海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
うまくいかない日々が続いても、「自分たちなら乗り越えられるはず」と信じていたのに、ふと心が揺らいだ経験はありませんか。
そんなときにぴったりの「rise above something」を、『モダンファミリー』シーズン7第2話の後半、ミッチェルとキャメロンが電話越しにお互いの本音を打ち明け合うシーンから、一緒に見ていきましょう。
「rise above something」の意味とニュアンス
rise above something
意味:(困難・批判・不快なことに)動じずに乗り越える、影響を受けない
riseは「上がる」、aboveは「〜より上に」という意味で、rise aboveは文字どおり「〜の上に昇る」ことを表します。問題と同じ高さで争ったり、巻き込まれたりせずに、一段高い位置から眺める姿勢が、そのまま意味になっています。
使い方は大きく2つに分かれます。1つ目は、つらい時期や苦しい状況を乗り越える使い方です。rise above tough timesのように、困難を表す名詞を続けます。2つ目は、批判や悪口、いやがらせのような不快なことを、まともに相手にせず受け流す使い方です。I’ll just rise above it. のように、すでに話題に出たことをitで受けて使います。
台詞の形はrise above tough timesで、見出しのsomethingの位置にtough timesが入っています。つまり、「つらい時期を乗り越える」という1つ目の用法です。
どちらの使い方でも共通しているのは、問題を力ずくで打ち負かすのではなく、問題の影響から抜け出すという感覚です。努力で壁を壊すというより、壁の上に出て、壁に左右されなくなるイメージに近い表現です。
【ここがポイント!】
- 「上に昇る」という絵が、問題に巻き込まれず一段高い位置に立つ感覚を表す
- 続く名詞は、tough timesなどの困難から、批判や悪口まで幅広く入る
- 打ち負かすのではなく影響を受けない姿勢が核で、すでに話題の事柄はitで受けるのがコツ
『モダンファミリー』S07E02のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ミッチェルとキャメロンが電話で話している場面です。ミッチェルが自分はひどいコーチだと認めて謝ると、キャメロンも自分のほうこそ謝るべきだと返し、平気なふりをしていたことを打ち明けます。それを受けて、ミッチェルが「僕もだよ」と応じ、二人のこれまでを振り返る一言が出てきます。
Mitchell: I’m a terrible coach. I mean, I’m sorry I-I pushed you away.
(僕はひどいコーチだよ。それに、君を遠ざけてしまってごめん。)Cameron: No, no, no. You hush up. I’m the one who’s sorry. You know what? I’ve been trying to pretend like the pressure hasn’t gotten to me, but it has.
(いやいやいや。もう言わなくていいよ。謝るのは僕のほうだ。実はね、プレッシャーなんて平気なふりをしてたけど、本当は堪えてたんだ。)Mitchell: Oh, my god. Me too. I — I always thought we were that couple that could rise above tough times, you know?
(ああ、なんてことだ。僕もだよ。僕たちは、つらい時期だって乗り越えられる夫婦だと、ずっと思ってたんだ。)Modern Family Season7 Episode2 (The Day Alex Left for College)
シーン解説と心理考察
ミッチェルは、「ひどいコーチだ」という自己評価と、キャメロンを遠ざけてしまったことへの謝罪を、一続きで口にします。謝る側と謝られる側がここで固定されずに、キャメロンが「謝るのは僕のほうだ」と返すことで、謝罪が互いの間を行き来する形になっています。
キャメロンの告白は、「プレッシャーなんて平気なふりをしていた」という内容です。「でも本当は堪えていた」と続く言い方からは、強がりの下にあった気持ちを言葉にする様子が伝わってきます。
これに対するミッチェルの「僕もだよ」は、同じ重さを自分も抱えていたという共感の返事です。そのうえで出てくるのが、「つらい時期だって乗り越えられる夫婦だと思っていた」という言葉です。rise above tough timesは、問題に飲み込まれずに二人で乗り越えていく夫婦像を言い表していて、過去形のI always thought…という形が、これまでの自己像を振り返る響きを帯びています。
お互いの弱さを認める会話の中で、この表現が自分たちの姿を言い表す言葉として置かれている点が、見どころです。英語の学習面では、rise aboveのあとにtough timesという名詞が続く形と、過去形のthoughtと組み合わさる形を、一度に確認できる台詞でもあります。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
波の高い海の上で、ぐっと浮かび上がって、波のてっぺんより高い位置から全体を眺める様子を思い浮かべてみましょう。波に揉まれるのではなく、波の上に出ると、同じ海でも見える景色が変わります。
ミッチェルが口にした「つらい時期を乗り越えられる夫婦」という言葉も、困難の波の下でもがくのではなく、その上に浮かび上がる姿として描けます。
つらいことがなくなるわけではなく、つらいことに左右されない位置まで上がる。そんな絵と一緒にrise aboveを覚えておくと、揺れの中でも姿勢を保つ感覚まで一緒に思い出せます。さらに、批判を受け流す場面にも、困難を越える場面にも、同じ感覚で使えます。
例文で覚える「rise above something」
批判を受け流す形、困難を越える形、会話の中での形と、3つの場面で確かめていきましょう。
She decided to rise above the rumors and focus on her work.
(彼女はうわさを気にせず、仕事に集中することにした。)
職場での噂話に動じない姿勢を表す場面です。rise aboveの後ろに、影響を受けないと決めた対象を続けています。
We’ve risen above many tough times together.
(私たちは一緒に、多くのつらい時期を乗り越えてきた。)
パートナーや仲間との歩みを振り返る場面です。現在完了の形にすると、これまでの積み重ねを述べる言い方になります。
A: He keeps insulting you.
B: I’ll just rise above it.
(A:彼、ずっとあなたを侮辱してくるね。)
(B:まともに相手にしないでおくよ。)
嫌がらせを受け流す会話です。直前の話題をitで受けて、動じない構えを一言で示せます。
あわせて覚えたい関連表現
get over something
(つらいことから立ち直る)
get over somethingは、気持ちの立ち直りに重点があります。rise aboveは、問題の影響を受けない姿勢や、品位を保つ姿勢に重点があります。
overcome something
(克服する)
overcome somethingは、障害を打ち負かす努力を強調します。rise aboveは、争わずに上に立つニュアンスがある点が違います。
be above something
(下品な行為などをするはずがない)
be above somethingは、「そんなことをする人ではない」と人柄を述べる形です。rise aboveは、状況に対して取る行動や姿勢を表します。
Note|「乗り越える」と訳すだけでは足りない、rise above が表す「一段上に立つ」感覚
rise aboveは「乗り越える」と訳せる表現ですが、この訳だけでは、元の感覚が少し抜け落ちます。
「乗り越える」という日本語は、壁や山を越える動作をイメージさせ、努力して障害を越えた結果を表しやすい言葉です。overcomeはこの感覚に近く、障害を打ち負かす努力に重点があります。一方のrise aboveは、障害を壊したり越えたりするというより、障害より上の位置に出て、影響を受けなくなる感覚を表します。
たとえば、She decided to rise above the rumors. は、うわさに反論して打ち負かしたのではなく、うわさと同じ土俵に立たないことを選んだ、という意味になります。ここで「うわさを乗り越えた」と訳すと、努力して克服した印象が強くなってしまいます。「うわさに動じなかった」「うわさを気にしなかった」と訳すと、元の感覚に近づきます。
ミッチェルの台詞に出てくるrise above tough timesは、つらい時期という名詞を続けた形です。ここでは「乗り越える」という訳が自然に収まりますが、困難に飲み込まれない夫婦という感覚まで含めて読むと、台詞の響きがより立体的になります。
日本語の訳語に引っ張られず、「一段上に立つ」絵を持っておく。それがこの表現を使いこなす近道です。
まとめ|つらい時期の乗り越え方
rise above somethingは、困難や批判の影響を受けず、一段上の位置に立つ感覚を表す表現です。
つらい時期を越える場面でも、不快な言動を受け流す場面でも、続く名詞を入れ替えるだけで使えます。努力で打ち負かすというより、巻き込まれない位置へ出るイメージで、overcomeやget overとは少し違う立ち位置にあります。
ミッチェルの一言には、お互いの弱さを認め合う会話の中で、自分たちが目指してきた姿を静かに言い表す一言でした。


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