海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
連絡を取ろうとした相手が、電話にもメッセージにも反応せず、住んでいるはずの場所にもいない。そんな場面が、仕事でも私生活でも、ふいに訪れることがあります。
そんな状態を一言で言い表す「be in the wind」を、犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン4第11話から、CBIが容疑者候補の所在を確認する捜査会議のシーンを通して、一緒に見ていきましょう。
「be in the wind」の意味とニュアンス
be in the wind
意味:行方をくらませている / 足取りがつかめない
風に放たれたものは、どこへ飛んでいったかを追えません。落ちた場所も分からず、拾いに行くこともできない。その追跡できなさが、人の所在にそのまま重ねられた言い方です。
警察や司法の文脈で最もよく使われ、対象が意図的に姿を消しているという含みを伴うことが多い表現になります。単に不在なのではなく、見つけられないようにしている。そう読み取られる場面で選ばれます。
注意したいのは主語です。主語が人なら「姿を消している」ですが、主語が事柄に変わると意味も変わります。Something big is in the wind. なら「何か大きな動きがありそうだ」。風の中にあるものが人か出来事かで、絵が入れ替わる表現です。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは、風に飛ばされたものは追えないという追跡不能の感覚
- 単なる不在ではなく、本人が姿を消している含みを伴う一言
- 主語が人か事柄かで意味が変わるので、そこを先に見るのがコツ
『メンタリスト』S04E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者が違法ポーカーで大金を勝った相手が、地元の顔役ブロック・マークスだと判明します。前科の重さを確認したリズボンが連行を指示したその直後、チョウが短く事実だけを返します。捜査の筋が一本通りかけたところで、その先が途切れる場面です。
Lisbon: A mobbed-up guy like this could leave a pig’s head outside somebody’s door. Go pick him up.
(こういう筋の男なら、玄関先に豚の頭を置くくらいやるわね。連行して)Cho: He’s in the wind. Parole officer hasn’t heard from him in weeks.
(行方をくらませています。保護観察官も数週間、連絡が取れていません)Lisbon: Crap.
(最悪ね)Rigsby: And we think we can find him at this gambling club, but S.F.P.D. is planning on busting the place next week, asked us to go in quiet.
(賭博クラブになら現れそうです。ただ市警が来週その店を摘発する予定で、静かに入ってくれと)Lisbon: How quiet?
(どのくらい静かに?)The Mentalist Season4 Episode11(Always Bet on Red)
シーン解説と心理考察
チョウの返答には、余計な言葉がひとつもありません。所在不明という事実と、その根拠になる保護観察官の状況。この二つを置いただけで報告が終わっています。感情を差し挟まない話し方が、この人物の輪郭として響きます。
対照的なのがリズボンの一語です。指示を出した直後に前提が崩れたことへの落胆が、たった一語に集約されています。長く嘆かず、次の言葉を待つ姿勢に、現場を回してきた人間の呼吸が表れています。
そしてリグスビーが、間を置かずに代替案を差し出します。行き詰まりが報告されてから次の手が出るまで、わずか数秒。この切り替えの速さが、チームの空気をつくっています。捜査の壁が、そのまま次の展開の入口になっている場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
強い風の日に、手から離れた紙が飛んでいく場面を思い浮かべてください。目で追えるのは最初の数メートルだけです。あとは方向も分からず、落ちた場所も見当がつきません。
追いかけようがない、というこの感覚が表現の中心にあります。姿がないのではなく、探す手がかりがない。in the wind の in は、その追えない空間の中に入ってしまったことを指しています。
「連行して」という指示のすぐ後に、この一言が置かれた場面を思い出してみてください。命令が空を切った瞬間の手応えのなさが、そのままフレーズの手触りになっています。
例文で覚える「be in the wind」
姿を消した相手について報告する場面で、この表現は出てきます。3つの例文で使いどころを見ていきましょう。
By the time the warrant came through, he was in the wind.
(令状が下りたころには、彼はもう姿を消していた)
手続きを待っているあいだに逃げられた、という語り方です。時間差を示す by the time と組み合わせるのが、捜査ものの定番の形になります。
Two of our witnesses are in the wind, and the trial starts Monday.
(証人のうち二人が行方不明で、公判は月曜から始まる)
法務の現場で状況を共有する場面です。主語が複数になっても形は変わらず、そのまま使えます。
A: Have you heard from Danny lately?
B: No, he’s been in the wind since he quit.
(A:最近ダニーから連絡ある?)
(B:ないよ。辞めてからずっと音沙汰なし)
友人同士の会話に転用した例です。犯罪性はなく、単に連絡が取れないという軽い意味で使われています。
あわせて覚えたい関連表現
on the run
(逃走中である)
追われて逃げ回っているという動きに焦点があります。be in the wind は追う側から見た痕跡のなさを指すので、どちらの側から見た言葉かが違います。
at large
(拘束されずにいる)
報道や公文書で使われる硬い言い方です。be in the wind は捜査員同士の会話に向く口語で、記者会見の場では at large が選ばれます。
go to ground
(身を潜める)
イギリス英語で使われることが多く、隠れ場所にもぐり込む絵を含みます。be in the wind は隠れ先を想定せず、足取りが消えた状態だけを指します。
Note|捜査ものが繰り返し使う「消えた」の一言
アメリカの刑事ドラマを続けて観ていると、ほぼ毎話のように現れる場面があります。容疑者を押さえに行こうとした瞬間、部下が「所在不明です」と告げる、あの数秒です。
面白いのは、この場面で選ばれる語がかなり限られていて、しかも話し手の立場によって使い分けられていることです。捜査員同士の口頭報告なら in the wind。記者会見や公式発表なら at large。追跡中で逃走の動きが確認されていれば on the run。同じ状況を指していても、誰が誰に向かって話しているかで語が入れ替わります。
この使い分けは、それぞれの語が背負っている場所と関係しています。at large は法律文書に由来する硬さを保ったままで、雑談には重すぎる。in the wind は口語で、現場の温度に合う。on the run は動きを含むため、まだ動線が追えている段階に向く。語の出身地が、そのまま使われる場面を決めているわけです。
この型を知っておくと、字幕なしで観ているときの助けになります。in the wind が出た瞬間、その場面は行き詰まりの報告であり、直後に代替案が出てくる可能性が高い。実際このエピソードでも、その通りに話が動きます。
一語の選び方が、次の展開まで教えてくれることがあります。
まとめ|追えなくなった、という報告のかたち
be in the wind は、対象が見つからないという状態を、追う側の視点から言い表す表現です。姿がないことではなく、探す手がかりが残っていないことを指しているため、捜査や追跡の文脈でよくなじみます。
日常の会話でも、連絡が取れなくなった相手について軽く使うことができます。その場合は深刻さが薄れ、「あの人、最近まったく音沙汰がない」といった温度になります。
風の中にあるのが人なら消息、事柄なら気配。同じ形が指す先を主語で見分ける表現と言えます。


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