海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
自分だけが約束の重荷を背負わされ、相手はどこかで平然と裏切っているのではないか、そんな不信感を覚えた経験はありませんか。対等であるはずの関係が、実は一方だけに負担が偏っていたと気づく瞬間は、決して珍しいものではありません。
そんなときに使える「hold up one’s end of the bargain」を、『ホワイトカラー』シーズン2第14話の終盤、脱獄したケラーへの報復を単独で企てるラングに、ピーターが言葉で迫るシーンから、一緒に見ていきましょう。
「hold up one’s end of the bargain」の意味とニュアンス
hold up one’s end of the bargain
意味:約束(取り決め)の自分の役割を果たす
bargain(取引・約束)には両者が担うべき end(端、役割分担)があり、それを hold up(支え続ける、果たす)というイメージから、「自分が約束した義務を果たす」という意味で使われる表現です。逆に果たさない場合は not hold up one’s end of the bargain と表現されます。
契約や約束の履行状況を確認するとき、相手が約束を破ったことを非難するとき、ビジネスの取引条件について話すときなど、フォーマルな場面でもカジュアルな場面でも使える汎用性の高さが特徴です。keep one’s promise よりも「双方が対等に義務を負っている」という取引的なニュアンスが強く出る点が、この表現ならではの持ち味と言えます。
否定形の he’s not gonna hold up his end のように使えば、相手への不信感や、約束が反故にされる予感を端的に伝えることができます。end という単語が「端」を意味することを意識すると、両者がそれぞれ違う側から同じ棒を支えているような構図が浮かびやすくなります。
【ここがポイント!】
- 「hold up one’s end of the bargain」の核は、取引の両端を互いに支え合うイメージ
- 契約からカジュアルな口約束まで、フォーマル度を問わず使える表現
- 否定形にすると、相手への不信感を端的に示す警告の言葉にもなる
『ホワイトカラー』S02E14のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
脱獄したケラーの手引きをしたラングは、以前仕留め損ねた相手への意趣返しとして、単独でケラーへの報復に動こうとします。房に閉じ込められたまま、ピーターは挑発をさらりと受け流しながら本題に切り込み、ケラーが約束を守るはずのない相手であることを突きつけます。銃を手にしたまま聞く耳を持たないラングに対し、ピーターは言葉だけで状況を変えようとする、緊張感の高い場面です。
Peter: Wouldn’t be the first time.
(別に今回が初めてってわけじゃないだろう。)Lang: Now is quiet time.
(今は黙ってる時間だ。)Peter: So, you thought that you could do one last job and disappear. He is not gonna hold up his end of the bargain. You are going down for this.
(それで、最後にひと仕事してから姿を消せると思ったんだろう。あいつは自分の役割を果たしはしないぞ。お前はこれで終わりだ。)Lang: Hey! I know what I’m doing. Do you understand that? I shot him once, okay? And now I’m gonna finish the job.
(おい! 自分が何をしているかはわかってる。理解できるか? 一度、奴を撃った。今度こそ終わらせる。)White Collar Season2 Episode14 (Payback)
シーン解説と心理考察
「別に今回が初めてってわけじゃないだろう」という一言で相手の出方を軽くいなすピーターに対し、ラングは「今は黙ってる時間だ」と切って捨てます。一触即発の空気の中でも、ピーターは臆することなく本題を切り出します。動揺を見せずに軽口から入るあたりに、危険な相手との対峙に慣れたベテラン捜査官らしい落ち着きが表れています。
「最後にひと仕事してから姿を消せると思ったんだろう」という指摘は、ラングの計画そのものを見抜いた冷静な分析です。続く「あいつは自分の役割を果たしはしない」という警告には、ケラーという人物の信用のならなさを知り尽くしたピーターの説得の意図がにじみます。相手を力で止めるのではなく、言葉で現実を突きつけることで思いとどまらせようとする姿勢が表れている場面です。ケラーへの怒りではなく、ラング自身の将来を案じるかのような論理立てが、単なる威圧とは違う説得の質を生んでいます。
それでもラングは引き下がらず、「自分が何をしているかはわかってる」「一度、奴を撃った。今度こそ終わらせる」と、すでに一度手を下した相手への執着を隠しません。説得の言葉と、それを撥ねつける決意とがぶつかり合う、緊張感の高いやり取りです。冷静な理屈と、それを跳ね返す激情との対比が、この対峙の温度を際立たせています。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
天秤やシーソーの両端を、それぞれの当事者が支え合っているイメージを思い浮かべてみましょう。片方が手を離せば全体が崩れてしまうように、bargain(取引)も両者がそれぞれの役割を支え続けることで初めて成り立ちます。
劇中でピーターが口にした否定形は、まさに「相手が支えるはずの手を離してしまうだろう」という不信感の表明でした。片方だけが重荷を背負い続ける不公平な構図をイメージしておくと、約束が反故にされそうな場面でもすっと言葉が浮かんでくるはずです。
天秤の片側にだけ重みがかかり、もう片側が軽くなっていく様子を思い浮かべると、この表現が持つ「均衡が崩れる予感」がより具体的に感じ取れます。
例文で覚える「hold up one’s end of the bargain」
契約の確認から友人への不満まで、hold up one’s end of the bargain が使われる幅広い場面を、3つの例文で確認していきましょう。
I did my part, but he didn’t hold up his end of the bargain.
(私は自分の役目を果たしたが、彼は約束を守らなかった。)
not hold up の代表的な使い方で、自分は役目を果たしたのに相手が応じなかった、という不満を語る場面に向いています。
Both companies agreed to hold up their end of the bargain and deliver on time.
(両社は自分たちの役割を果たし、期限通りに納品することで合意した。)
契約条件を説明するビジネスシーンで使われる、フォーマルな言い回しです。
A: I’ll cover the flights if you handle the hotel booking.
B: Deal. I’ll hold up my end of the bargain.
(A:ホテルの予約を頼めるなら、航空券は私が持つよ)
(B:決まりだ。自分の役目はちゃんと果たすよ)
友人同士で役割分担を決める、カジュアルな会話での使い方です。
あわせて覚えたい関連表現
keep one’s promise
(約束を守る)
hold up one’s end of the bargain よりも一般的でシンプルな表現で、取引に限らずあらゆる約束に対して使えます。
live up to one’s word
(自分の発言に恥じないよう行動する)
hold up one’s end of the bargain が取引や合意上の役割に焦点を当てるのに対し、live up to one’s word は発言そのものへの誠実さに重きを置きます。
renege on a deal
(取引を反故にする)
hold up one’s end of the bargain の否定形に近い意味を持ちますが、renege はより強く一方的に約束を破棄するニュアンスを含みます。
Note|「約束を守る」を表す英語表現の使い分け
約束を守ることを伝える英語表現は一つではなく、対象がどこまで広いか、そしてどれだけフォーマルかによって選ぶべき言葉が変わってきます。
keep one’s promise は、子どもとの口約束からビジネスの契約まで幅広く使える、もっとも一般的な言い方です。特定の相手や状況を選ばないぶん、汎用性の高さが魅力になります。一方 live up to one’s word は、約束の内容そのものよりも「発言した人間としての誠実さ」に焦点を当てた表現で、有言実行という日本語のニュアンスに近いものがあります。renege on a deal は、これらとは対照的に、約束を破る側の身勝手さを強く非難するときに使われる硬めの表現で、ビジネスや政治の文脈でも耳にする言い回しです。
hold up one’s end of the bargain は、この中でも「取引の両者が対等に義務を負っている」という構図を明確に示せる点が特徴です。相手だけでなく自分の側の役割も同時に意識させる表現であることが、他の言い方との違いになっています。
3つを並べてみると、keep one’s promise は対象の広さ、live up to one’s word は発言者としての誠実さ、renege on a deal は破棄する側への非難、というようにそれぞれ異なる角度から「約束」という同じテーマを切り取っていることが見えてきます。どの角度から述べたいかによって、選ぶべき表現が自然と絞られてきます。
対象の広さとフォーマル度を意識して使い分けると、約束にまつわるニュアンスがより正確に伝わります。
まとめ|対等な約束が崩れる瞬間を言い当てる一言
hold up one’s end of the bargain は、取引の両端を互いに支え合うイメージから、約束の自分の役割を果たすことを表す表現です。否定形にすれば、相手への不信感や裏切りの予感を端的に伝える警告にもなります。
一触即発のやり取りの中でピーターが放った警告には、ケラーという人物を知り尽くしたうえでの冷静な分析が込められていました。約束が果たされないと見抜いたときの言葉の選び方には、感情的にならずに現実を突きつける説得の技術が表れています。
対等であるはずの約束が崩れそうな場面に気づいたとき、この一言があれば状況を的確に言い表せます。危険を承知で言葉を尽くしたピーターの姿勢は、力ではなく理屈で相手を止めようとする説得の一つの形として印象に残ります。


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