海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回は『ビッグバン★セオリー』シーズン9 第15話から、遠回しに渡す・遠回しに頼むときの英語を取り上げます。バレンタインデーのレストランで、予約したはずのレナードとペニーが1時間待ちを告げられる場面が舞台です。
言いにくいことを直接言わずに進める表現が、短いやり取りの中に次々と登場します。ふたりの駆け引きを追いながら、ひとつずつ見ていきましょう。
「bad news」悪い知らせを先に予告する
席が空くのを待つふたり。給仕長とのやり取りを終えたレナードが、ペニーのところへ戻ってきます。
Leonard: Excuse me. Uh, bad news. The maître d’ said it’s gonna be at least an hour.
(ごめん。その、悪い知らせなんだ。給仕長が言うには、少なくとも1時間はかかるって。)Penny: An hour? What? That’s crazy. We have a reservation.
(1時間?何それ、どうかしてるわ。予約してあるのよ。)Leonard: I know.
(だよね。)Penny: So what did you say?
(それで、何て言ったの?)Leonard: Thanks, sorry to bother you.
(ありがとう、お手数をおかけしますって。)TBBT Season9 Episode15
bad news と先に言ってから中身を伝えるのは、悪い知らせの定番の切り出し方です。聞き手に心の準備をさせる、小さな気づかいの型と言えます。
We have a reservation. は「予約してあるんです」と事実を示して主張する一文です。要求を並べる前に、こうした根拠を短く置く運びは、店とのやり取りでそのまま役立ちます。
レナードが実際に言えたのは sorry to bother you(お手数をおかけします)という丁寧な定型だけでした。強気に出たつもりの本人と、低姿勢な台詞との落差が笑いどころになっています。
「slip him some money」提案の輪郭をぼかす口語
1時間待ちに納得のいかないペニーが、レナードにある提案を持ちかけます。
Penny: All right, well, can’t you, like, slip him some money or something?
(わかった、じゃあさ、ほら、いくらか握らせるとかできないの?)Leonard: Really? I’ve never done that before. Does it work?
(本当に?そんなこと、したことないよ。効くのかな?)Penny: Do people like money? Is that what you’re asking?
(人はお金が好きかって?それを聞いてるの?)TBBT Season9 Episode15
slip someone some money は「人にそっとお金を握らせる」。slipは「滑る」でおなじみの動詞ですが、ここでは目立たないようにすっと渡す動きを表しています。
提案全体を包んでいるのが can’t you, like, ~ or something? の形です。つなぎのlikeと「〜とかさ」にあたるor somethingが重なり、言い出しにくい提案の輪郭をぼかしています。
問い返されたペニーの Do people like money? は、答えの自明な問いをぶつけ返す反語です。「効くに決まっている」という含みを、直接言わずに伝えるのが面白いところです。
こうした駆け引きが実際に通用するかは店や状況次第で、ここではあくまで笑いの題材として描かれています。
「you may have dropped this?」渡す行為をすり替える
助言を受けたレナードは、もう一度給仕長のもとへ確認に向かいます。待ち時間の答えは変わらず、いよいよあの提案を実行に移す流れです。
Leonard: Okay. Thanks. Hey. I think you may have dropped this?
(わかりました。どうも。あの、これ、落とされませんでしたか?)TBBT Season9 Episode15
I think you may have dropped this? を直訳すれば「これを落とされたのではないかと思うのですが」。may have droppedという過去への推量を使い、お金を渡す行為を「拾ったものを返す」体裁にすり替えています。
ところが給仕長は周囲に向かって、20ドル札を落とした人はいないかと呼びかけてしまい、名乗り出た別の客にお札は渡ってしまいます。席で待つペニーへのレナードの報告は、I took care of it.(こっちで処理しておいたよ)でした。
take care of itは「対処する、処理する」という定番表現です。うまくいかなかった顛末の中身をいっさい言わずに済ませられるところに、この一言の便利さが凝縮されています。
まとめ|ぼかす言い方にも型がある
今回は、bad newsの予告から、slip him some money、you may have dropped this?、I took care of it.まで、直接言いにくいことをぼかして進める英語を見てきました。
はっきり言うだけが英語ではないことが、このレストランの一幕からよく分かります。ぼかし方の型を知っておくと、会話の聞こえ方も変わってきます。
このエピソードの英語表現は、フレーズ記事やエピソードまとめでも扱っています。


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