海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
引っ越しの前に不要な箱を片づける、長年の習慣を断ち切る、面倒な相手を遠ざける。まったく別のことのようでいて、どれも「自分の周りから消す」という一点でつながっている場面があります。
その全部を引き受ける「get rid of」を、『メンタリスト』シーズン4第19話の終盤、事件のあらましが明らかになったあとの取り調べ室のシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get rid of」の意味とニュアンス
get rid of
意味:邪魔なものを取り除く、処分する、厄介払いする
rid は「取り除く」を表す古くからの動詞です。be rid of で「〜から解放されている」という状態を表し、そこに get が加わると、その状態を新たに手に入れるという動きになります。片づいていない状態から、片づいた状態へ移る。その移り変わりを一語でまとめたのがこの表現です。
対象は驚くほど幅広く取れます。物であれば処分、習慣であれば断ち切ること、人であれば追い出すか遠ざけること。共通しているのは「あってほしくないものを自分の周りから消す」という一点だけで、深刻さは対象によって大きく変わります。
この幅の広さが、使うときの注意点でもあります。箱に使えば無害な片づけですが、人に使えば冷たさが際立ちます。公式な文書で人事について語るときにこの表現が避けられるのは、そのためです。
なお過去形も過去分詞も rid のまま変化しません。got rid of、have got rid of と、形をそのまま覚えてしまうのが早道です。
【ここがポイント!】
- 中心にあるのは、あってほしくないものを自分の周りから消すという一点
- 物・習慣・人と対象を選ばない一方、対象しだいで温度が大きく変わる表現
- 人に使うと冷たく響くので、公式な場面では別の語に置き換えるのが安全
『メンタリスト』S04E19のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事件の全体像が明らかになったあと、ヴァン・ペルトが取り調べ室で経緯を確認していく場面です。誘拐された女性を連れてきた人物が、その後どうなったのか。核心には触れずに言えば、ここで確認されているのは共犯者同士の関係の終わり方です。捜査員がどの動詞を選んだかに注目です。
Van Pelt: Why did he kill the roommate?
(なぜ彼はルームメイトを殺したんですか)Trish: She was in the trailer, saw him. Bad luck for her.
(トレーラーにいて、彼を見てしまったのよ。運が悪かったわね)Van Pelt: Once he brought you Holly, you got rid of him.
(彼がホリーを連れてきた時点で、あなたは彼を始末した)Trish: I couldn’t trust him.
(信用できなかったの)The Mentalist Season4 Episode19 (Pink Champagne on Ice)
シーン解説と心理考察
ヴァン・ペルトが選んだ語が kill でも murder でもないところに、この短いやり取りの意味があります。get rid of は、片づけや処分に使う日常の言い方です。それを人に向けて使うことで、相手が共犯者をどう扱っていたかという認識の枠組みごと、言葉に写しています。
指摘された側がそれを訂正しないことも重要です。人を殺したのではない、始末したのだ。その言い方を受け入れた形で「信用できなかった」と返すことで、その枠組みが自分のものだったことが確認されます。会話の温度を決めているのは、この訂正のなさです。
直前の「運が悪かった」という一言も同じ方向を向いています。起きたことを不運として片づけ、自分の関与を薄めていく。責める言葉を使わずに相手の輪郭を描き出す取り調べの運びが、この場面には表れています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
部屋の隅に積み上がった箱を、一つずつ外に運び出す場面を思い浮かべてみてください。全部運び終えたとき、そこには空いた床が見えています。get rid of が指しているのは、箱を捨てる行為そのものではなく、この「空いた床が見える状態になる」という変化のほうです。
だから、捨てても売っても譲っても構いません。結果として自分の周りからなくなっていれば、どの方法でもこの表現が使えます。手段を問わない広さが、この語の便利さです。
そして同じ動詞が、人にも使えてしまいます。劇中でこの語が共犯者を指して使われたとき、聞き手が受け取るのは、その人物が箱と同じ扱いをされていたという事実です。片づけの言葉と人の言葉が地続きであること。その落差ごと覚えておくと、使いどころを誤りません。
例文で覚える「get rid of」
対象しだいで温度が変わる表現です。三つの場面で、その振れ幅を見てみましょう。
I need to get rid of these old boxes before we move.
(引っ越す前に、この古い箱を処分しないと)
片づけの計画を家族に話す場面です。物が対象なら深刻さはまったくなく、最も基本的な使い方になります。
It took me two years to get rid of that habit.
(その習慣を断つのに2年かかりました)
生活の改善を振り返って語る場面です。習慣が対象になると、意志の力で少しずつ消していったという含みが出ます。
A: Did you talk to the new vendor?
B: I did, but I couldn’t get rid of him. He stayed for two hours.
(A:新しい業者とは話した?)
(B:話したけど、帰ってくれなくてね。2時間いたよ)
しつこい相手について同僚とこぼす場面です。人が対象でも、この程度の軽さなら日常会話として自然に収まります。
あわせて覚えたい関連表現
throw away
(捨てる)
物理的に捨てる行為そのものを指します。売る・譲る・追い出すといった別の手段も含む今回のフレーズに比べ、方法が一つに限られます。
dispose of
(処分する)
書き言葉や公式文書で選ばれる硬い言い方です。手続きにのっとった処分を指し、今回のフレーズが持つ日常の手触りや感情の色はありません。
eliminate
(排除する、除去する)
体系や工程から取り除くという専門性の高い語です。日常の片づけには重すぎるため、対象の広さでは並びません。
Note|「片づける」を四段階で言い分ける
日本語の「処分する」は、かなりの範囲を一語で引き受けます。不要品も、データも、場合によっては人事も。英語はこれを四つ前後に分けており、どれを選ぶかで話し手の距離の取り方が変わります。
いちばん狭いのが throw away です。物を捨てる行為そのものを指すため、習慣や問題には使えません。次に広いのが get rid of で、対象を選ばないかわりに、手段も問いません。捨てても売っても譲っても、なくなっていればこの語が使えます。
dispose of は硬さの軸で分かれます。意味の範囲は get rid of と重なりますが、選ばれる場面が違う。廃棄物処理の規定や契約書に現れる語で、話し手の感情はほぼ入りません。そして eliminate は、体系から取り除くという専門的な語です。工程管理や統計、あるいは競技の敗退に使われ、家の片づけには重すぎます。
整理すると、対象の広さでは throw away が最も狭く get rid of が最も広い、場面の硬さでは get rid of が最もやわらかく dispose of と eliminate が硬い、という二軸になります。劇中で捜査員が get rid of を選んだのは、この語がいちばん日常に近いからにほかなりません。日常の言葉で人について語られたとき、その落差が意味を運びます。
どの語を選ぶかは、対象ではなく話し手の側を映します。
まとめ|片づけの言葉が、人に向いた瞬間
get rid of が表しているのは、あってほしくないものが自分の周りからなくなるという変化です。捨てるのか、譲るのか、遠ざけるのか。手段は問われず、結果だけが問われます。
この一語を押さえておくと、片づけの話から人間関係の愚痴まで、幅の広い場面をひとつの形でまかなえます。同時に、人に向けたときの冷たさも一緒に覚えておくと、使い分けの目安になります。
箱を運び出すのと同じ動詞で人について語られる。その静けさが残る場面でした。


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