海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
誰かが自分のために、普通ならしないほどの手間をかけてくれたと知ったとき、「わざわざそこまでしてくれたの」と胸が熱くなった経験はありませんか。
そんなときにぴったりの「go to all that trouble」を、『フレンズ』シーズン4第6話の終盤、キャシーがチャンドラーの隠れた気づかいをそっと見抜く、静かなシーンから、一緒に見ていきましょう。
「go to all that trouble」の意味とニュアンス
go to all that trouble
意味:わざわざそこまで手間をかける、そんなに苦労してまでやる
ある目的のために、普通ならしないほどの手間や労力をかけることを表す表現です。日本語の「わざわざそこまでする」「そんなに骨を折る」にあたります。
鍵になるのは trouble の意味です。ここでの trouble は「問題・トラブル」ではなく「手間・面倒」を指します。go to ~ trouble で「わざわざ手間のほうへ足を運ぶ」、つまり自分から面倒を引き受けにいくイメージです。そこに all that が加わることで、「そんなにも大変な手間を(全部)」と、かけた労力の大きさが強調されます。
この表現は、場面によって表情を変えます。相手の労力に恐縮して「そこまでしなくてよかったのに」と伝えるとき、感心して「よくそこまでやったね」と評価するとき、あるいは「なぜそんな手間を?」と疑問を投げるとき。いずれも根っこにあるのは「並々ならぬ労力」という感覚です。誰が、誰のために、その手間をかけたのか。そこに込められた気持ちまで見えてくる、含みのある一言です。
【ここがポイント!】
- 核は「普通ならしないほどの手間を、わざわざ引き受ける」という労力の大きさ
- trouble は「問題」ではなく「手間・面倒」、all that がその大きさを強調する
- 恐縮・感心・疑問と、場面によって表情を変える含みのある表現
『フレンズ』S04E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
このシーンには、少し込み入った背景があります。チャンドラーは、親友ジョーイの恋人であるキャシーにひそかに惹かれています。その想いを隠したまま、彼は彼女の大好きな稀少本を苦労して探し出し、手柄はジョーイのものとして譲りました。ところがキャシーは、その本を用意したのが本当は誰なのかに気づいています。二人きりの場面で、彼女が静かに切り出す一言にこのフレーズが登場します。
Kathy: The Velveteen Rabbit. I kinda have the feeling you had something to do with it.
(『ビロードのうさぎ』のことよ。あれ、あなたが関わってる気がするの。)Chandler: What do you mean?
(どういう意味?)Kathy: Well, when Joey gave it to me, he said, “This is ‘cause I know ya like Rabbits, and I know ya like cheese.” I love it. And I know how hard it must have been for you to find.
(だって、ジョーイがくれるとき「お前がうさぎ好きで、チーズも好きだから」って言ったのよ。すごく気に入ってる。それに、探すのがどんなに大変だったか、私にはわかるの。)Chandler: Uhl… ell. By the way, in case you missed that, that sound was, “Uhl, ell.”
(う、うぐ……。ちなみに今のは「う、うぐ」って音だからね。)Kathy: You must really like… Joey… to go to all that trouble for him.
(あなた、よっぽど……ジョーイのことが……好きなのね。そこまで手間をかけてあげるなんて。)Chandler: Oh, yeah, he’s my… he’s my best friend.
(あ、ああ……あいつは……親友だからね。)Friends Season4 Episode6(The One with the Dirty Girl)
シーン解説と心理考察
このセリフの読みどころは、言葉の表と裏が食い違っているところにあります。キャシーの言葉を額面どおり受け取れば、「ジョーイのために、そこまで手間をかけるなんて、よほど彼が好きなのね」という、友情への感心です。ところが彼女は、Joey という名前の前後で不自然に間を置いて話しています。この間が、言外の意味を漂わせています。
キャシーは、その本を探し出したのがチャンドラー自身だと、すでに見抜いています。つまりこの一言は、表向きは「親友思いだね」と称えながら、裏では「あなたがそこまでするのは、本当は誰のためなの」と問いかけている、二重の響きを持っています。go to all that trouble という表現が「並々ならぬ労力」を指すからこそ、その労力の宛先をめぐる含みが際立ちます。チャンドラーが「親友だからね」とだけ返す、その言葉少なな受け答えにも、隠しきれない気まずさが重なっています。言葉のすき間で心が通じてしまう、静かな緊張のにじむ場面です。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
go to all that trouble を覚えるときは、あえて遠回りの、面倒な道のほうへ足を踏み出す姿をイメージしてみてください。楽な近道もあるのに、わざわざ手間のかかるルートを選んで歩いていく。その「面倒のほうへ向かう(go to trouble)」動きに、all that で「そんなにも大変な道のりを全部」という重みが乗ります。
そしてキャシーのシーンを思い出せば、この表現が運ぶ「気持ち」まで一緒に覚えられます。チャンドラーが、報われるあてもないのに、手間のかかる道を選んで稀少本を探し当てた。その労力の大きさを、キャシーは静かに見抜いていました。かけた手間の分だけ、そこに込められた想いも大きい。労力と気持ちが比例するあの感覚ごと、シーンの静かな緊張と重ねて記憶してみてください。
例文で覚える「go to all that trouble」
go to all that trouble は、誰かが払った並々ならぬ労力に触れる場面で活躍します。恐縮、感謝、感心と、込める気持ちに応じて幅広く使えます。
You didn’t have to go to all that trouble just for me.
(私のためだけに、そんなに手間をかけてくれなくてよかったのに。)
相手の心遣いに恐縮して礼を言う場面です。「そこまでしなくても」という気づかいを込めた、もっとも定番の使い方になります。
Why go to all that trouble when you can just order it online?
(ネットで注文すればいいのに、なんでそんなに手間をかけるの?)
相手の遠回りなやり方に疑問を投げる場面です。「そこまでする必要ある?」という、少し呆れた含みで使う言い方です。
A: Thanks for going to all that trouble to pick me up at the airport.
B: No trouble at all — I was heading that way anyway.
(A:わざわざ空港まで迎えに来てくれて、そんな手間をかけてくれてありがとう。)
(B:全然平気だよ、どうせそっちに行くところだったし。)
送迎という手間のかかる親切に礼を言う場面です。返しの No trouble at all(お安いご用)と対になって、trouble が「手間」を指すことがよく見える会話です。
あわせて覚えたい関連表現
go out of one’s way
(わざわざ骨を折る、普段しないことまでする)
本来の道筋を外れてまで何かをする、という「余計なひと手間」を表します。go to all that trouble が労力の総量に焦点を当てるのに対し、こちらは「わざわざ寄り道してまで」という方向のニュアンスが強い違いがあります。
take the trouble to do
(わざわざ〜する手間をかける)
「あえてその手間を取る」という、主体的な選択の色が濃い表現です。go to all that trouble が結果としてかかった労力の大きさを描くのに対し、こちらは「面倒を承知で選んだ」姿勢に光を当てます。
bend over backwards
(精一杯尽くす、無理をしてまで頑張る)
体を後ろに反らすほど無理をする、という誇張から生まれた表現で、献身の度合いが最も強く出ます。go to all that trouble が労力を中立的に表すのに対し、こちらは「そこまでするか」という熱量まで含みます。
Note|trouble が「手間・面倒」を指すわけ
go to all that trouble の trouble は「問題」ではなく「手間・面倒」を指す、と本文で触れました。この二つの意味は、どうつながっているのでしょうか。
trouble の語源をたどると、ラテン語の turbulare(かき乱す)や turba(混乱・騒ぎ)に行き着きます。もともとは「かき乱された状態」「平穏を乱すもの」を表す言葉でした。ここから、心をかき乱すもの、つまり「悩み・問題」の意味が育ちます。一方で、平穏を乱すということは「余計な負担がかかる」ことでもあります。この負担の側面から、「(人が引き受ける)手間・面倒」という意味が枝分かれしていきました。英語には、この「手間」としての trouble を使った表現が数多く残っています。take the trouble to do(わざわざ手間をかける)、trouble oneself(手間をかける・気をもむ)、そして親切に礼を言われたときの No trouble at all(なんの手間でもない=お安いご用)。どれも「問題」ではなく「引き受ける負担」としての trouble です。go to all that trouble も、この系統に連なる表現です。自分から進んで「かき乱される側」に回る、つまり面倒を引き受けにいく、という発想が根っこにあります。
劇中でチャンドラーがかけた「手間」も、まさにこの trouble でした。労力の大きさを一語で受け止められると、キャシーのセリフの重みもいっそう伝わってきます。
一つの「かき乱れ」から、問題と手間の両方が生まれたのですね。
まとめ|キャシーの気づきから学ぶ「わざわざ」の一言
go to all that trouble は、普通ならしないほどの手間を、わざわざ引き受けることを表す表現です。かけた労力の大きさと、そこに込められた気持ちまで映し出す、含みのある一言と言えます。
この表現が使えるようになると、誰かが自分のために骨を折ってくれたことへの感謝や、相手の並々ならぬ労力への感心を、的確に伝えられるようになります。キャシーがチャンドラーの隠れた手間をそっと見抜いたように、言葉の裏にある気持ちまで読み取る手がかりにもなるはずです。
誰かの「わざわざ」に気づいた場面を思い浮かべながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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