海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
割れた食器をこっそり買い替えたり、不具合を直前に直したりして、誰にも気づかれずに済ませた経験はありませんか。
そんなときにぴったりなのが「none the wiser」で、まったく気づかないまま、という意味です。『メンタリスト』シーズン1第21話の後半、CBIの取調室で、ジェーンが相手に向かって推理を組み立てて聞かせる場面に登場します。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。
「none the wiser」の意味とニュアンス
none the wiser
意味:まったく気づかないまま、何も知らないまま
何かが起きたのに、当人だけがその事実を知らずにいる状態を指します。
鍵になるのは the の働きです。ここでの the は名詞につく冠詞ではなく、比較級の前に置かれて「その分だけ」を表しています。wiser は「より賢い」ですから、none the wiser で「その一件のぶんの知識も増えていない」となります。
使われ方は二通りあります。ひとつは、誰かに気づかれずに済ませたことを説明するとき。so 〜 was none the wiser の形で、結果として気づかれなかったと添える使い方が最も多く見られます。もうひとつは、説明を受けたのに理解できなかったと言うときで、こちらは自嘲まじりの響きになります。
否定語 nobody や no one とともに使うときは、none ではなく any の形をとって nobody was any the wiser となります。
【ここがポイント!】
- 核は「知れば増えるはずの一目盛りが、まったく動かなかった」という感覚
- 気づかれずに済んだことを説明する使い方が最も多い一言
- nobody と組むときは any the wiser に形が変わるのが注意点
『メンタリスト』S01E21のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
CBIの取調室で、ジェーンが相手に向かって、事の顛末を組み立てて聞かせる場面です。彼は手を打ち鳴らして話を始め、二週間前に何が行われたのかを、日付と手順つきで並べていきます。聞かされている側は余裕を崩さず、先を促します。すり替えが成功した理由を説明するところで、今回のフレーズが現れます。
Jane: Here’s what happened.
(では、何が起きたのかを話そう。)Harper: I’m all ears.
(ぜひうかがいたいわ。)Jane: Two weeks ago, you took the locker key from around Jim’s neck when he was sleeping and replaced it with an identical one so Jim was none the wiser. Then when you tried to open the locker at the gym, the key didn’t fit. So the money was hidden somewhere else, but where?
(二週間前、あなたは眠っているジムの首から鍵を外し、そっくり同じものとすり替えた。ジムはまったく気づかなかった。ところがジムのロッカーを開けようとすると、その鍵は合わなかった。つまり金は別の場所に隠されていた。ではどこに?)The Mentalist Season1 Episode21 (Miss Red)
シーン解説と心理考察
ジェーンの語り口には、追及というより実演に近い調子があります。手を打ち鳴らしてから話し始める仕草が、これから見せ物が始まるという合図として響きます。取調室という場所にそぐわない軽さが、彼のやり方をよく表しています。
none the wiser が置かれているのは、すり替えが成功した理由を説明する部分です。同じ鍵が首から下がっていれば、疑う理由がない。ここでジェーンは、気づかなかった側の落ち度を責めているのではなく、仕掛けの精度のほうを説明しています。相手の手際を認めながら話を進める姿勢が、この一言をやわらかく見せています。
対する返しも短いものでした。否定も肯定もせず、話の出来ばえだけに触れる。追い詰める側と追い詰められる側というより、互いの技量を測り合っているという空気が、この短いやり取りには漂っています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
頭の横に、目盛りのついたメーターがついていると想像してみましょう。何かを知るたびに、針が一目盛りだけ右に動きます。none the wiser は、その針がまったく動かなかった、という言い方です。
首から下がった鍵がそっくり同じものに変わっても、針は動きません。だから気づきようがない。ポイントは「知らなかった」ではなく「知る機会があったのに増えなかった」という含みで、そこに「うまく隠しおおせた」という手応えが乗ります。説明を三回聞いても分からなかったときに使えるのも、同じ理屈です。情報は入ってきたのに、針が動かなかった。針の動きで覚えると、二つの用法が一本につながります。
例文で覚える「none the wiser」
気づかれずに済んだ場面と、理解できなかった場面の両方に使えます。形の違いにも注意しながら、3つ見てみましょう。
I replaced the broken plate before she got home, and she was none the wiser.
(彼女が帰ってくる前に割れた皿を買い替えたから、まったく気づかれなかった。)
家庭内の小さな失敗をごまかした話です。and のあとに置いて、結果として気づかれなかったと添えるのが定番の形になります。
We fixed the bug an hour before launch, so the users were none the wiser.
(公開の一時間前に不具合を直したので、利用者は誰も気づきませんでした。)
トラブル対応を振り返る場面です。so 〜 の形にすると、原因と結果の関係がすっきり収まります。
A: Did anyone notice you slipped out during the speech?
B: I was back in ten minutes. Nobody was any the wiser.
(A:スピーチの途中で抜け出したの、誰かに気づかれた?)
(B:十分で戻ったからね。誰も気づいてなかったよ。)
こっそり中座した話をする場面です。nobody と組ませるときは、none ではなく any the wiser に形が変わります。
あわせて覚えたい関連表現
be in the dark
(知らされていない、蚊帳の外に置かれている)
情報が与えられていない状態そのものを指し、意図的に知らされていないという不満を伴うことが多い言い方です。結果としての無自覚を指す none the wiser とは、話し手の立ち位置が変わります。
not have a clue
(まるで見当がつかない)
知識や理解が欠けていることを、話し手の主観で強めに言う表現です。特定の出来事のあとに限定されない点で、none the wiser より使える範囲が広くなります。
get away with something
((悪事などを)とがめられずに済む)
行為をした側を主語に置く言い方です。気づかなかった側を主語にする none the wiser とは、同じ出来事を反対側から描く関係になります。
Note|none the / all the という言い方の家族
none the wiser の the は、辞書で「その」と訳される冠詞ではありません。比較級の前に置かれて「その分だけ」を表す、別の働きをする the です。
同じ型を持つ言い方が、英語にはいくつも並んでいます。all the better(かえって良い)、none the worse(少しも悪くなっていない)、so much the better(なおさら結構)、all the more(いっそう)。どれも、直前に述べた理由や出来事のぶんだけ程度が変わる、あるいは変わらないことを言っています。He came late, but the food was all the better for the wait. と言えば、待った分だけ料理がおいしく感じられた、という意味になります。none the worse for wear(使い込んだわりに傷んでいない)のように、慣用句として固まったものもあります。この型の面白さは、数えられない「程度の変化」を、まるで目盛りのように扱っている点にあります。
none the wiser も、この家族の一員です。知識という測りにくいものを、増えた・増えないという一目盛りの話に置き換えている。だから「まったく知らない」ではなく、「この一件では増えなかった」という限定が自然に含まれます。
型として覚えておくと、初めて見る組み合わせでも意味の見当がつくようになります。
まとめ|「気づかれずに済んだ」を英語で
none the wiser は、無知そのものではなく、知る機会があったのに知識が増えなかった状態を指す表現です。だからこそ、隠しおおせた側の手応えと、気づけなかった側の無自覚が、同じ一言に同居します。
これを覚えておくと、こっそり済ませた話をするときに、事実と結果をまとめて伝えられるようになります。直前に直した不具合にも、黙って買い替えた食器にも、抜け出して戻った十分間にも当てはまります。説明されても分からなかった、と自嘲するときにも同じ言葉が使えます。
劇中では、そっくり同じ鍵が首から下がっているかぎり、疑う理由はどこにもありませんでした。知る機会がないのではなく、増えるはずのものが増えなかった。そういう気づかなさもあるのですね。


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