海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回は大人気法医学サスペンス『BONES』シーズン10エピソード21から、困難や複雑な問題に直面したときに前を向くための表現「work through」の意味と使い方を丁寧に解説していきます。
「あの人ならきっと大丈夫」——そんな言葉を英語で言えたら、誰かの支えになれるかもしれません。
実際にそのシーンを見てみよう!
エピソード冒頭のラボのシーン。
ブースが別居中であることを心配するウェンデルに、ブレナンは「私も娘も、そしてブースもきっと大丈夫」と淡々と答えます。
そのやり取りを耳にしたカムが、長年の同僚への揺るぎない信頼を静かな言葉で示します。
Wendell: The separation must be the worst. I cannot imagine not seeing Michael Vincent every day.
(子供と離れて暮らすなんて、想像もできないな。)Brennan: And Booth, as far as I can glean.
(ブースもきっとそうよ。)Cam: He’s worked through this once before. He can do it again.
(彼は以前にもこの問題を乗り越えたことがある。またできるはずよ。)BONES Season10 Episode21(The Life in the Light)
シーン解説と心理考察
事件の証拠を分析するプロフェッショナルな顔の裏で、長年の同僚であり家族同然の存在であるブースの危機を本気で案じるメンバーたちの姿が描かれています。
依存症の再発と別居という重い現実に対し、ブレナンは「ブースもきっと大丈夫」と事実確認のように語り、カムは「以前も乗り越えた、また乗り越えられる」と過去の実績への信頼を述べます。
魔法のように一瞬で解決するのではなく、もがきながらも一つずつステップを踏んで回復していくプロセスへの信頼——カムのシンプルな一言には、それが凝縮されています。
「work through」という言葉が体現する「時間をかけて通り抜ける」という感覚が、この短い場面に自然に息づいていますね。
「work through」の意味とニュアンス
work through
意味:(問題や困難)を乗り越える、少しずつ解決する、整理する
「work(取り組む、努力する)」と「through(〜を通り抜けて)」が合わさった熟語です。
パッと答えを出して終わるような単純な問題ではなく、精神的な葛藤や複雑な人間関係、あるいは膨大な作業など、時間と労力をかけて「通り抜ける」ことで解決に向かうというニュアンスを持っています。
困難な状況から逃げ出さずに着実に前進していく姿勢を描写するときに欠かせない表現です。
【ここがポイント!】
このフレーズの核となる感覚は、「絡まった糸を少しずつ解きほぐしていくプロセス」です。
一朝一夕にはいかない状況に対して、目を背けずに向き合う実直さを表しています。
「解決した」という完了の結果よりも、「解決に向かって努力し続けている途中」を大切にする言葉です。
複雑な感情をゆっくりと消化していく過程を描写するときにも自然に選ばれます。
実際に使ってみよう!
We need to work through these scheduling conflicts before the project starts.
(プロジェクトが始まる前に、このスケジュールの衝突を一つずつ解決していく必要があります。)
ビジネスシーンで非常に便利な使い方です。山積みのタスクやスケジュールの調整など、複雑な課題をチームで着実に片付けていく様子を表現できます。
It takes time to work through the shock of such unexpected news.
(あのような予期せぬニュースのショックを整理して乗り越えるには、時間がかかるものです。)
精神的な動揺を、自分の中でゆっくりと消化していく過程を表す文章です。友人を励ましたり、感情に寄り添ったりするデリケートな文脈で役立ちます。
They are trying to work through their differences by talking honestly.
(彼らは正直に話し合うことで、お互いの意見の相違を乗り越えようとしています。)
意見の食い違いや人間関係の摩擦を、互いの歩み寄りと努力で解決しようとする前向きな姿勢を描写するときによく使われる形です。
『BONES』流・覚え方のコツ
カムのセリフを思い出すとき、鍵になるのは「once before(以前に一度)」という言葉です。
ブースは過去にも依存症という暗いトンネルを「work(もがきながら)」通り抜け(through)た実績がある。
「一度通り抜けた道はまた通り抜けられる」——この確信と共にフレーズを記憶することで、単なる「乗り越える」を超えた、時間と努力のかかるプロセス全体を指す言葉だという感覚が自然に身につきます。
似た表現・関連表現
get over
(〜を乗り越える、立ち直る)
「work through」が努力のプロセスに焦点を当てているのに対し、こちらは障害物を飛び越えるように、結果として立ち直った状態や吹っ切れた状態を強調する表現です。
overcome
(〜に打ち勝つ、克服する)
非常にフォーマルで力強い表現です。自分の意志の力で大きな壁や困難を「打ち負かした」というニュアンスを持ち、書き言葉やスピーチなどで好んで使われます。
deal with
(〜に対処する、処理する)
問題に対して何らかのアクションを起こすという事実のみを述べる、日常的でフラットな表現です。感情的なプロセスというよりは、実務的・現実的に対応するという側面が強くなります。
深掘り知識:前置詞が変える「work」の表情とアメリカの心理文化
英語には「work」を使った熟語が数多く存在しますが、後ろにつく前置詞によってその表情は驚くほど豊かに変化します。
「work out」は、ジムでのトレーニングだけでなく、問題が「最終的に丸く収まる」ことを意味します。
「work on」は、現在進行形で「何かに取り組んでいる最中」であることを示します。
中でも「work through」は、アメリカの心理学やセラピーの文化と密接に関わっています。
複雑な感情やトラウマをただ無理やり抑え込むのではなく、言葉にして向き合い、時間をかけて心の整理をしていくプロセスを社会全体が大切にしているからこそ、「通り抜ける(through)」という感覚を伴う表現が日常会話に深く溶け込んでいるのです。
カムがブースについて語るとき、この言葉を自然に選んだのも、そうした文化的な土壌があってこそかもしれません。
まとめ|信頼を込めて贈る言葉
今回は『BONES』シーズン10エピソード21から、「work through」というフレーズの意味と使い方をお届けしました。
単なる「解決」という一言では表しきれない、人の心の機微や時間をかけた努力のプロセスがギュッと詰まった表現でしたね。
カムの「He’s worked through this once before」という静かな一言は、実績への信頼と、回復とは直線ではなく何度も繰り返す螺旋のようなものだという、深い理解から生まれた言葉でした。
誰かを励ますとき、自分の経験を振り返るとき、ぜひこのフレーズを思い出してみてください。

