海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
語り口が高慢で、こちらを見下ろしているように聞こえ、素直にうなずけなくなる。そんな瞬間が、職場にも家族のあいだにもあります。
そんな態度を指す「get on one’s high horse」を、『メンタリスト』シーズン3第22話の中盤、リハーサル会場に押しかけたジェーンが指揮者から職権乱用だと抗議されるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get on one’s high horse」の意味とニュアンス
get on one’s high horse
意味:偉そうな態度をとる、居丈高になる
直訳すると「自分の高い馬に乗る」。背の高い馬にまたがれば、地上に立つ人を自然と見下ろす位置に立ちます。その物理的な高さが、そのまま「上から物を言う態度」の絵になっています。
この表現が批判するのは、高慢で独善的、あるいは譲らずに相手を見下すような態度です。道徳や正しさを持ち出す場面でもよく使われますが、そこに限定されません。地位や知識、経験を盾にした偉そうな振る舞いにも使えます。
実際の会話では get off one’s high horse(その態度をやめろ)の形が最もよく登場します。be on one’s high horse なら「偉そうな態度でいる」という状態、get on なら「その態度に入る」という動きを表します。主張の中身に触れず、語り方だけを問題にできるため、議論を打ち切る一言としても働きます。
【ここがポイント!】
- 核は「高い馬の上から見下ろす」という、視線の高さの絵
- 高慢・独善的で、相手を見下すような態度を咎める一言
- 会話では get off your high horse(その態度はやめて)の形がいちばん耳に入るので、そこから覚えるのがコツ
『メンタリスト』S03E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者が所属していたオーケストラのリハーサル会場に、ジェーンが押しかける場面です。ジェーンは指揮者ヴィンセントに向かって、前置きもなく「ヴィンセントがエレノアを殺した」と言い切ります。動じないヴィンセントを見て、ジェーンは揺さぶりの手口だったと明かしますが、犯人候補から外したわけではありません。種明かしをされた側の抗議に、ジェーンがどう返すかに注目してみてください。
Jane: Meh. Well, it’s worth a try.
(ふうん。まあ、試す価値はあったよ。)Vincent: Worth a try?
(試す価値だと?)Jane: Yeah, the old “it was you” gambit. Guilty people often fold up at that point— guilty people with a conscience, that is, which means you’re either innocent, or you’re a cold, heartless monster… or both.
(そう、「犯人はあなただ」という古典的な手だよ。やましい人はたいていそこで崩れる。良心のある人ならね。つまり、あなたは無実か、冷酷で無情な怪物か……あるいはその両方だ。)Vincent: This is an outrageous abuse of authority.
(これは言語道断な職権の乱用だ。)Jane: Yes, yes, I know. Don’t go getting on your high horse. It still might be you, and if it is, justice will find you.
(はいはい、わかってます。そう偉そうにしなさんな。まだあなたの可能性もあるし、もしそうなら正義が見つけますよ。)The Mentalist Season3 Episode22(ラプソディー・イン・レッド)
シーン解説と心理考察
職権の乱用だという抗議には理由があります。ジェーンは捜査上の根拠を示さず特定の人物を犯人だと名指しし、反応を見ようとしました。ただし、その反応だけで無実と決めたわけではなく、直後に It still might be you. と可能性を残しています。
それに対してジェーンが返すのは、謝罪でも反論でもなく Don’t go getting on your high horse でした。抗議の中身には触れず、高慢で譲らないように聞こえる態度を指摘して受け流します。相手の主張から話し方へ焦点を移す、この切り返しが会話の温度を変えています。
ヴィンセントは団員に容赦なく駄目出しをし、指揮台の上から楽団を統率する人物として描かれてきました。文字どおり高い位置に立つ人に向かって「高い馬から降りろ」と告げる構図が、この一言に重なっています。権威を前にしても姿勢を崩さないジェーンの態度がにじむ場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
甲冑をまとった人物が背の高い軍馬にまたがり、地面に立つ人々を見下ろしながら話しかけている絵を思い浮かべてください。馬上の人は口調を変えなくても、位置関係だけで相手を見上げさせてしまいます。しかも乗っている本人には、その高さの自覚がないことが多い。この「高さの無自覚さ」が、表現に含まれる皮肉の正体です。
劇中では、指揮台という高い場所に立つ人物が、職権乱用だと抗議した直後に Don’t go getting on your high horse. と返されます。指揮台と馬上、二つの高さが重なるこの場面ごと覚えておけば、get on one’s high horse が「高慢で見下すような態度」を指す言葉だと、視線の角度まで残ります。
例文で覚える「get on one’s high horse」
相手の説教くささを軽く咎めたいとき、あるいは自分がそう見えないよう先手を打ちたいときに使えます。言い返す形、予防線を張る形、会話のやり取りと、3つで見ていきましょう。
Oh, get off your high horse. You made the same mistake last month.
(もう偉そうな口をきくのはやめてよ。先月あなたも同じミスをしたでしょ。)
友人に上から説教されて、思わず言い返す場面です。get off 〜 は相手に態度の撤回を求める言い方なので、遠慮のいらない間柄で使うのが前提になります。
I don’t want to get on my high horse, but this really isn’t how we agreed to do it.
(偉そうに言うつもりはないんですが、これは我々が合意したやり方ではありません。)
会議で異議を唱える前に、予防線を張っておく一言です。I don’t want to 〜 but の形にすると指摘の角が取れて、相手も身構えずに聞けます。
A: He gave me a whole lecture about being on time.
B: He’s been on his high horse ever since he got promoted.
(A:時間を守れって、延々と説教されたよ。)
(B:あの人、昇進してからずっと偉そうにしてるよね。)
同僚の変化を陰で話題にする、給湯室でのやり取りです。be on one’s high horse は状態を表すので、ever since 〜 と組み合わせると、そうなった時期まで示せます。
あわせて覚えたい関連表現
get off one’s high horse
(偉そうな態度をやめる)
同じ比喩の裏返しで、相手に態度の撤回を求める言い方です。get on が「その態度に入る」動きを指すのに対し、こちらは「降りる」動きを指し、実際の会話ではこちらのほうが登場頻度は高くなります。
be on one’s soapbox
(持論を演説する、熱弁をふるう)
街頭で石鹸の空き箱に乗って演説した人々に由来する表現です。high horse が相手を見下ろす態度を批判するのに対し、こちらは語りの長さと熱量そのものを問題にします。
holier-than-thou
(独善的な、聖人ぶった)
「自分のほうが道徳的に上だ」という含みは high horse と共通しますが、こちらは人や態度を修飾する形容詞で、動作の絵を伴いません。人物評として一語で使える点が異なります。
Note|高い位置から話す態度が反発を招く理由
この表現が長く使われてきたのは、馬上の高さが態度の高さへそのまま置き換わる、分かりやすい比喩だからです。話している内容とは別に、相手を見下ろす姿勢だけを取り出して批判できます。
道徳や正しさを語る場面で使われることはありますが、それが必須条件ではありません。地位を誇示する人、知識をひけらかす人、自分の判断を譲らない人にも向けられます。辞書が示す中心は、arrogant and unyielding、つまり高慢で頑なな態度です。
裏を返せば、この言葉を向けられた側は難しい立場に置かれます。態度を改めれば主張まで引っ込めたように見え、主張を続ければ「まだ馬から降りていない」と見なされる。日本語の「上から目線」もよく似た働きをしますが、こちらは視線の方向を言うだけで、乗り物という具体物を持ち込みません。降りるという動作を含む分、英語のほうが相手への要求が具体的です。
ジェーンが Don’t go getting on your high horse. と返したとき、抗議の中身には一言も触れていませんでした。中身ではなく態度の高さへ焦点を移すという、この表現の使われ方そのものです。
正論をどう語るかという問題は、馬がいなくなった今も残り続けています。
まとめ|高い場所から降りるという作法
get on one’s high horse が指しているのは、高慢で独善的、あるいは譲らずに相手を見下すような態度です。道徳的な優位を誇る場面にも使えますが、それだけに限定されません。
だからこそ、会話では get off your high horse という形が最もよく使われます。「その主張は間違っている」ではなく「その高さから降りてほしい」と伝えられるので、相手の言い分を全否定せずに空気を変えられます。自分が説教くさくなりそうな場面では、I don’t want to get on my high horse, but 〜 と前置きしておくと、指摘が受け止めやすくなります。
指揮台の上から抗議した人に、ジェーンは高さのことだけを返しました。主張と態度は、別々に評価されることがあるのです。


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