海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
やってしまった気まずいことがバレそうになって、「もうこの場から消えたい」と思わず逃げ出したくなった経験はありませんか。
そんな「逃げるしかない」という気持ちにぴったりの「go on the lam」を、『フレンズ』シーズン5第15話の冒頭、隠していた交際を親友に見つかったチャンドラーが慌てて逃げ支度をするシーンから、一緒に見ていきましょう。
「go on the lam」の意味とニュアンス
go on the lam
意味:(追われる身になって)高飛びする、逃亡する
go on the lam は「追っ手から逃れて逃亡する」という意味の口語表現です。中心にあるのは lam という単語で、これ単体で「逃走・とんずら」を指します。もともとは犯罪者が警察の追跡をかわして逃げ回るイメージが強く、映画やドラマの犯罪シーンでよく耳にする響きを持っています。
be on the lam の形なら「逃亡中である(状態)」、go on the lam の形なら「逃亡生活に入る(動作)」と、be と go で状態と動作を使い分けられます。日常会話では本来の物騒な意味をあえて大げさに当てて、「もう逃げるしかない」と冗談めかして使われることも多い表現です。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「追われて逃げ回る」という緊迫したイメージ
- be on the lam なら「逃亡中の状態」、go on the lam なら「逃亡に入る動作」
- 本来は物騒な言葉を、日常のピンチにおどけて当てるのが定番の使い方
『フレンズ』S05E15のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
隠していたモニカとの交際を、兄であるロスに窓越しに目撃されてしまったチャンドラー。怒鳴り込んでくるロスを前に、チャンドラーはまさかの「逃亡」を選択します。恐怖と気まずさをジョークで包む、彼らしい一言が飛び出す場面です。
Chandler: Well, listen, we had a good run. You know, what was it — four, five months? I mean, that’s more than most people have in a lifetime. So, good-bye, take care, bye-bye, dear.
(まあ聞けよ、俺たちいい時を過ごしたよな。何ヶ月だっけ、4、5ヶ月? たいていの人が一生かけても持てない時間だよ。じゃあな、元気で、バイバイ)Monica: What are you doing?
(何してるの?)Chandler: Oh, I’m going on the lam.
(ああ、高飛びするんだよ)Monica: Come on, Chandler, come on. I can handle Ross.
(やめてよチャンドラー。ロスは私がなんとかできるから)Friends Season5 Episode15(The One with the Girl Who Hits Joey)
シーン解説と心理考察
追い詰められると正面から向き合うより、ジョークや逃避に走るのがチャンドラーという人物です。ここでも彼は、恋人との別れを惜しむふりをしながら、荷物をまとめて本当に逃げようとします。深刻な状況をあえて軽口で受け流す防衛反応が、この一言ににじむ場面です。
「we had a good run(いい時を過ごした)」と関係を過去形で振り返る大げさなセリフから、go on the lam という物騒な言葉への流れは、彼の動揺の裏返しとして響きます。一方、冷静に「私がなんとかする」と受け止めるモニカとの温度差が、笑いを生む対比として表れています。恐怖を直視せずユーモアで包むチャンドラーの生き方が、逃亡ジョークという形でくっきりと表れています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
lam という短い単語は、音の響きが「lamb(子羊)」に近いところがあります。追われた子羊が野原を必死に駆けて逃げていく姿を思い浮かべてみてください。スーツケースに荷物を詰め込んで、今にも玄関から飛び出そうとするチャンドラーの姿を、その「逃げる子羊」の映像に重ねると記憶に残りやすくなります。
on the lam の on は「〜の状態が続いている」ことを表す on です。逃げ続けている最中というイメージを、走り続ける足の動きと一緒に体で覚えると、いざというときに口から出やすくなります。
例文で覚える「go on the lam」
犯罪の逃亡から日常の冗談まで、幅広く使えるのが go on the lam です。3つの場面で感覚をつかんでみましょう。
After the robbery, the two men went on the lam for months.
(強盗のあと、その2人は何ヶ月も逃亡生活を送った)
ニュースや犯罪ドラマの話題で使う、本来の意味の例です。「追われて逃げ続けた」という状態が go on the lam で表されています。
The suspect has been on the lam since Tuesday.
(容疑者は火曜日から逃走を続けている)
報道英語らしい硬めの表現です。go ではなく be on the lam の形で「逃亡中の状態」を示しています。
A: Did you finish that report for the boss?
B: Nope. If he asks, tell him I’ve gone on the lam.
(A:上司に頼まれた報告書、終わった?)
(B:いや。もし聞かれたら、俺は高飛びしたって言っといて)
職場での軽口として使える例です。本来は物騒な表現を、締め切りから逃げたい気持ちに大げさに当てるユーモアの使い方です。
あわせて覚えたい関連表現
on the run
(逃走中で、追われて)
go on the lam とほぼ同じ意味ですが、on the run のほうが一般的で口語・文語どちらでも使えます。lam のスラング的な響きが強すぎる場面では、こちらが自然です。
make a run for it
(一目散に逃げ出す)
「その場から今すぐ走って逃げる」という瞬間の行動を指します。逃亡状態が続くニュアンスの go on the lam とは、時間の幅が違います。
skip town
(トラブルを残して町から姿を消す)
借金や責任を置き去りにして消えることに焦点があります。追われている点を強調する go on the lam とは、逃げる理由の見え方が異なります。
Note|「lam」の意外な語源 ― 「叩く」から「逃げる」へ
go on the lam の lam は、単独では見慣れない単語ですが、その成り立ちには意外な背景があります。
lam はもともと「打つ・強く叩く」を意味する古い動詞だったとされています。そこから「叩きつけるように勢いよく動く」という感覚が生まれ、やがて「大急ぎで逃げる」という意味へと広がっていったと考えられています。英語には beat it(=急いで立ち去る)のように、「打つ」系の言葉が「逃げる」の意味を帯びる例がいくつかあり、lam もその流れの中にある一語です。on the lam という句が「逃亡中」の意味で使われるようになったのは20世紀前半のアメリカとされ、禁酒法時代のギャング文化や犯罪報道とともに定着していきました。
こうして見ると、チャンドラーの go on the lam という一言には、ギャング映画のような「追われて逃げる」空気がうっすらとまとわりついていることが分かります。だからこそ、恋人との別れ話を大げさに演じる彼のジョークが、より滑稽に響くのです。
言葉の来歴を知ると、たった一語の重みが変わってきます。
まとめ|チャンドラーの逃亡ジョークから学ぶこと
go on the lam は、「追われる身になって逃亡する」という緊迫した意味を持ちながら、日常では大げさなユーモアとして使える、表情豊かな表現です。be on the lam なら状態、go on the lam なら動作と、形を変えて使い分けられる点も押さえておきたいところです。
気まずさやプレッシャーから逃げ出したくなったとき、この一言を思い浮かべれば、深刻な状況も少し軽やかに受け止められるかもしれません。チャンドラーのように、ピンチをジョークに変える言葉として、表現の引き出しに加えてみてください。


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