海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
言ったことをきちんとやり切る人と、言うだけで終わってしまう人がいます。その差を英語ではどう言い表すのだろうと考えたとき、ちょうどよい表現が思い浮かばなかった経験はありませんか。
そんなときに使える「make good on」を、『メンタリスト』シーズン4第23話の中盤、被害者の勤務先の代表が、警察に伏せていた事実についてチョウに説明するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「make good on」の意味とニュアンス
make good on
意味:約束したことを実行する、生じた損失を埋め合わせる
言葉と実行のあいだに空いた差を、行動で埋める。それが make good on の中心にある動きです。何を埋めるかは、後ろに置く名詞が決めます。
promise や pledge が続けば有言実行、debt や losses が続けば弁済、threat が続けば「脅しを実際にやる」という意味になります。good という語が入っていても、内容が良いとは限らないところが学習者のつまずきどころです。ここでの good は「良い」ではなく、帳尻が合っている、有効である、という側の使われ方だとされています。
共通しているのは、口先だけで終わっていた状態に決着をつける感覚です。決算説明のような硬い場面でも、貸し借りの精算のような日常の場面でも、同じ形のまま使えます。使う相手や場面を選ばずに済む、扱いやすい表現です。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは、言葉と実行のあいだに空いた差を埋める動き
- 後ろの名詞しだいで、約束の履行にも損失の弁済にも脅しの実行にもなる
- good があっても中身が良いとは限らない。内容は後続の名詞で読むのがコツ
『メンタリスト』S04E23のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者が勤めていた金融会社が、失踪後に発覚した社内の不正を警察に伝えていなかったと分かる場面です。会社側は損失を自社で処理し、事件そのものを外に出さずに収めていました。責める側のチョウと、それを経営判断として説明しようとする代表。両者が使う言葉の長さの違いに注目です。
Cho: This wasn’t in the S.F.P.D. files. Did you tell them?
(これはサクラメント市警の資料になかった。伝えたんですか)Dennis: No, they didn’t ask, and we didn’t discover the theft until after they had interviewed us.
(いいえ。聞かれませんでしたし、発覚したのは聴取のあとでした)Cho: You could’ve picked up the phone.
(電話一本かければよかった)Dennis: Agent, because we discovered the theft internally, we were able to make good on our customers’ losses. They don’t even know they were robbed. That cost my firm a great deal of money, but it saved us major embarrassment.
(捜査官、社内で発見できたからこそ、顧客の損失を埋め合わせられたんです。顧客は被害に遭ったことすら知りません。会社は多額を負担しましたが、大きな醜聞は避けられた)Cho: It was evidence in a homicide.
(それは殺人事件の証拠でした)The Mentalist Season4 Episode23 (Red Rover, Red Rover)
シーン解説と心理考察
会社代表の説明は、罪悪感ではなく順序で組み立てられています。社内で見つけた、だから補填できた、だから顧客は知らない。理由を重ねていくことで、隠したのではなく処理したのだ、という筋道へ話を移していきます。
make good on はその筋道の要に置かれています。埋め合わせは済んでいると言えれば、あとは手続きの問題だけが残る。会社が負担した金額まで持ち出すのは、責任を果たした証拠として数字を見せるためだと言えます。
対するチョウの返しは一行だけです。It was evidence in a homicide. と事実を置き直し、会社側が組み立てた筋道の外へ話を戻します。長い説明と短い一行が並ぶことで、金銭では埋められないものが一つ残っている構図が浮かび上がります。何が埋まって、何が埋まっていないのか。その線引きがこの場面の見どころです。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
帳簿に空いた穴を思い浮かべてみてください。金額だけが書かれていて、現金が入っていない。数字の上では成立しているのに、実体が伴っていない状態です。
make good on は、その穴に実際のものを入れて差し引きをゼロに戻す作業を指します。約束なら実行を、損失なら金を。何を入れるかは後ろの名詞が決めます。
劇中の会社は、顧客の帳簿に空いた穴をきれいに埋めました。それでも埋まらなかった穴が一つ残っている、という形でこの場面ごと覚えておくと、good が「良い」ではないことも一緒に頭に残ります。
例文で覚える「make good on」
後ろに何を置くかで、果たす中身がそのまま入れ替わる表現です。三つの場面で、その振れ幅を見てみましょう。
The company made good on its promise to refund every customer.
(その会社は全顧客に返金するという約束を果たした)
企業の対応を社内で共有する場面です。promise と組み合わせる形が最も基本で、言葉どおりに実行されたという評価がそのまま伝わります。
He finally made good on his threat and took them to court.
(彼はついに脅しを実行に移し、法廷に持ち込んだ)
こじれた争いの経過を人に話す場面です。threat を置くと内容は物騒になりますが、言葉と実行の差を埋めたという構造は変わりません。
A: Did they ever pay you back for the damage?
B: They did. They made good on it within two weeks.
(A:損害の分、結局払ってもらえたの?)
(B:うん。二週間以内に埋め合わせてくれた)
支払いが済んだかどうかを確認し合う場面です。pay back より、責任として片をつけたという含みが前に出ます。
あわせて覚えたい関連表現
follow through on
(最後までやり通す)
途中で投げ出さずに完遂する過程に焦点があります。make good on が結果として帳尻が合ったかを見るのに対し、こちらは続けられたかどうかを見ています。
deliver on
(期待に応える、成果を出す)
公約や目標など、期待されている成果が対象です。負債や損失の穴埋めには使いにくく、make good on とは目的語の取り方が分かれます。
honor
(約束や契約を守る)
契約や信義を重んじる硬い語で、書面のある取り決めによく使われます。日常の貸し借りにも降りてくる make good on より、出番の場面が限られます。
Note|同じ形で、決算説明にも貸し借りにも使える
英語には、硬い場面と柔らかい場面で言い換えが必要な表現が少なくありません。その中で make good on は、企業の公式発表から友人同士の精算まで、同じ形のまま使えます。
使われる場面を並べると、この幅がどこから来ているのかが見えてきます。決算説明や報道では made good on its commitments のように、約束された内容が実行されたかどうかの評価語として現れます。保険や補償の説明では made good on the damages と、金銭の穴埋めを指します。日常会話では、I’ll make good on what I owe you.(借りている分は必ず返す)のように、貸し借りの精算にそのまま降りてきます。
三つの場面に共通しているのは、言葉と実行の差を埋めた、という一点だけです。埋める対象が公約なのか保険金なのか数千円なのかは、後ろの名詞が引き受けます。動詞句そのものは重さも軽さも持たないため、場面が変わっても浮きません。硬さを担うのは honor や fulfill、柔らかさを担うのは pay back。make good on はその中間に立ち、どちらへも寄れる位置にあります。
劇中でこの語が選ばれたのも、その中立さゆえだと言えます。補填したという事実だけを、謝罪も開き直りも乗せずに置ける。だからこそ、返ってきた一行が際立ちます。
言い訳にも誠実さにも使える、扱い方しだいの一言です。
まとめ|埋められる穴と、埋められない穴
make good on が表しているのは、言葉が先に出て実行が追いついていない状態に、決着をつける動きです。約束でも損失でも脅しでも、後ろの名詞が変わるだけで構造は同じだと言えます。
この一言を持っていると、「ちゃんとやった」を場面ごとに言い換える手間がなくなります。返金も、公約の実現も、借りたお金の精算も、同じ形で表せます。
劇中では、埋め合わせが済んだという主張のあとに、埋めようのないものが残りました。この対比ごと、表現の引き出しに加えてみてください。


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