海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
思っていたよりずっと複雑な手続きに巻き込まれて、「これ、労力に見合わないんじゃ……」とため息をついた経験はありませんか。
そんな気持ちにぴったりの「more trouble than it is worth」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン12第14話の前半、市の窓口でバルコニーの苦情手続きに苦戦するハワードとバーナデットのやり取りから、一緒に見ていきましょう。
「more trouble than it is worth」の意味とニュアンス
more trouble than it is worth
意味:割に合わないほど面倒だ、手間の方が大きい
more trouble than it is worthは、何かを得るために費やす労力やトラブルが、その結果得られる利益や価値を上回っている状態を表す口語表現です。troubleは「面倒・手間」、worthは「価値」を意味し、比較の形で「手間の方が価値より大きい」という損得の判断を伝えます。
修理か買い替えか迷うとき、複雑な手続きに直面したとき、あるいは人間関係のもめごとに疲れたときなど、あきらめや不満のニュアンスを伴って使われます。感情を爆発させるのではなく、冷静に損得を天秤にかけて結論を出すような場面によく登場する表現です。手間が積み重なっていく過程を経て、最終的に「もう割に合わない」と判断が固まる、その結論部分を切り取った言い方だとも言えます。
【ここがポイント!】
- 「more trouble than it is worth」の核は、手間が価値を上回るという損得の判断
- あきらめや不満のニュアンスを伴う、冷静な口調で使われる表現
- worthの後ろに動詞を続けず、比較の形のまま完結させるのがコツ
『ビッグバン★セオリー』S12E14のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
隣人のバルコニーについて苦情を申し立てようと市の窓口を訪れたハワードとバーナデットが、担当者のネイサンから提出書類の説明を受ける場面です。単純に思えた苦情の申し立てが、次々と条件を重ねられて複雑化していく様子に注目です。
Nathan: I just need you to fill out a form, and we have them available in Armenian, Chinese, Cambodian, English, Farsi, Korean, Spanish and Vietnamese.
(フォームにご記入いただくだけです。アルメニア語、中国語、カンボジア語、英語、ペルシャ語、韓国語、スペイン語、ベトナム語版をご用意しています。)Howard: Well, English, obviously.
(そりゃ、英語で頼むよ。)Nathan: Well, we’re not allowed to presume. That was a whole other meeting.
(いえ、決めつけることは許されていないので。それはまた別の会議で決まったことなんです。)Bernadette: So we just fill out the form and that’s it?
(じゃあ、このフォームに記入すればそれで終わり?)Nathan: Oh, no. No, you need to fill it out, and then you need to bring it down to the Office of Code Compliance. Now, if your neighbors don’t have a permit, you can file an official complaint, but if they do have a permit, then you have to make the case that the balcony constitutes a nuisance, an encumbrance or an encroachment, and you have to decide which, because they are three totally separate forms.
(いいえ、違います。記入したら、条例遵守局まで持っていっていただく必要があります。もしお隣に許可証がなければ正式に苦情を申し立てられますが、許可証があるなら、そのバルコニーが迷惑行為か、障害物か、越境行為のどれに当たるかを立証しなければなりません。それぞれ全く別のフォームになるので、どれか決めていただく必要があります。)Howard: This is starting to seem like more trouble than it’s worth.
(これはだんだん、割に合わないほど面倒に思えてきたな。)The Big Bang Theory Season12 Episode14 (The Meteorite Manifestation)
シーン解説と心理考察
8言語分の書類を用意していると説明するネイサンに、ハワードは「そりゃ、英語で頼むよ」と即答します。ネイサンが「決めつけることは許されていない」と生真面目に返す様子には、お役所ならではの杓子定規なやり取りが表れています。
バーナデットが「記入すれば終わり?」と尋ねると、ネイサンは条例遵守局への提出や、迷惑行為・障害物・越境行為のどれに該当するか判断する必要があると、長々とした手続きを説明します。聞いているうちにハワードが「割に合わないほど面倒に思えてきたな」とうんざりする流れに、単純な要望が思わぬ複雑な手続きに変わっていく行政あるあるが見どころです。淡々と説明を重ねるネイサンの態度と、次第に諦めムードを漂わせるハワードの対比が、この場面の温度差を生んでいます。手続きが一段階進むごとに新しい条件が積み増されていく様子は、窓口業務ならではのじれったさを感じさせます。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
天秤の片側に「得られる価値(worth)」、もう片側に「面倒・トラブル(trouble)」を乗せたとき、面倒の方が重く傾いてしまう様子をイメージしてみましょう。労力が見合わないと感じる場面が、そのまま天秤の傾きに重なります。
8言語の書類説明から始まり、迷惑行為か障害物か越境行為かを自分で決めなければならないという展開も、この天秤が面倒側へ傾いていく過程そのものでした。手続きが一つ増えるごとに天秤が傾いていく、そんなイメージで覚えておくと、似た状況に出会ったときにすっと言葉が浮かんできます。最初は軽い気持ちで始めたことが、条件を重ねられるうちにどんどん重荷に変わっていく感覚をつかんでおくと、この表現がとっさに口から出るようになります。
例文で覚える「more trouble than it is worth」
割に合わないと感じたときに使われることが多いmore trouble than it is worthを、3つの例文で確認していきましょう。
Fixing the old car turned out to be more trouble than it was worth.
(古い車を修理するのは、結局割に合わないほど面倒だと分かった。)
修理か買い替えかを迷った末に振り返る日常の場面です。turned out toで「結局〜だと分かった」という結論の流れが伝わります。
Negotiating with each vendor separately proved to be more trouble than it was worth.
(取引先ごとに個別に交渉するのは、結局割に合わないほど面倒だと分かった。)
複数の取引先を抱えるビジネスの場面です。separatelyという語が、まとめて対応しなかった非効率さを示しています。担当者を通さず窓口だけを増やしてしまった反省がにじむ言い方でもあります。
A: Should we complain to customer service?
B: Honestly, it’s more trouble than it’s worth.
(A:カスタマーサービスに苦情を言うべきかな?)
(B:正直、割に合わないほど面倒だと思うよ。)
クレーム対応をするかどうか迷う場面での会話です。honestlyという一言が、あきらめの本音を後押ししています。相談しながら結論を出す、日常のちょっとしたやり取りにもよく登場します。
あわせて覚えたい関連表現
not worth the hassle
(面倒に見合わない)
not worth the hassleはより口語的でシンプルな言い方であるのに対し、more trouble than it’s worthは比較の形をとり、面倒さの度合いをやや強調するニュアンスがあります。
more bother than it’s worth
(手間の方が大きい)
troubleをbotherに置き換えたほぼ同義の言い換えで、botherの方がややイギリス英語寄りの響きを持ちます。
a losing battle
(労力に見合わない徒労な戦い)
a losing battleは「勝ち目のない争い」そのものを指すのに対し、more trouble than it’s worthは「割に合わない」という損得の判断に重点があります。
Note|not worth the hassle・more bother than it’s worth・more trouble than it’s worthの使い分け
「割に合わない」という気持ちを表す英語表現は、more trouble than it is worthだけではありません。似た場面で使われる言葉には、それぞれ微妙な手触りの違いがあります。
たとえばnot worth the hassleは、troubleよりもさらに口語的なhassleという単語を使い、「まあ面倒だから、やめとくよ」という軽いトーンで日常会話によく登場します。深く悩んだ末の結論というより、その場の気分でさらりと言い切る印象が強い表現です。一方、more bother than it’s worthはtroubleをbotherに置き換えただけのほぼ同義の言い換えですが、botherという単語自体がイギリス英語で好んで使われる傾向があり、アメリカ英語のmore trouble than it’s worthよりもやや控えめで丁寧な響きを持ちます。これに対して今回のmore trouble than it is worthは、比較の形を保ったまま「手間の方が価値を上回っている」という判断をはっきり述べる、やや構文としてかっちりした表現だと言えます。
ハワードが窓口での長い手続き説明を聞きながら口にした一言も、まさにこの「手間が価値を上回った」と判断する瞬間を捉えたものでした。似た表現を並べて比べてみると、同じ「割に合わない」でも言葉ごとに漂う温度が違うことが見えてきます。
場面のフォーマル度や気分の重さに合わせて、これらの表現を使い分けられると会話の幅が広がります。かっちり伝えたいのか、軽く流したいのかを意識するだけでも、選ぶべき言葉が自然と絞られてきます。
まとめ|「割に合わない」を一言で伝える表現
more trouble than it is worthは、手間や労力が得られる価値を上回っていると感じたときに使う口語表現です。
複雑な手続きに直面したときから、修理や人間関係の摩擦に疲れたときまで、幅広い場面で会話にすっと馴染みます。積み重なった手間を振り返ったときに、ふと口をついて出てくる一言でもあります。
8言語の書類説明から始まる長い手続きに次第にうんざりしていくハワードの様子には、シンプルなはずの頼み事が思わぬ複雑さに変わっていく、行政窓口ならではの空気が漂っていました。


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