海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
ついこの前の出来事だと思っていたのに、振り返ってみると案外月日が経っていて、時間の流れの速さにふと驚いたことはありませんか。
そんな感覚にぴったりの「not that long ago」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン11第4話の冒頭、検診の場でハワードが娘ハレーの妊娠中の記憶を振り返る場面から、一緒に見ていきましょう。
「not that long ago」の意味とニュアンス
not that long ago
意味:それほど昔ではない、つい最近
not that long ago は、long ago(ずっと前)という表現に not that(それほど)を添えることで、「思っていたほど昔ではない」という話し手の時間感覚を伝える言い回しです。recently のような客観的な「最近」とは違い、振り返ってみたら案外近い過去だった、という驚きや感慨を含むのが特徴です。
that は本来「それほど」という度合いを示す副詞で、not that に形容詞や副詞を続ける形は日常会話のあちこちに登場します。not that long ago はその代表的な一例で、時間の流れに対する感覚のずれを軽く表現するときに重宝します。度合いを弱める that の働きを知っておくと、似た構造を持つ他の表現にも応用しやすくなります。
文中では it feels like it wasn’t that long ago のように従属節で使われることもあれば、単独で Not that long ago, … のように文頭に置かれることもあり、過去の出来事を振り返る会話の入り口として機能します。話し手自身が驚きながら語っている響きが出るため、聞き手にもその時間感覚が伝わりやすいのが特徴です。
【ここがポイント!】
- 「not that long ago」の核は、long ago に not that を添えて度合いを弱める構文
- recently よりも口語的で、話し手の「案外最近だ」という実感がにじむ表現
- 文頭に置いて単独で使うと、振り返りの一言としてそのまま成立する
『ビッグバン★セオリー』S11E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
検診に訪れたハワードとバーナデットが、二人目の子どもの性別を確認しようとする場面です。待ち時間のあいだに、娘ハレーの妊娠中の検診を振り返るハワードの一言から、やり取りが始まります。初めての子育てからさほど間を置かずに、再び検診中の時間を過ごしている二人の状況がうかがえる導入です。
Howard: It feels like it wasn’t that long ago we were here doing this for Halley.
(それほど前のことじゃない気がするな。ハレーの時も、ここで同じことをしたのが。)Bernadette: ‘Cause it wasn’t. Which reminds me, before we leave, let’s get you a vasectomy.
(本当に前じゃないからね。それで思い出したけど、帰る前にあなたにパイプカット手術を受けてもらうわよ。)Howard: Oh, that’s sweet, but today is all about you.
(それは優しいな、でも今日は君のための日だろ。)Nurse: So, you two ready to find out the sex of this baby?
(それで、二人ともこの赤ちゃんの性別を知る準備はできてる?)Bernadette: Yeah.
(ええ。)Howard: Absolutely.
(もちろんだ。)The Big Bang Theory Season11 Episode4 (The Explosion Implosion)
シーン解説と心理考察
妊娠中の検診に付き添うハワードの一言には、娘ハレーのときの記憶がまだ新しいという感慨がにじみます。「それほど前のことじゃない気がするな」という振り返りは、二人目の子を迎える節目で時間の流れを実感する言葉として響きます。
バーナデットは「本当に前じゃないからね」と軽く相づちを打ちながら、「帰る前にパイプカット手術を受けてもらうわよ」と茶目っ気のある提案を挟みます。ハワードはそれを真正面から受け止めず、「それは優しいな、でも今日は君のための日だろ」とさりげなく受け流し、場の空気を和ませています。看護師からの問いかけに二人が揃って「ええ」「もちろんだ」と答える様子には、二人目の子どもを迎える準備が整った夫婦の落ち着きが表れています。一度目の子育てを経た余裕が、短い会話の端々に見え隠れする場面です。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
long ago を「ずっと遠くにある過去」という大きな塊だと考えてみましょう。そこに not that(それほど)という物差しを当てることで、「思っていたより近くにある」という距離感の修正が起きるイメージです。
ハワードが検診中に口にした「それほど前のことじゃない気がするな」という一言も、ハレーの妊娠という記憶を、思っていたより近い場所に引き寄せる感覚から出た言葉でした。過去の出来事を、実際の距離より遠くに置いていないか確かめる物差しとして、この表現を覚えておくと役立ちます。記憶の中で勝手に遠ざけていた出来事ほど、口に出してみると近くにあったと気づくものです。
例文で覚える「not that long ago」
日常の振り返りから技術の変化まで、not that long ago が活躍する3つの場面を見ていきましょう。
It feels like it wasn’t that long ago we graduated from high school.
(高校を卒業したのは、そんなに前のことじゃない気がする。)
同窓会などで昔を懐かしむ場面で使えます。it feels like を添えると、実際の年数よりも近く感じている主観的な実感が伝わります。
Not that long ago, this street was lined with small shops.
(そんなに昔ではなく、この通りには小さな店が並んでいた。)
街の変化を語る日常会話の場面です。文頭に置くことで、振り返りの一言としてすっと話が始まります。
A: Have you lived here for a long time?
B: Not really. I moved here not that long ago.
(A:ここに長く住んでいるの?)
(B:そうでもないよ。引っ越してきたのはそんなに前じゃないんだ。)
自己紹介や近況報告のカジュアルな会話です。not really で軽く否定したあとに使うと、会話のリズムが自然になります。
あわせて覚えたい関連表現
recently
(最近)
客観的な「最近」を表す副詞で、not that long ago ほど話し手の主観的な驚きは伴いません。ニュースや報告のような場面でも使いやすい表現で、感情よりも事実を伝えることに重心があります。
not long ago
(少し前に)
that を省いた形で、主観の強調が薄まり、やや硬めでニュートラルな響きになります。not that long ago よりも落ち着いた場面に合う言い方です。
just the other day
(ついこの前)
数日から数週間前という、より具体的に短い期間を指すことが多い表現です。not that long ago より時間の幅が狭く、直近の出来事を語るときに向いています。
Note|recently / not long ago / not that long ago の使い分け
似たような「最近」を表す英語表現は数多くありますが、微妙な距離感の違いを知っておくと、会話の中でより自然に使い分けられるようになります。
recently は最も客観的で、ニュースや報告のような場面でもよく使われる中立的な語です。統計や出来事を淡々と述べる文脈にもなじみやすい語です。「最近、新しい方針が発表されました」のように、話し手の感情を含まない事実の提示に向いています。これに対して not long ago は、recently よりも少しくだけた響きを持ちつつも、主観的な驚きはあまり表に出ません。そして not that long ago は、三者のうちで最も話し手の感覚が前に出る表現です。「思っていたよりも近い過去だった」という、時間感覚のずれそのものを伝える役割を担っています。
このグラデーションを意識すると、ハワードが検診中に発した「それほど前のことじゃない気がするな」という一言の響きも、より輪郭がはっきりしてきます。単に「最近」と言うのではなく、「もっと前だと思っていたのに」という驚きを込めているからこそ、not that long ago が選ばれているのです。三つの表現のどれを選ぶかによって、同じ「最近」でも伝わる温度が変わってきます。報告の場では recently、懐かしむ会話では not that long ago というように、場面ごとに距離感を選び直す感覚を持っておくと、振り返りの一言に迷わなくなります。
まとめ|「そんなに前じゃない」をどう伝える?
not that long ago は、long ago に not that を添えて度合いを弱めることで、「思っていたより近い過去だった」という時間感覚のずれを伝える表現です。
recently よりも口語的で、振り返りの場面にすっと馴染みます。同窓会で昔を懐かしむときも、街の変化を語るときも、この一言があれば自然に会話が始まります。
ハワードとバーナデットが検診の場で交わした短いやり取りのように、何気ない振り返りの一言にそっと添えてみると、記憶の中の距離感を整理する物差しとして案外便利なのかもしれません。時の流れを測るちょっとした一言が、会話にやわらかな温度を添えてくれます。


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