海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回は大人気法医学サスペンス『BONES』シーズン4の第8話から、知的な響きを持つ上級者向けフレーズ「for all ~」をピックアップします。
一見すると簡単な単語の組み合わせですが、実は意外な意味と厳格な文法ルールを持つ非常に重要な表現ですので、ぜひ一緒に深く学んでいきましょう。
実際にそのシーンを見てみよう!
ジェファソニアン研究所のプラットフォームで、スイーツとデイジーが周囲の目も気にせず熱烈なキスを交わした直後のシーンです。
その大胆な行動を目の当たりにしたブースとブレナンたちが、二人の今後の関係性について冷静に分析し合っています。
Cam: That’s a method of termination I’ve never tried. But bravo, Dr. Sweets.
(あんな解雇の仕方は試したことがないわ。でもお見事ね、スイーツ博士。)
Booth: They’ll never work. They’re like complete opposites.
(あいつら絶対にうまくいかないよ。まるで正反対だ。)
Brennan: I agree. For all her faults, she’s a woman of science, Sweets bases his life on the vagaries of psychology and emotion.
(同感ね。欠点はあるにせよ、彼女は科学の人間よ。スイーツは心理学や感情という予測不可能なものに人生の基盤を置いているわ。)
Bones Season4 Episode8 (The Skull in the Sculpture)
シーン解説と心理考察
「あんな解雇の仕方は初めて見た」と皮肉めいた称賛を残して立ち去るカムに続き、ブースとブレナンが二人の相性を語り合います。
ここでドラマファンなら絶対に笑ってしまうのが、ブースの「正反対だからうまくいかない」というセリフと、それに同意するブレナンの姿です。
「直感と感情で動くFBI捜査官(ブース)」と「事実と論理しか信じない法人類学者(ブレナン)」という、世界で一番の「正反対コンビ」である二人が、スイーツとデイジーを「正反対だから」と否定しているという見事な特大ブーメランになっています。
そんな面白さの中で、ブレナンが使っている「for all her faults(彼女には欠点があるにもかかわらず)」という前置きが非常に秀逸です。
デイジーの空気が読めない性格を認めつつも、「それでも彼女は事実を重んじる科学者である」と、同業者としての一定の評価を下していることがわかります。ブレナンらしい、非常に論理的でフェアな視点が光るセリフですね。
フレーズの意味とニュアンス
for all ~
意味:〜にもかかわらず、〜であるのに、〜を考慮しても
このフレーズは、直訳しようとすると「すべての〜のために」となり、文脈が全く通じなくなってしまうという罠に陥りやすい表現です。
実は「despite」や「in spite of」と同じく、「〜にもかかわらず」という譲歩(事実を認めた上で、それに反する結果を述べること)を意味するイディオムとして使われます。
この表現における「for」には、「〜という事実と引き換えにしても」「〜という要素を考慮に入れたとしても」という深い意味合いが含まれています。
後ろに続く名詞(このシーンではher faults)の存在をしっかりと受け入れつつ、それでもなお変わらない事実や結果を導き出す、大人の余裕を感じさせる表現です。
【ここがポイント!】
ネイティブがこの表現を使う時のコアイメージは、「重さを天秤にかける」感覚です。
「数々の欠点」という重りを天秤の片方に乗せたとしても、反対側の「科学者である」という本質のほうが重く、結果的に自分の評価は揺るがない、という対比の映像を思い浮かべてみてください。
単に「But(でも)」で逆説を繋ぐよりも、「確かに〇〇という事実はある。しかしそれでも…」と、相手の意見やマイナス要素を一度受け入れるクッションを挟むため、非常に知的で説得力のある印象を与えることができます。
実際に使ってみよう!
日常会話からビジネスシーンまで、知的なギャップを表現するのに役立つ例文を3つご紹介します。
For all his hard work, he didn’t get the promotion.
(あれだけ懸命に努力したにもかかわらず、彼は昇進できませんでした。)
「彼のすべての努力を考慮してもなお」というニュアンスが含まれ、ただ「昇進しなかった」と言うよりも、結果に対する無念さや理不尽さがより強く伝わる表現です。
For all her experience in this field, she still makes silly mistakes.
(この分野での豊かな経験があるにもかかわらず、彼女は未だに馬鹿げたミスをします。)
「経験」というプラスの要素を提示しながら、それに反するマイナスの結果を強調する際にも使えます。感情のギャップを表現するのにぴったりですね。
I really enjoyed the movie, for all its obvious flaws.
(明らかな欠点はいくつかあるにせよ、私はその映画をとても楽しみました。)
文の後半に「for all ~」を置くことも可能です。作品や人物を評価する際に、「完璧ではないけれど好きだ」という複雑で豊かな感情を表現するのに重宝します。
BONES流・覚え方のコツ
ブレナンが両手に天秤を持っている姿を想像してみてください。片方の皿にはデイジーの「空気が読めない」「おしゃべり」「突発的」といった数々の欠点(all her faults)が山積みにされています。
しかし、もう片方の皿に「科学者であるという事実」を乗せた瞬間、欠点の山がどれだけ重くても、科学者としてのアイデンティティの方がズンと下に沈み込み、絶対に揺るがない映像です。
天秤を使って「すべての要素を比較して、それでもなお」という論理的な測り方をする感覚とセットにすると、このフレーズの知的なニュアンスがスッと記憶に定着しやすくなりますよ。
似た表現・関連表現
似た意味を持つ表現を3つご紹介します。文脈によるニュアンスの違いを確認してみましょう。
despite
(意味:〜にもかかわらず、〜をよそに)
for all とほぼ同じ意味ですが、despite の方が客観的な事実を淡々と述べる際によく使われます。ニュースや公式文書などでも頻繁に登場するフォーマルな前置詞です。
regardless of
(意味:〜に関係なく、〜を問わず)
前もって存在する条件や状況を「全く考慮に入れない」という強い意志を示す表現です。for all が「考慮した上で」というニュアンスを持つのに対し、こちらは「そもそも関係ない」と切り捨てる感覚になります。
even with
(意味:〜があっても、〜を考慮しても)
直訳すると「〜と一緒でも」となり、マイナスの状況や障害を伴っていてもなお、という状況を表します。「Even with the bad weather, we had fun.(悪天候があっても楽しかった)」のように、for all と非常に近い感覚で使えます。
深掘り知識:「for all」の絶対に間違えられない文法ルールと、便利なおまけフレーズ
英語学習者がこの表現を使う際に、絶対に覚えておかなければならない厳格な文法ルールがあります。それは、「for all の後ろには必ず名詞(または名詞句)が来る」ということです。
「〜にもかかわらず」という意味を持つ英単語といえば、真っ先に「although」や「even though」が思い浮かぶ方も多いでしょう。しかし、although は接続詞なので、後ろには「主語(S)+動詞(V)」を含む完全な文章が続きます。
一方で「for all」は前置詞のまとまりとして機能するため、後ろには「名詞」しか置けません。
×誤り:For all she has faults, she is a woman of science.
〇正解:For all her faults, she is a woman of science.
TOEICや英検などの文法問題では、この「後ろに名詞が来るか、文章が来るか」の区別が非常によく狙われます。「for all + 名詞」というセットを塊として覚えておくことで、実践的な会話だけでなく試験対策としても強力な武器になります。
また、「for all」を使った日常会話の超頻出イディオムを2つご紹介します。
1つ目は「for all I know(私の知る限りでは、もしかすると)」です。「確かなことは言えないけれど」と前置きする際に使います。
2つ目は「for all I care(私の知ったことではない、どうでもいい)」です。ドラマでキャラクターが喧嘩別れをするシーンなどで「He can do whatever he wants, for all I care.(彼が何をしようと私の知ったことか)」のように使われる定番の捨て台詞です。
同じ単語の組み合わせでも、後ろに続く言葉でガラッと表情を変えるのが英語の面白いところですね。
まとめ|「for all ~」で知的な譲歩の表現を手に入れよう!
今回は『BONES』のブースとブレナンの面白い掛け合いから、一歩進んだ譲歩の表現「for all ~」をご紹介しました。
相手の意見やマイナスな事実を一度しっかりと受け止めた上で、自分の主張を展開するこのフレーズは、ビジネスでの交渉や、意見の対立を穏やかにまとめる際にも非常に役立ちます。
単なる「But」から卒業して、「for all + 名詞」という知的な大人の英語表現をぜひ実践で使ってみてくださいね。


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