海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
組織で働いていると、「なぜこの仕事が私のところに?」と思うような案件が回ってくることはありませんか?
今回は、FBI捜査官ブースと上司の会話から、そんな組織の理不尽さを「音」と「リズム」で笑い飛ばす、キレのある英語表現をご紹介します。
実際にそのシーンを見てみよう!
少年が発見した遺体を巡り、マスコミが騒ぎ立てる現場での一幕。
上司のカレン副長官は、なぜこの「貧乏くじ」のような案件がFBIに回ってきたのか、その不毛な経緯をブースに説明します。
Cullen: …some homicide detective kicks it up to his captain who kicks it up to the chief, who kicks it to the F.B.I.-
(…殺人課の刑事が警部に丸投げし、警部が本部長に上げ、本部長がFBIに投げる。)Booth: And you – bang – kick it down to me. Which I thank you for, sir – the opportunity.
(そしてあなたが、バン!と俺に蹴り落としたわけですね。感謝しますよ、機会をくださって。)
BONES Season1 Episode12 (The Superhero in the Alley)
カレンとブースの間には、現場叩き上げ同士の「阿吽の呼吸」があります。
カレンが執拗に “kick”(蹴る)という乱暴な言葉を使うのは、事務的に仕事を右から左へ流すだけの上層部への苛立ちがあるから。
それを受けたブースが “bang”(バン!)と擬音を挟んだのは、「あなたのパス、確かに痛みを伴って受け取りましたよ」という皮肉と、「でも現場は俺がやりますよ」という、ある種の男気と諦めが混じった共感の表れですね。
フレーズの意味とニュアンス
kick [it] down (to someone)
意味:下に回す、下ろす、丸投げする
直訳すれば「蹴り下ろす」。
ビジネス英語では「案件を部下に回す」という意味ですが、ここでは単なる業務命令(Assign)ではありません。
カレンのセリフにある “kick it up”(判断を上に投げる)と対になっています。
【ここがポイント!】
丁寧な “hand over”(手渡す)とは対極にある表現です。
「ほらよ、お前の番だ!」という荒っぽいパスのニュアンスが強烈に含まれています。
重力に従って上から下へ、ドスンと落ちてくる「強制力」と「厄介払い」の空気が漂うフレーズです。
実際に使ってみよう!
日常やオフィスで、理不尽なパスが回ってきた時に、ちょっと皮肉を込めて使ってみましょう。
The manager didn’t want to handle the complaint, so he kicked it down to me.
(部長はそのクレーム処理をしたくなかったので、私に丸投げしてきた。)
解説:嫌な仕事を押し付けられた時の定番表現です。「自分の手は汚したくない」という上司のずるさが透けて見える状況ですね。
I did all the cooking, but my husband kicked the cleaning down to me too.
(料理は全部私がやったのに、夫は片付けまで私に押し付けてきた。)
解説:家庭内での「名もなき家事」の押し付け合いにも使えます。”Leave”(残す)と言うより、「意図的に押し付けた」という被害者意識が伝わります。
Don’t just kick the decision down to your team; take responsibility explicitly.
(判断をただチームに丸投げするな。はっきりと責任を取れ。)
解説:こちらはリーダーへの戒めとして。判断を避けて部下に決めさせる姿勢を批判する、鋭い一言です。
『BONES』流・覚え方のコツ
ブースの「BANG(バン)!」という着弾音で覚えましょう。
組織の階段をポンポンと蹴り上げられた(Kick up)案件が、頂点に達した瞬間に、自分のデスクに向かってドスンと蹴り落とされる(Kick down)。
この「痛みを伴うキャッチ」の衝撃こそが、このフレーズのイメージそのものです。
似た表現・関連表現
似た意味を持つ表現との違いを押さえておきましょう。
dump on
(〜に押し付ける、ゴミを捨てる)
解説:「ダンプカーがゴミを捨てる」が原義。Kick よりもさらに「相手をゴミ箱扱いしている」失礼なニュアンスです。
pass the buck
(責任転嫁をする)
解説:ポーカー用語由来。トランプのカード(Buck)を隣の人に回すように、「自分は責任を取りたくない」という逃げの姿勢を表します。
delegate
(権限を委譲する)
解説:こちらはポジティブなビジネス用語。「君を信頼して任せるんだよ」という時に使います。Kick down とは真逆の、理想的な上司の態度ですね。
深掘り知識:なぜ「Hand(手)」ではなく「Kick(足)」なのか?
カレンとブースは、なぜ “pass” や “hand” ではなく、執拗に “kick” を連呼したのでしょうか?
英語の語感として、「手(Hand)」には「ケア、接触、丁寧さ」が含まれます(例:Handle, Hand over)。
一方、「足(Kick)」は「対象物との距離」と「無礼さ」を象徴します。
つまり、この事件は「手で触りたくないほど汚い/危険な案件」なのです。
誰もが「汚いもの」を扱うように足で蹴り合っている中、最終的にそれを手で拾い上げなければならないブースの損な役回り。
“Kick” という一語には、そんな組織の残酷な力学が凝縮されています。
まとめ|ラストパスを笑って受け止める
組織の下の方にいると、いろんなものが kicked down されてきます。
そんな時、ブースのように「Thank you for the opportunity(機会をあざっす)」と皮肉交じりに笑い飛ばせるなら、あなたの勝ちです。
理不尽なパスも、一旦受け止めてしまえば、あとはあなたの実力を見せるチャンスに変わりますから。
次回は、ホッジンズの「見た目による決めつけ」から、日常会話で使える評価フレーズをご紹介します。


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