海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
うまくいっていたはずの計画や調子が、ある時点を境にずるずると下り坂になっていく——そんな「悪化していく」流れを言葉にしたいと思ったことはありませんか。
そんなときに使える「go south」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン6第6話の前半、大学に通い始めたペニーをエイミーがからかう女子会のシーンから、一緒に見ていきましょう。
「go south」の意味とニュアンス
go south
意味:悪化する/下降する/ダメになる
直訳は「南へ行く」ですが、実際の方角とは関係なく、「物事が悪い方向へ転がっていく」という意味で使われます。地図では北が上、南が下に描かれることが多く、その「南=下」の感覚から「下降する・落ちていく」を表すようになったとされます。
対象はとても幅広く、株価や売上などの数字、計画やプロジェクトの進み具合、人間関係、体調、さらにはキャリアや交渉まで、「順調だったものが崩れていく」場面ならたいてい使えます。go down に近いものの、go south のほうがやや口語的で、「思っていた方向と逆に転がり落ちる」というニュアンスがにじみます。
突然ダメになる場合にも、じわじわ悪化する場合にも使えますが、共通しているのは「いい状態から悪い状態へ向かう」という下向きの流れです。
【ここがポイント!】
- 地図の「南=下」から生まれた、下向きの流れを表す表現
- 数字・計画・関係・体調まで、幅広く「悪化」に使えるのが便利
- go down よりも口語的で、「逆方向に転がる」感覚がにじむ一言
『ビッグバン★セオリー』S06E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ペニーが地域の大学で歴史の授業を取っていることが、女子会で発覚します。照れて言いにくそうにするペニーに、エイミーが歴史の授業ネタを絡めながら、容赦のないひと言を放ちます。
Penny: It’s just one history class. Look, I didn’t finish college, so I thought I would give it a try.
(ただの歴史の授業一つよ。ほら、大学を出てないから、ちょっと試してみようと思って。)Amy: Not to mention, your acting career is going south like Sherman. Read about it in your book.
(それに、あなたの女優キャリアもシャーマンばりに南下中だしね。教科書で読めるわよ。)The Big Bang Theory Season6 Episode6(The Extract Obliteration)
シーン解説と心理考察
エイミーのひと言は、二つの意味を同時に走らせた言葉遊びになっています。一つは go south の文字どおりの意味、つまりペニーの俳優業が「落ち目になっている」という当てこすり。もう一つは、南北戦争で南部へ進軍したシャーマン将軍への言及で、ペニーがいま学んでいる歴史の授業の題材にひっかけています。
「教科書で読めるわよ」という追い打ちが、その二重構造をはっきりと表しています。エイミーらしい、知識をそのまま皮肉の武器にする話法がにじむ場面です。悪気というより、知っていることをつい披露したくなる彼女の性格が、この一言に重なっています。
からかわれたペニーの居心地の悪さと、それを淡々と言ってのけるエイミーの温度差が、会話のリズムを生んでいます。go south という何気ない口語表現が、歴史ネタと組み合わさることで、このグループならではの知的なおふざけへと変わっている点が見どころと言えます。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
地図を思い浮かべてみてください。上が北、下が南。何かが「南へ向かう(go south)」というのは、その地図の上で下へ下へと滑り落ちていくイメージです。
エイミーが「キャリアが go south している」と言うとき、頭の中ではペニーの女優業を示す線が、グラフの右下へと下がっていく映像が浮かんでいます。順調だったものが下向きの矢印に変わる——その「下り坂」の感覚を、地図やグラフの「下」とセットで覚えておくと、いざ使うときにイメージがすっと出てきます。
例文で覚える「go south」
数字から人間関係まで、「悪化」を幅広くカバーする表現です。3つの場面で使われ方を見ていきましょう。
Sales were strong at first, but things went south after the holidays.
(最初は売上も好調だったが、休暇シーズンを過ぎてから落ち込んでいった。)
ビジネスの報告でよく使われる言い方です。好調だったものが「ある時点を境に下降した」という流れを端的に伝えています。
Their relationship started to go south once they moved in together.
(同棲を始めた途端、二人の関係はうまくいかなくなっていった。)
人間関係についても自然に使えます。順調だった関係がじわじわ悪化していく様子を、下向きの流れとして表しています。
A: How was the camping trip?
B: Honestly, it went south pretty fast. It rained the whole time and the tent leaked.
(A:キャンプ旅行はどうだった?)
(B:正直、わりとすぐにダメになったよ。ずっと雨で、テントは雨漏りするしさ。)
友人同士のくだけた会話です。計画や状況が予想外に悪い方へ転がったことを、軽い愚痴のトーンで伝えています。
あわせて覚えたい関連表現
go downhill
(下り坂になる/悪化する)
坂を下っていくイメージで、go south とほぼ同じ「悪化する」を表します。go downhill は「だんだん悪くなる」という段階的な下降のニュアンスが特に強い表現です。
fall apart
(崩れ落ちる/破綻する)
バラバラに崩れるイメージで、計画や関係が「壊れてしまう」ことを指します。go south が「下向きに転がる」流れを描くのに対し、こちらは「崩壊した結果」に焦点があります。
take a turn for the worse
(悪い方向へ転じる)
状況が「悪い方へと向きを変える」ことを表す、ややフォーマルな言い回しです。go south と意味は近いですが、こちらは「転換点」を意識した、落ち着いたトーンの表現です。
Note|なぜ「南へ行く」が「悪化する」なのか
go south は文字どおりには「南へ行く」ですが、実際の方角とは無関係に「悪化する」を意味します。この方角と意味のつながりは、どこから生まれたのでしょうか。
有力とされる説明の一つが、地図の向きに関わるものです。現代の地図はほぼ例外なく北を上、南を下に描きます。この「上=北、下=南」という視覚的な約束ごとが広く共有された結果、「南へ向かう」が「下へ向かう=下降する・悪化する」という比喩につながったと考えられています。実際、英語には方角を価値に重ねる感覚があり、things are looking up(状況が上向きだ)のように「上=良い」「下=悪い」の対比が根づいています。go south はその「下」側を、方角の言葉で言い換えたものと見ることができます。なお、別の説として、かつて困難に直面した人が文字どおり南方へ逃げた歴史的な背景を指摘する見方もありますが、こちらは確証が薄く、地図の上下に基づく説明のほうが分かりやすいとされています。いずれにせよ、20世紀のアメリカ英語で「悪化する」の意味が定着していった比較的新しい口語表現です。
この「下向きの方角」という感覚を押さえておくと、go south が単に「悪くなる」ではなく、「いい状態から下へ滑り落ちる」という流れを含んでいることが見えてきます。エイミーがペニーのキャリアに使ったのも、まさに「上から下へ」という下降の映像があったからこそです。
方角の言葉が価値を運ぶ——英語の面白さが詰まった一例です。
まとめ|エイミーの皮肉に見る「下り坂」の一言
go south は、地図の「南=下」という感覚から生まれたとされる、「悪化する・下降する」を表す表現です。数字でも、計画でも、人間関係でも、「順調だったものが崩れていく」流れを、下向きの矢印のように描き出します。
このフレーズを覚えておくと、「だんだんうまくいかなくなってきた」という微妙な下り坂の状況を、go down よりも口語的で生き生きとした言葉で表せるようになります。日常の愚痴からビジネスの報告まで、出番は意外と多いはずです。
歴史ネタを絡めたエイミーの二重の皮肉とあわせて、この「南へ下る」イメージを、あなたの英語の引き出しに加えてみてください。


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