海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回は『ビッグバン★セオリー』シーズン11 第4話から、superstition と tradition の違いを取り上げます。車の中でハワードとシェルドンが、ロケットの打ち上げにまつわるピーナッツの習慣をめぐって話し、その習慣の呼び方が途中で入れ替わります。
同じ習慣でも、どちらの語で呼ぶかによって話し手の評価が変わります。劇中のやり取りに沿って、二つの単語の距離感を整理していきます。
「silly superstition」と「more of a tradition」で評価が分かれる
車中の場面で、ハワードはピーナッツについてこう説明します。
Howard: I’m not gonna eat them. It’s a thing they do at JPL.
(食べるわけじゃないさ。JPLでやってることなんだよ。)TBBT Season11 Episode04
It’s a thing they do at ~. は「〜ではそういうことをするんだ」と、ある集団の習慣を説明するくだけた言い方です。JPL(ジェット推進研究所)では打ち上げのたびにピーナッツを置いている、というのがハワードの説明です。主語の they は、話し手自身を含まない「その組織の人たち」を指しています。これを聞いたシェルドンの反応から、呼び方の争いが始まります。
Sheldon: That sounds like a silly superstition.
(ばかげた迷信のように聞こえるが。)Howard: It’s more of a tradition.
(どっちかっていうと伝統だな。)Sheldon: Oh! I do love a tradition. Could you pull over at the next peanut store?
(おお!伝統なら大好きだ。次のピーナッツ屋で車を停めてくれないか?)TBBT Season11 Episode04
superstition は、根拠がないとされる言い伝えや縁起かつぎを指す語です。ここでは silly(ばかげた)が付いていて、はっきりした否定の評価になっています。一方の tradition は、長く受け継がれてきた慣習を指し、一般に肯定的か中立的な響きを持ちます。
ハワードは more of a ~(どちらかといえば〜)を使って、superstition という呼び方を tradition に言い換えます。するとシェルドンは一転して乗り気になり、店に寄るよう頼み始めます。中身は同じピーナッツの習慣なのに、語が変わっただけで態度が変わるところが、この場面の面白いところです。英語で身近な習慣を紹介するときも、相手にどう受け止めてほしいかで語を選ぶと、意図が伝わりやすくなります。
| 単語 | 指すもの | 響き |
|---|---|---|
| superstition | 根拠がないとされる信じごと・縁起かつぎ | 否定的になりやすい |
| tradition | 受け継がれてきた慣習・しきたり | 肯定的・中立的 |
「Now that I think about it」で呼び方を言い直す
ピーナッツの店に寄ろうとするシェルドンに、ハワードは現実的な返事をします。
Howard: I don’t think that’s a real thing.
(そんな店、実際にはないと思うぞ。)Sheldon: Oh, don’t be pedantic. Any nut store will do.
(細かいことを言うな。ナッツの店ならどこでもいい。)TBBT Season11 Episode04
don’t be pedantic は「揚げ足を取るな」「細かいことにこだわるな」と相手をとがめる言い方です。peanut store という言葉尻をとらえたハワードに、シェルドンがこう返す形になっています。このあとハワードが、この辺りではピーナッツは手に入らないと言うと、シェルドンは一日が台無しだと大げさに嘆きます。そこでハワードが口にするのが次の一言です。
Howard: Now that I think about it, maybe it is more of a superstition.
(考えてみたら、どっちかっていうと迷信なのかもな。)TBBT Season11 Episode04
Now that I think about it, は「考えてみると」と、前に言ったことを修正するときの前置きです。さっきの more of a tradition と同じ型を使い、今度は superstition 側へ戻しています。maybe が付いているので、断定ではなく「〜なのかもしれない」と控えめに認め直す形になっています。会話の途中で自分の発言を修正したいとき、そのまま応用しやすい前置きと言えます。
その後、打ち上げの場面では、カウントダウンの呼び方をめぐって二人の主張がぶつかります。
Sheldon: Wait, what are you doing? It’s “T-minus.”
(待て、何をしている?「Tマイナス」だろう。)Howard: I was an astronaut. We used L-minus.
(俺は宇宙飛行士だったんだぞ。俺たちはLマイナスを使ってたんだ。)TBBT Season11 Episode04
どちらの呼び方が正しいかではなく、自分たちの集団ではこうしていた、という主張の仕方に注目すると、前半の It’s a thing they do at ~. とつながって見えてきます。最後にハワードは自分のロケットだからと押し切り、do it my way(自分のやり方でやる)と言い切ります。自分たちの慣習を主張するときに we を主語に立てている点も、We used L-minus. の一言から読み取れます。
まとめ|呼び方ひとつで評価が変わる
今回は、否定的になりやすい superstition と、肯定的に受け止められやすい tradition の違いを、more of a ~ と Now that I think about it, による言い直しとあわせて見てきました。習慣をどの語で呼ぶかが、話し手の評価を映し出すことが分かります。
ピーナッツひとつで揺れ動く二人のやり取りを観ながら、言葉の選び方の差を味わえるのも、このエピソードの見どころです。
同じエピソードのほかのコラムやフレーズ記事と読み比べると、この回の会話の流れがより立体的に見えてきます。


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