海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
正確な数字は分からない。かといって、まったくの当てずっぽうというわけでもない。そんな見当を人に伝えるとき、どんな前置きを置けばいいのか迷う場面があります。
その前置きにあたる「an educated guess」を、『メンタリスト』シーズン4第4話から、一件が落ち着いたあとの静かな場所で、ジェーンが上司に自分の読みの根拠を明かすシーンを通して、一緒に見ていきましょう。
「an educated guess」の意味とニュアンス
an educated guess
意味:根拠のある推測、当たりをつけた見当
guess は、確たる証拠がないまま出す答えを指します。そこに educated が付くと、その推測が知識や経験、観察に裏づけられていることを示せます。educated には学歴を表す意味だけでなく、訓練によって磨かれたという意味があり、an educated palate(鍛えられた味覚)などにも同じ働きが残っています。
この言い方の便利さは、二つのことを同時に伝えられる点にあります。ひとつは、確証はないという断り。もうひとつは、当てずっぽうではないという主張です。断定を避けながら、自分の見立ての精度は落とさない。責任の取り方として、ちょうどよい位置に置ける表現です。
対になるのは a wild guess です。こちらは根拠のない当てずっぽうを指し、Take a wild guess.(適当に当ててみて)のように使われます。二つを並べると、英語が推測を「当たるかどうか」ではなく「何に支えられているか」で分けていることが見えてきます。
【ここがポイント!】
- guess に educated が付くだけで、当てずっぽうから見立てへ変わる一言
- 確証はないという断りと、根拠はあるという主張を同時に伝えられる
- 対になる a wild guess とセットで覚えると、境目がはっきりする
『メンタリスト』S04E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
一件が落ち着いたあと、ジェーンと上司ウェインライトが二人きりで向き合います。ウェインライトは、自分が知らないうちに作戦の一部として使われていたことに気づいています。なぜ相手の行き先まで分かったのか。その問いへのジェーンの返しが、この表現です。
Wainwright: You, uh, set me up today. You knew I would be the stressor that pushed Tibbs over the edge.
(今日、私をはめたな。ティブスを追い詰める引き金が私だと分かっていたんだろう)Jane: Well, one can never really know these things. To be honest, I was rooting for you.
(いや、そういうことは誰にも分かりませんよ。正直に言うと、応援していました)Wainwright: Really?
(本当に?)Jane: Yes, I find your, uh, youthful brand of earnestness quite refreshing.
(ええ。あなたの若々しい実直さは、なかなか新鮮です)Wainwright: How did you know Tibbs was going to go to that garden?
(ティブスがあの庭に行くと、どうして分かった?)Jane: Educated guess. He had it circled in his calendar.
(根拠のある推測ですよ。カレンダーに丸が付いていましたからね)The Mentalist Season4 Episode4 (赤いバラの庭で)
シーン解説と心理考察
読み当てた本人が、その読みの正体を自分から明かす場面です。周囲には超能力めいて映っていたものが、実際にはカレンダーの書き込みひとつに支えられていた。答えの中身より、答え方のほうにこの人物の性格が表れています。
Educated guess. と言い切ってから根拠を続ける順序も見どころです。先に「推測にすぎない」と枠をはめ、そのあとで根拠を出す。断定していないという体裁を保ったまま、実際には確信していたことが伝わる。責任の置きどころを自分で選んでいる話し方と言えます。
直前に「そういうことは誰にも分かりません」と述べているのも同じ構えです。相手の追及を正面から受けず、確実性の話にずらして受け流している。飄々とした態度の下で、どこまで認めてどこから認めないかがきちんと線引きされている。その手つきが、短いやり取りの温度を決めています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
同じ「分かりません」でも、二人の答え方を並べてみてください。ひとりは目をつぶって、適当な方向を指さします。もうひとりは手元の資料に目を落とし、少し考えてから数字を口にします。後者が an educated guess です。
educated は「教育を受けた」。この表現では、推測そのものが学校へ通って知識を身につけた、という絵になります。当てずっぽうと同じ「分からない」から出発しているのに、通ってきた道が違う。だから同じ言葉に別の重みが乗ります。
ジェーンが挙げた根拠は、カレンダーに付いた丸ひとつでした。材料の量ではなく、材料の見つけ方で読みの質が決まる。この場面ごと覚えておくと、a wild guess との違いも一緒に定着します。
例文で覚える「an educated guess」
数字を尋ねられたときにも、見通しを述べるときにも使えます。3つの例文で見ていきましょう。
It’s an educated guess, but I’d say around three hundred people.
(根拠のある推測ですが、300人前後だと思います)
正確な数字がない場で人数を尋ねられた場面です。前置きとして先に置き、but のあとに見当を続ける並びが基本になります。
Based on last quarter, my educated guess is a five percent drop.
(前四半期から見て、私の見立てでは5パーセント減です)
根拠を示しながら見通しを述べる場面です。based on と組み合わせると、どこから導いた推測なのかがはっきりします。
A: Can you confirm that number?
B: Not officially. Call it an educated guess based on the logs.
(A:その数字は確定ですか)
(B:公式には出せません。ログから見当をつけた推測、ということにしてください)
確定値を求められて、そこまでは言えないと伝える場面です。call it 〜 を使うと、自分の発言の性質を自分で定義し直すことができます。
あわせて覚えたい関連表現
a hunch
(勘、直感)
根拠を説明できない直感を指します。an educated guess は根拠を示せる点が決定的に違い、二つを混同すると信頼度の伝わり方が変わってしまいます。
a wild guess
(当てずっぽう)
an educated guess のちょうど反対にあたる表現です。Take a wild guess. の形で相手に適当な答えを促すときによく使われます。
a ballpark figure
(おおよその数字、概算)
数値に限定された概算を指します。an educated guess は数値以外の予測にも使えるため、こちらのほうが守備範囲が広くなります。
Note|「分からない」を種類で言い分ける
日本語で答えをぼかすときは、「たぶん」「おそらく」「およそ」といった副詞で確からしさを調整することが多くなります。英語はここで、少し違う方法を取ります。推測そのものに名前を付けて、種類ごとに分けるのです。
a wild guess は、材料がほとんどないまま出す当てずっぽうです。a hunch は、本人には感覚的な確信があっても、その理由を十分に説明できない直感を指します。an educated guess は、知識や観察に支えられた推測です。一方、an estimate は量・費用・時間・価値などのおおよその数値を見積もる語で、使う対象が違います。estimate が常に educated guess より正確だという上下関係ではありません。
四つを並べると、分かれ目がはっきりします。基準になっているのは、当たる確率の高さではありません。何に支えられているか、そしてその支えを言葉で示せるかどうかです。同じ「分からない」でも、示せる材料の有無で語が変わる仕組みになっています。
ジェーンが Educated guess. と答えたのは、直感だけではなく観察できる根拠があったからです。ここで問われているのは場所の予測であり、量や費用の概算ではないため estimate より educated guess が自然です。
推測にも、種類を名乗る欄があるのかもしれません。
まとめ|当てずっぽうとの分かれ目
an educated guess は、知識や観察に支えられた推測を指す表現です。確証はないと認めながら、当てずっぽうではないと主張する。断定と沈黙のあいだに、もうひとつ選択肢を用意してくれる言い回しです。
数字を尋ねられたとき、見通しを求められたとき、この一言があれば、答えを避けずに済みます。分からないと言い切るのでもなく、確かなふりをするのでもない。自分の見立ての性質を、そのまま相手に手渡すことができます。
カレンダーの丸ひとつを根拠に言い当てた人物がいたように、推測の質を決めているのは、材料の量ではなく見つけ方なのかもしれません。


コメント