海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
何度か話したのに、あの人がどういう人なのかいまひとつつかめない。そんなもどかしさを覚えたことはありませんか。
その感覚をそのまま言い表せる「get a read on someone」を、『メンタリスト』シーズン2第17話の中盤、ギャラリーで一悶着あった直後の車内で、リズボンがジェーンの狙いを先回りして言い当てるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get a read on someone」の意味とニュアンス
get a read on someone
意味:相手がどういう人間か、何を考えているかの見当をつける
ここでの read は「本を読む」ではなく、計器の数値を読み取るときの read に近い使い方です。体温計や圧力計に目をやって、針がどこを指しているかを確かめる。あの動作が、人に向けられたのがこの表現になります。
冠詞の a がつくのは、read が「一回分の読み取り値」という数えられる名詞として扱われているためです。じっくり理解し尽くすのではなく、その場の観察から一つの見立てを取り出す。だから確信の度合いもほどほどで、「たぶんこういう人だろう」という程度の温度に収まります。
実際の会話では否定形が目立ちます。I can’t get a read on him. と言えば、「どうにもつかみどころがない」。相手が本心を見せないときにも、こちらの読みが定まらないときにも使えます。対象は人だけでなく、状況や場の空気を取ることもできます。
【ここがポイント!】
- read は「本を読む」ではなく、計器の数値を読み取るときの read
- 理解し尽くすのではなく、一回分の見立てを取り出す、という控えめな確信度
- can’t get a read on で「つかみどころがない」。否定形のほうが出番は多い一言
『メンタリスト』S02E17のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ギャラリーで相手を挑発したジェーンは、その場を追い出されて車に戻ります。ハンドルを握るリズボンは、ジェーンが言い訳を口にする前に、その中身を全部先に言ってしまう。長く組んできた相手の手口をどこまで把握しているかが分かる場面です。
Lisbon: I know, I know. You were making stuff up to get the guy angry so you could get a read on him. Blah, blah, blah. The truth is, you just didn’t like the guy.
(はいはい、わかってる。適当なこと言って怒らせて、相手を読もうとした。そういうやつでしょ。本当のところは、単にあの人が気に入らなかっただけ)Jane: Um, could you take the next left, please?
(あの、次を左に曲がってもらえますか)Lisbon: Okay. Well, what did you read? Did he do it?
(いいわよ。で、何を読んだの?彼がやったの?)Jane: Well, maybe. He had a good motive. And maybe not. The red box didn’t fit.
(まあ、やったかもしれない。動機は十分ある。やっていないかもしれない。あの赤い箱が噛み合わない)The Mentalist Season2 Episode17(The Red Box)
シーン解説と心理考察
面白いのは、リズボンがジェーンを読んでいることです。「相手を読むためだった」という建前を先回りして口にし、そのうえで「本当は嫌いなだけ」と本音まで並べてしまう。read する側の人物が、その場では read される側に回っています。
Blah, blah, blah という投げやりな締めも効いています。もう何度も聞いた説明だ、という含みがこの三語に凝縮されている。呆れながらも咎めきらない、この二人特有の距離感が短い一言に出ています。
そして次の瞬間には「で、何を読んだの」と実務に戻る。感情の処理と仕事の処理を切り離す速さが、リズボンという捜査官の輪郭をつくっています。
対するジェーンの答えは、maybe と maybe not を並べただけの宙ぶらりんなものでした。断定を避け、赤い箱という物証の違和感だけを残していく。読んだ結果をすぐには言葉にしない。それもまた彼の手つきの一部だと言えます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
計器の針を思い浮かべると、この表現は一気に扱いやすくなります。相手という機械に目盛りがあり、こちらはそこに目をやって、いま針がどこを指しているかを一度だけ読み取る。読み取れた数値が a read です。
だから、この表現に「相手を完全に理解した」という響きはありません。取れるのは一回分の値だけで、次の瞬間には針が動いているかもしれない。その頼りなさが、can’t get a read on という否定形の出番の多さにつながっています。
車内で「で、何を読んだの」と聞かれたジェーンが、maybe と maybe not しか返せなかった場面と重ねておくと、この控えめな確信度がそのまま記憶に残ります。
例文で覚える「get a read on someone」
否定形と肯定形では出番の多さが違う表現です。三つの場面で、その使い分けを見ていきましょう。
I’ve met her twice, but I still can’t get a read on her.
(二回会ったけれど、いまだにどういう人なのかつかめない)
新しい知人について友人に話す場面です。まずこの否定形で覚えておくと、実際の会話で最も出番があります。
Give me five minutes with the client and I’ll get a read on what they actually want.
(クライアントと5分話させてください。本当は何を求めているのか見当をつけます)
商談前の打ち合わせでの一言。on のあとに人ではなく状況を置く形も自然に使えます。
A: How did the interview go?
B: Hard to say. I couldn’t get a read on the panel at all.
(A:面接どうだった?)
(B:なんとも。面接官の反応がまったく読めなかった)
面接後に手応えを報告するやり取りです。感触を語るときの定番の言い回しになります。
あわせて覚えたい関連表現
size someone up
(値踏みする、品定めする)
相手の力量や脅威の度合いを測るニュアンスが強い表現です。今回のフレーズが内面や意図に向くのに対し、こちらは能力の見積もりに寄ります。
figure someone out
(相手を理解する、正体をつかむ)
時間をかけて答えにたどり着く含みがあります。一回分の見立てを取る get a read on とは、必要な観察の量が異なります。
see right through someone
(相手の本心を見抜く)
取り繕いや嘘を見破る場面に限られる表現です。今回のフレーズは、相手が正直でも使えるという点で射程が広くなります。
Note|人を「読む」という発想
英語には、人や場を対象に read を使う表現がいくつもあります。get a read on someone、read a room、read the situation。日本語の「空気を読む」とよく似ているようで、前提が少し違っています。
日本語の「空気を読む」は、その場の暗黙の期待を察して、自分の振る舞いをそこへ合わせるところまでを含みます。読んだ結果として同調が求められる。だから「空気が読めない」は、察知能力の低さを指すと同時に、和を乱したという非難としても機能します。
一方、英語の read a room は、その場の温度を把握するところでいったん区切りがつきます。把握した結果どうするかは、話し手の判断に委ねられる。読んだうえで、あえて空気に逆らう選択も含めて read a room です。get a read on someone も同じで、相手の人物像をつかむこと自体が目的であり、つかんだあとに相手へ合わせる義務は含まれていません。
つまり英語の read は、情報を取り出す観察行為に軸足があります。同調への圧力が意味のなかに組み込まれていない、という点が日本語との一番の違いです。
この差を押さえておくと、get a read on someone を訳すときに「気を遣う」方向へ引きずられずに済みます。相手を読んだからといって、相手に合わせるとは限らない。ジェーンが人を読むのは、合わせるためではなく揺さぶるためでした。
読むことと、合わせること。英語はその二つを別々に扱っています。
まとめ|読む側が、読まれていた車内
get a read on someone は、相手の言動を手がかりに、その人がどういう人間かの見当をつける表現です。計器の数値を一度読み取るように、一回分の見立てを取り出す。確信の度合いがほどほどであることが、この言い回しの持ち味になります。
覚えておくと、人物評を語るときの表現が一段しなやかになります。「彼はこういう人だ」と断定する代わりに、「まだ読めていない」と保留を口にできる。判断を急がない姿勢を、そのまま言葉にできるようになります。
ギャラリーの帰り道、read する側だったジェーンが、リズボンにあっさり読まれていました。読み合いのおかしみごと、表現の引き出しに加えてみてください。


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