海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
「それは上の判断だから」と言うときの、あの「上」。誰と名指しするわけでもないのに、聞いた相手にはちゃんと伝わる便利な言葉です。英語にも、まったく同じ働きをする一言があります。
それが「top brass」です。『メンタリスト』シーズン3第16話の中盤、二つの殺人事件のつながりが判明し、リズボンが幹部への説明の場を段取りするシーンから、一緒に見ていきましょう。
「top brass」の意味とニュアンス
top brass
意味:上層部、幹部連中、お偉方
brass は真鍮を指す名詞です。人を指す brass / top brass は、もともと軍の高位の将校を指し、そこから組織の意思決定層一般へ広がったと説明されます。軍服の真鍮製の装飾や階級章との関連が挙げられますが、細かな成立過程は断定しません。
意味の上では「上層部」「幹部連中」にあたります。個人名を挙げずに、決定権を持つ人たちをひとまとめに指せるのが最大の利点です。
軍や警察の文脈から広がった語で、企業を含む階層のある組織にも使われます。辞書では informal / slang とされる口語表現なので、正式な社内資料や報告書では senior management などが安全です。
集団を指すため、動詞は単数・複数のどちらで受ける用例もあります。組織を一つのまとまりとして見るか、構成員を意識するか、また英米の用法差などに応じて選ばれます。
【ここがポイント!】
- もとは軍の高位の将校を指し、組織一般の「上層部」に広がった表現
- 個人名を出さずに決定権を持つ層をまとめて指せる、便利なひとかたまりの表現
- 動詞は単数・複数の両方があり、辞書では informal / slang とされます
『メンタリスト』S03E16のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者と、別件で捜査していた連続警官殺しの犯人が高校時代の親友だったこと。さらに凶器の出所が被害者の銃器密輸ルートだったこと。二つの事実が立て続けに判明し、事件の性格が大きく変わります。報告を聞き終える前から結論を言い当てるジェーンに対し、リズボンはすでに次の段取りを済ませていました。
Jane: Let me guess. You traced one of the serial numbers back to a weapon that Montero gave to his buddy Johnson.
(当ててみようか。シリアルナンバーをたどったら、モンテロが旧友のジョンソンに渡した銃に行き着いた)Cho: That’s right. Same weapon Johnson used to kill his victims.
(そのとおり。ジョンソンが被害者を殺すのに使ったのと同じ銃だ)Jane: Have you mentioned any of this to LaRoche?
(このこと、ラロシュには話した)Lisbon: I set a briefing with top brass in ten minutes. LaRoche, Bertram, and Hightower will all be there.
(10分後に上層部との会議を入れたわ。ラロシュもバートラムもハイタワーも来る)The Mentalist Season3 Episode16(Red Queen)
シーン解説と心理考察
このやり取りは、捜査の主導権が現場から上層部へ移ろうとする瞬間を切り取っています。単独の殺人事件として始まったはずの捜査が、組織全体を巻き込む案件に変わったことを、リズボンは会議の設定という行動で示しています。
注目したいのは、彼女が幹部を top brass とひとまとめに呼んだ直後、三人の名前を具体的に挙げているところです。組織図の上では一括りにできる相手でも、実際にどの顔が並ぶかは彼女にとってまったく別の意味を持ちます。ひとかたまりの金色が、すぐさま個別の人物へと分解されるこの流れが、場面の緊張を生んでいます。
10分という数字の短さも効いています。段取りを整えてから報告するのではなく、報告を受けながら同時に段取りが進んでいる。事態が現場の手を離れつつある速さが、この一言から伝わってきます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
覚え方として、会議室の扉が開き、高位の将校や幹部が入ってくる場面を思い浮かべてください。軍の上級将校を指した brass が、組織の上層部全体を指すようになった流れを重ねます。
真鍮を意味する語と軍の上級将校とのつながりを手がかりにすると、組織の「上の人たち」という意味を覚えやすくなります。
劇中でリズボンがこの言葉を使った直後、彼女は三人の名前を並べました。ひとまとまりの金色が、具体的な顔に分かれていく瞬間です。この分解の動きとセットで覚えておくと、これが集合を指す語であることも一緒に定着します。
例文で覚える「top brass」
職場の話題で出番の多い表現です。三つの場面で、使われ方の幅を確かめてみましょう。
The top brass will be visiting the factory next week.
(来週、上層部が工場を視察に来ます)
社内で幹部の来訪を知らせる場面です。will be visiting は単数・複数で形が変わらないため、この文だけでは数の一致は判別できません。
The top brass has ordered a full review of the incident.
(上層部は、この件の全面的な見直しを指示しました)
組織としての対応を会話で報告する場面です。口語的な語なので、正式文書では senior management などへの言い換えを検討します。
A: Who signed off on this?
B: Top brass. Don’t ask me why.
(A:これ、誰が承認したの)
(B:上の人たち。理由は聞かないで)
納得のいかない決定について同僚とこぼし合う場面です。the を省くと、ぼやきの調子がぐっと出ます。
あわせて覚えたい関連表現
higher-ups
(上の人たち)
軍や警察に限らず、どんな組織にも使えるくだけた言い方です。top brass のような制服や金色のイメージを伴わないぶん、守備範囲が広い表現だと言えます。
upper management
(経営幹部層)
企業組織の階層を示す中立的な用語です。皮肉やぼやきの色がまったくないので、社内資料や報告書に向いています。
the powers that be
(実権を握っている人たち)
誰と特定できない決定主体を指す言い方です。top brass が組織図上の位置を示すのに対し、こちらは正体の見えなさそのものを含んでいる点が違います。
Note|軍の上級将校から組織の上層部へ
brass は真鍮という金属を指す語です。人を指す用法では、軍の高位の将校との結びつきが背景にあるとされています。
辞書では brass / top brass が軍の高位の将校を指し、そこから企業などの上層部にも広がった語として説明されます。軍服の真鍮製装飾や階級章との関連も挙げられますが、「階級が上がるほど真鍮の面積が増えた」という細部までは確認できないため採用しません。
同じ発想の言い換えは英語にいくつもあります。身につけている物で人を指す言い方としては、スーツを着た経営層を the suits と呼ぶ用法がよく知られています。聖職者を the cloth と呼ぶ言い方も同じ型で、装いや持ち物がそのまま職能や立場の代名詞になる作り方は、英語のなかで珍しいものではありません。
劇中でリズボンがこの語を使った直後に三人の名前を挙げたのは、まさにこの語の性質を裏返して見せた場面でした。金色の装飾でひとまとめにできる相手も、会議室に入れば個別の判断を持つ人間に戻ります。
金色は、遠くから見たときだけ一つに見えるものなのかもしれません。
まとめ|金色の装飾が集まる場所
top brass は、もとは軍の高位の将校を指し、組織の意思決定層一般にも広がった口語表現です。個人名を出さずに「決める側の人たち」を表せますが、正式な報告書では senior management などが安全です。
自分の一存では決められない、という状況は働いていれば頻繁に訪れます。そんなとき、責任の所在をやわらかく示す言い方を一つ持っておくと、説明がずいぶん楽になります。皮肉に振ることも、中立に留めることもできる懐の広さが、この表現の強みだと言えます。
会話で「上の判断で」と言いたいときに使える表現です。


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