海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。今回は『BONES』から、急に姿を消すことを意味する少しユニークなフレーズ「take a powder」を紹介します。
実際にそのシーンを見てみよう!
スイーツとゴードン・ワイアットが、事件の参考人としてアンダーグラウンドなプロレスラーのトッドを取り調べているシーンです。
Gordon Wyatt: How many iron leprechauns are there?
(ゴードン・ワイアット:アイアン・レプラコーンは何人いるんだ?)
Todd: Just one. Well at a time, I mean. I took over when the last round leprechaun took a powder.
(トッド:1人だけだよ。まあ、同時に存在するのはって意味だけど。前のずんぐりしたレプラコーンが姿を消した時に、俺が引き継いだんだ。)
Sweets: When was that?
(スイーツ:それはいつですか?)
Todd: About three months ago.
(トッド:約3ヶ月前かな。)
BONES Season5 Episode7 (The Dwarf in the Dirt)
シーン解説と心理考察
ポスターに写っている被害者の写真を見せられたトッドは、自分自身が現在の「アイアン・レプラコーン(プロレスのキャラクター名)」であると名乗ります。
ゴードンが「このキャラクターは何人いるのか」と尋ねると、トッドは先代が突然姿をくらましたため、自分が約3ヶ月前にその役目を引き継いだとあっけらかんと答えます。
ここで面白いのは、言葉のコントラストです。英国紳士であり教養豊かなゴードン・ワイアットが丁寧な英語で質問しているのに対し、プロレスラーのトッドは「take a powder(ずらかる)」という少し不良っぽくてくだけたスラングで返答しています。
被害者がすでに殺害されて地中深くに埋められていたことをまだ知らないトッドは、先代が単に面倒になって仕事を放り出したのだと思い込んでいます。
その飄々とした悪びれない態度が、この短い俗語選びから見事に伝わってくるシーンですね。
フレーズの意味とニュニュアンス
take a powder
意味:姿をくらます、急に立ち去る、ずらかる、ドロンする
powder は「粉」「粉末」という意味の単語です。
そこに take を組み合わせた take a powder は、直訳すると「粉を飲む」「粉を持っていく」となりますが、イディオムとしては「急にいなくなる」「こっそり逃げ出す」という意味で使われます。
主に1920年代から30年代にかけてアメリカで流行した古い俗語であり、現代のフォーマルな日常会話で頻繁に使われるわけではありません。
しかし、映画やドラマ、あるいはカジュアルな会話の中で、少しユーモアを交えて逃走劇を語る際にしばしば耳にする粋な表現です。
【ここがポイント!】
このフレーズが持つ最大のニュアンスは、単に「立ち去る(leave)」のではなく、「誰にも告げずにこっそりと、あるいは急いでその場から逃げ出す」という点にあります。
日本語の「ずらかる」「ドロンする」といった少しくだけた響きに非常に近く、責任から逃れたり、面倒な状況を回避したりするために姿を消すという本来ならネガティブな状況を、あえてユーモラスで軽く表現したい時によく使われます。
取り調べを受けているトッドは、先代のプロレスラーが突然いなくなった理由について、「ちょっと嫌になって逃げたんだろう」と軽く考えており、深刻さを全く感じていません。
FBIの犯罪捜査というシリアスな場面であっても、使う言葉ひとつで「逃げた人間の無責任さ」や「語り手の気楽な性格」といった空気感が鮮明に伝わってくるのが、ネイティブの会話の面白いところです。
実際に使ってみよう!
When the blind date started talking about his ex-girlfriend, I knew it was time to take a powder.
(ブラインドデートの相手が元カノの話を始めた時、そろそろずらかる時間だと悟りました。)
[解説] 退屈なデートや気まずい食事の席など、面倒な状況から「こっそり逃げ出したい」というユーモラスな心情を描写するのにぴったりの表現です。少しドラマチックな響きが笑いを誘います。
Things were getting heated at the bar, so we decided to take a powder before the fight broke out.
(バーの雰囲気が険悪になってきたので、喧嘩が始まる前に私たちは姿を消すことにしました。)
[解説] トラブルや厄介事に巻き込まれるのを避けるために、誰よりも早くサッとその場を離れる様子を表す実用的な文章です。危機回避のニュアンスが伝わります。
I think he took a powder to avoid helping us with the moving.
(彼は私たちの引っ越しの手伝いを避けるために、姿をくらましたんだと思います。)
[解説] 物理的にいなくなるだけでなく、自分の仕事や面倒な役割を放棄して連絡を絶ってしまうような相手の無責任な行動を、少し皮肉を込めて非難する際に役立ちます。
BONES流・覚え方のコツ
取り調べ室で、恰幅の良いプロレスラーのトッドが「前のやつは突然ずらかった(took a powder)んだよ」と、肩をすくめながらFBI捜査官に説明している姿をイメージしてみましょう。
または、忍者が煙幕の粉(powder)を地面に叩きつけて、ポンッと煙が上がった隙に「ドロン」と跡形もなく消えてしまうコミカルな様子を頭に思い浮かべてみてください。
このイディオムが持つ「突然の逃走」という視覚的なイメージが、しっかりと記憶に定着しますよ。
似た表現・関連表現
make a break for it
(逃げ出す、強行突破する)
[解説] 捕まりそうになった時や、閉じ込められた状況から「隙を見て一目散に逃げ出す」というニュアンスを持つ表現です。take a powder がこっそり消えるイメージなのに対し、こちらはもっと動きが激しく切迫した状況で使われます。
bail (out)
(途中で投げ出す、ドタキャンする、逃げる)
[解説] もともとは沈みかけた船から水を掻き出したり、飛行機からパラシュートで脱出したりするという意味から派生した言葉です。現代の会話でも、つまらないパーティーや面倒な約束から「抜け出す」「ドタキャンする」という意味で非常によく使われます。
slip away
(こっそり抜け出す、そっと立ち去る)
[解説] スラングっぽさはなく、純粋に「誰にも気づかれないように静かにその場を離れる」という動作を表す表現です。パーティーを途中で退席する際など、日常的に幅広く使える便利な言い回しです。
深掘り知識:手品から頭痛薬まで?「powder」が持つ不思議な由来
なぜ「粉(powder)」という単語が「姿を消す」という全く違う意味に繋がるのでしょうか。これには、アメリカの歴史や文化に根ざしたいくつかの興味深い説が存在します。
一つ目は、手品師が使う「魔法の粉」に由来する説です。19世紀から20世紀初頭にかけての劇場では、手品師がステージ上で足元にフラッシュパウダー(閃光粉)を投げつけ、ポンッと煙と光が上がった瞬間に姿を消すイリュージョンが大流行しました。そこから、煙に巻いて消えるような見事な逃走劇を指すようになったという解釈です。日本の忍者の煙玉を想像すると非常に分かりやすいですね。
二つ目は、女性が化粧室へ行く際の定番の口実である「I need to powder my nose(鼻にパウダーをはたいてきます=お化粧直しに行ってきます)」から派生したという説です。気まずいディナーの席や退屈なパーティーでこのセリフを残して席を立ち、そのまま二度と帰ってこない(逃げてしまう)状況を指すユーモラスな隠語として使われるようになったと言われています。
三つ目は、1920年代のお医者さんが処方していた「粉薬」に由来するという説です。当時の粉末状の胃腸薬や下剤(powder)を飲むと、すぐにトイレに駆け込まなければならず、慌ててその場から立ち去る様子からこの言葉が生まれたという説もあります。
いずれにしても、単なる「逃げる」という動作に、手品の煙幕やちょっとした言い訳といったドラマチックな背景を添えてくれる、とても味わい深いイディオムです。言葉のルーツを知ると、英語を学ぶのがさらに楽しくなりますね。
まとめ|姿を消す状況をユーモラスに伝えるフレーズ
今回は『BONES』のワンシーンから、急に姿を消すことを意味するフレーズ「take a powder」を紹介しました。
日常のちょっとしたハプニングから、ドラマチックな逃走劇まで、状況を少しユーモラスに表現できる言葉です。ぜひ、次回の英会話のチャンスに役立ててみてくださいね。


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