海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
片づいたはずの出来事が、時間を置いて別のかたちで戻ってくる。そんな瞬間が、ドラマには時々あります。
そこで口にされる「the gift that keeps on giving」を、犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン4第11話から、前の事件の余波を知らせる報せを受けたジェーンがリズボンに告げるシーンを通して、一緒に見ていきましょう。
「the gift that keeps on giving」の意味とニュアンス
the gift that keeps on giving
意味:次から次へと厄介を生み続けるもの / 長く恩恵が続くもの
直訳すれば「与え続ける贈り物」です。もとは通信販売や贈答品の宣伝文句として広まった言い方で、一度贈れば長く喜んでもらえる、という肯定的な意味で使われていました。
現在は皮肉での使用が優勢です。一度きりで終わってほしい厄介ごとが、いつまでも影響を出し続ける。その疲れや呆れを、褒め言葉の形を借りて表します。形は同じで、中身だけが入れ替わっているわけです。
肯定用法も消えたわけではありません。長く役立つ道具や、価値が続いた人脈を紹介するときには、文字どおりの意味で使われます。対象が歓迎されているものかどうかと、話し手の口調で判断します。
【ここがポイント!】
- もとは広告の売り文句で、褒め言葉として生まれた言い回し
- 現在は皮肉で使われることが多く、話し手の呆れがにじむ一言
- 肯定用法も残っているので、対象と口調から向きを読むのがコツ
『メンタリスト』S04E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
CBIに新たな一報が入ります。事情を尋ねたリズボンに、ジェーンはまずダーシー捜査官の無事を伝えたうえで、一語を足しました。前の事件で自分が取った行動が、時間差で別の人物に及んでいることを、彼自身が理解している場面です。
Lisbon: What is it? What happened?
(どうしたの? 何があったの?)Jane: Darcy’s okay. It’s not her. Not directly anyway. Panzer — the gift that keeps on giving.
(ダーシーは無事だ。彼女じゃない。少なくとも直接には。パンザーめ、次から次へと置き土産を寄こす)Jane: Do you remember Tom Maier? He was the father of Panzer’s first victim?
(トム・マイヤーを覚えているか? パンザーの最初の被害者の父親だ)Lisbon: Sure. Nice man.
(ええ。いい人だった)The Mentalist Season4 Episode11(Always Bet on Red)
シーン解説と心理考察
注目したいのは、Not directly anyway という補足です。無事だと伝えた直後にこの一語を足すことで、無関係ではないという事実が言外に置かれます。安心させながら、同時に責任の所在をほのめかす言い方が表れています。
続く皮肉が、その居心地の悪さを引き受けています。本来は贈り物を褒める言葉を、最悪の連鎖に当てはめる。自分の行為の結果を、他人事のような語彙で包むことで、直接的な自責の表明を避けているという空気があります。
そして彼は、感情が乗りかけたところで話題を具体的な人物へ移します。名前を出し、関係を説明し、事実の側へ戻っていく。処理しきれないものを一度脇に置く動きが、この短いやり取りに重なっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
毎月何かが届く定期便を思い浮かべてください。広告なら「一度の贈り物で、一年ずっと喜んでもらえます」という売り文句になります。届き続けることが、そのまま価値になっている仕組みです。
ところが、届くものが請求書や苦情だったらどうでしょう。形はまったく同じで、中身だけが入れ替わります。この入れ替えが、そのまま皮肉用法の正体です。
このエピソードでは、すでにいない人物の名前に添えてこの一言が置かれます。贈り主はもういないのに、荷物だけが今日も届く。その絵で覚えておくと、皮肉の側の使い方が体に残ります。
例文で覚える「the gift that keeps on giving」
一度で終わってほしいものが、いつまでも尾を引く。そんなときに顔を出す表現です。3つの例文で使いどころを見ていきましょう。
That one typo in the contract has been the gift that keeps on giving.
(契約書のあの誤字ひとつが、いまだに厄介を生み続けている)
過去のミスの後始末を同僚と嘆く場面です。小さな原因と長く続く影響の落差があるほど、皮肉が効いてきます。
Honestly, that cookbook you gave me has been the gift that keeps on giving.
(正直に言うと、もらったあの料理本はずっと重宝しています)
贈り物の礼を後日あらためて伝える場面です。対象が歓迎されているものなので、こちらは文字どおりの肯定用法になります。
A: Are you still dealing with the data breach?
B: Oh yeah. It’s the gift that keeps on giving.
(A:例の情報漏洩、まだ対応してるの?)
(B:そうなんだよ。いつまでたっても終わらない)
社内の雑談で近況を返す場面です。短い返しに疲れを込められるので、会話の中でよく使われます。
あわせて覚えたい関連表現
a mixed blessing
(良い面と悪い面が同居しているもの)
利点と欠点が並んでいる状態を指します。the gift that keeps on giving の皮肉用法には利点が想定されておらず、悪影響の継続だけを言う点が違います。
open a can of worms
(厄介ごとの入り口を開けてしまう)
問題が始まる瞬間に焦点があります。こちらは始まったあと影響が続いている段階を指すので、話している時点が異なります。
come back to haunt someone
(あとになって〜を苦しめる)
過去の行いが本人に返ってくるという因果を含みます。the gift that keeps on giving は返る先が本人とは限らず、皮肉の分だけ距離が置かれています。
Note|広告のうたい文句が、皮肉の道具になるまで
この言い回しは、もともと売る側の言葉でした。一度買えば長く喜んでもらえる、という贈答品の宣伝文句として広まり、20世紀の英語圏で誰もが耳にする売り文句になっていきます。
そこから皮肉へ反転できたのは、聞き覚えがあったからです。元の文句を知っている人にとって、それが最悪の状況に当てはめられた瞬間、落差が意味になります。反転が成立するには、まず全員が原型を共有していなければならない。広告が繰り返し流れたことが、皮肉の土台をつくったわけです。
似た経路をたどった表現は他にもあります。標語やスローガンが日常語に流れ込み、やがて元の調子ごと茶化されるかたちで定着していく。売り文句が長く流通するほど、それを裏返す言い方も生まれやすくなります。
日本語にも、丁寧な言い回しを借りた皮肉はあります。ただし広告文句をそのまま引用する形は多くありません。どこから語を借りてくるかという点で、皮肉の作り方には言語ごとの癖があります。
ジェーンがこの言葉を選んだのも、その落差を使うためでした。褒め言葉の形を借りることで、自分の関与を直接口に出さずに済ませています。
売り文句だったものが、いまは苦さを運んでいます。
まとめ|届き続けるものの、中身が変わるとき
the gift that keeps on giving は、影響が続いていることを、贈り物の比喩で言い表す表現です。もとは肯定の言い回しでしたが、現在は皮肉で使われることが多く、話し手の疲れや呆れがにじみます。
会話で聞いたときは、対象が歓迎されているものかどうかを先に見ると、向きを取り違えません。料理本や人脈なら肯定、誤字や事故なら皮肉。判断材料は口調よりも、まず対象の側にあります。
すでにいない人物の名前に添えられたこの一言が、事件の後始末の重さを一手に引き受けていた場面でした。


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