていく」という意味合いに変化します。
たとえば up to date は「最新の状態に近づいている」、up to par は「基準の水準に達している」という意味で使われます。up to no good という言い回しになると、be up to something よりもさらに踏み込んで「明らかに良からぬことをしている」という確信に近いニュアンスを帯びます。これらに共通するのは、「まだ到達していない何かに向かって近づいている」という感覚です。be up to something も同じ構造を持ち、何かに向かって近づいている行為はあるのに、その行き先(something)がはっきりしないという不透明さが疑念を生みます。up という方向性のイメージと、正体不明の something という組み合わせが、この表現の絶妙な曖昧さを支えていると言えます。
劇中でジョージが口にした「I could be up to anything」も、まさにこの構造を体現しています。「何に向かっているか分からないが、確実に何かに近づいている」という不透明さこそが、互いを牽制する材料として機能していました。
up という前置詞ひとつが持つ方向性のイメージが、これほど多様な表現を支えているのは、英語の語彙の広がり方として興味深い点です。
まとめ|その怪しさ、見過ごしていませんか
be up to something は、相手の行動に説明のつかない不自然さがあるときに、「何か企んでいるな」という疑念をそのまま言葉にする表現です。悪事が確定していなくても、日常のちょっとした違和感を伝える場面で気軽に使えます。
子どもの静けさに気づいたときも、同僚の不自然な様子を指摘するときも、この一言があれば、疑いの温度をそのまま相手に伝えられます。
夜遅くのオフィスで互いの後ろめたさを認め合ったジョージとジェシカのやり取りには、疑いながらも深追いしない、大人同士の距離感が表れていると言えます。
相手の怪しさに気づいたとき、追及するか見過ごすか。その選択が関係性の温度を左右するのも、この表現が映し出す人間模様のひとつです。


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