海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
結論を知っている人が、なかなかそこにたどり着かない。前置きが続くうちに、聞いている側だけがそわそわしてくる。会議でも雑談でも、そんな時間があります。
そこで出番になるのが「keep someone in suspense」です。答えを渡さずに相手を待たせる、じらすという意味の一言。『メンタリスト』シーズン3第23話の中盤、CBIのオフィスで、強盗の本当の動機を明かそうとするジェーンが口にする場面から、一緒に見ていきましょう。
「keep someone in suspense」の意味とニュアンス
keep someone in suspense
意味:じらす、やきもきさせる
suspense は「宙吊りの状態」を表す語です。決着がつかないまま浮いている——その状態に相手を置いたままにする、というのがこの表現の成り立ちになります。
答えや結論を知りたがっている相手に、それを渡さずに待たせている状況を指します。意地の悪いじらしにも、話を盛り上げるための演出にも使えるため、場面によって温度が変わるのが特徴です。
会話でよく使われる形の一つが、否定の命令形です。Don’t keep me in suspense.(もったいぶらないで)という形で、話の続きを促す軽い催促として働きます。目的語は me だけでなく us や the whole team のように広げられ、待たされている側が誰なのかをそのまま示せます。
自分を主語に立てることもできます。I don’t want to keep you in suspense と切り出せば、「じらすつもりはないので、先に結論を」という前置きになり、報告やプレゼンの冒頭でそのまま使えます。
【ここがポイント!】
- suspense の芯は「宙吊り」。決着がつかないまま浮いている状態を指す言葉
- Don’t keep me in suspense. の否定命令形は、続きを促す定番の使い方
- me なら催促、you なら前置き。目的語を入れ替えるだけで立場が反転するのがコツ
『メンタリスト』S03E23のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
強盗事件の裏で、犯人の部屋から別の遺体が見つかります。CBIのオフィスに戻ったチームは、チョウの報告をもとに時系列を組み直していきます。動機についての読みを持っているのはジェーン自身なのですが、その本人が、まるで誰かに答えを隠されているかのような口ぶりで話に割り込みます。答えを握っている人が「じらさないで」と言い出す、ねじれた一言に注目してみてください。
Lisbon: So, you know the real motive for the robbery? What’s up with the dead roommate?
(それで、強盗の本当の動機がわかったの? 死んでたルームメイトは何なの?)Cho: Michael Takashima. Coroner says he’s been dead just under 24 hours.
(マイケル・タカシマ。検死官によると、死後24時間弱だ。)Lisbon: So killed last night way before the robbery.
(つまり昨夜殺された。強盗のずっと前ね。)Cho: Killer put the bomb on Dinkler in the house. Roommate probably came home, had to be disposed of.
(犯人は家の中でディンクラーに爆弾を装着した。ルームメイトはたまたま帰宅して、始末されたんだろう。)Jane: Yeah. Uh, don’t keep me in suspense. What’s the motive if it wasn’t about the money?
(ああ。えっと、もったいぶらないでくれ。金じゃないなら動機は何なんだい?)The Mentalist Season3 Episode23(Strawberries and Cream, Part 1)
シーン解説と心理考察
答えを握っているのはジェーンのほうなのに、じらさないでほしいと言い出すのもジェーン自身です。この転倒が、この人物の語り口をよく表しています。
自分から話し始めれば済むところを、あえて他人に振る形にして、場の視線が自分に集まる段取りをつくる。誰も彼を待たせてなどいないのに、待たされている側のふりをしてみせる。そのひと呼吸が、会話の温度を変えています。
直前まで、リズボンとチョウは死亡推定時刻から事件の順序を組み直す、事務的なやり取りを続けていました。そこへ Uh という言いよどみを挟んで割り込むタイミングも計算されており、話の主導権が一瞬で移る流れが見どころです。焦らしているのは本人ひとりだという構図が、視聴者にだけ見えるようになっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
崖のふちから半歩だけ足を踏み出したまま、誰かに腕をつかまれて宙に浮いている——そんな姿勢を思い浮かべてください。落ちもしないし、戻れもしない。suspense はもともと「吊るす」という動作と同じ根を持つ語で、決着がつかないまま浮いた状態を指します。
腕をつかんでいる側が、いつ引き上げるかを握っている。それが keep someone in suspense です。劇中では、その腕をつかんでいる本人が「早く引き上げてくれ」と言い出します。宙吊りにしている側が、宙吊りにされているふりをする。このねじれた場面ごと覚えておけば、誰が答えを持っているかを言い当てる表現だということが、輪郭を持って残ります。
例文で覚える「keep someone in suspense」
否定の命令形で相手を促すか、自分を主語にして前置きに使うか。この二つの型を押さえておけば、日常でもビジネスでも困りません。3つの例文で確かめてみましょう。
Come on, don’t keep me in suspense — did you get the job?
(ねえ、じらさないでよ。仕事は決まったの?)
友人の面接結果を聞き出す、くだけた場面です。ダッシュで質問を続けると、待ちきれない気持ちがそのまま声の勢いになります。
I don’t want to keep you in suspense, so I’ll give you the short answer first.
(じらすつもりはないので、先に結論からお伝えします。)
報告やプレゼンの冒頭で、結論を前に置くときの前置きです。丁寧さを保ったまま、これから結論を言うと宣言できます。
A: I heard the results came out this morning.
B: They did. Sorry to keep you in suspense — we got the contract.
(A:今朝、結果が出たって聞いたけど。)
(B:出たよ。じらしてごめん。契約、取れた。)
待たせていた側から切り出す会話です。Sorry to keep you in suspense と一言添えるだけで、待たせた事実を認めながら、いい知らせを明るく渡せます。
あわせて覚えたい関連表現
leave someone hanging
(宙ぶらりんにする、返事をせず放置する)
返事や対応をしないまま相手を放置するニュアンスが強く、困らせる度合いは上です。結論を待たせている keep someone in suspense と違い、こちらは場を盛り上げる文脈ではまず使いません。相手が怒ってもおかしくない状況かどうかが、選び分けの目安になります。
keep someone guessing
(相手に推測させ続ける、真意を読ませない)
答えを明かさない点は同じですが、相手が当てようとしている状態に重心があります。手の内を隠す戦略的な場面にも向きます。
drag something out
(引き延ばす、長引かせる)
焦点が相手の心理ではなく、話や手続きそのものの長さにあります。じれったさは共通しますが、対象が時間である点が異なります。
Note|ツァイガルニク効果は普遍的な記憶法則なのか
じらされると、かえって続きを知りたくなることがあります。この感覚と、未完了課題の記憶に関する心理学研究は、区別して扱う必要があります。
ツァイガルニク効果は、途中で中断された課題のほうが完了した課題より記憶に残りやすい、という仮説として広く知られています。ブルーマ・ツァイガルニクの1927年の研究を起点に、多くの追試が行われてきました。
ただし、2025年に公表されたメタ分析は、未完了課題に一律の記憶優位があるという結果を支持しませんでした。効果は状況や個人差に左右され、普遍的な記憶法則とは言えない、という結論です。一方で、中断された課題を再開しようとする傾向には比較的安定した支持が見られました。
そのため、連続ドラマや見出しが注意を引く理由を、この効果だけで説明することはできません。keep someone in suspense の意味は、結果がわからないまま待つ不安や期待という日常語の suspense から理解するのが確実です。
研究上の仮説と、会話表現の意味を分けておくと、興味深い説明を過度な因果関係に変えずに済みます。
まとめ|宙吊りにする側と、される側
keep someone in suspense は、結論を渡さずに相手を待たせておくことを表す表現です。suspense という語が「吊るす」と同じ根を持つとおり、決着がつかないまま浮いている状態に置き続ける、という絵が芯にあります。
使えるようになると、話の続きを促す催促と、自分が結論を先に置く前置きの両方が、ひとつの表現でまかなえます。Don’t keep me in suspense. と Sorry to keep you in suspense. は、待つ側と待たせる側の言い分をそれぞれ引き受けてくれる言い回しです。会話のレパートリーに加えてみてください。
じらす側と待つ側の関係を、短く示せる表現です。


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