海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
人には言いにくい映画やお菓子や番組が、ひとつやふたつはある。誰かに見つかると、つい「たまたま見ていただけ」と言い訳したくなる、そんな瞬間があります。
くだらないと分かっていながらやめられない楽しみを指す「a guilty pleasure」を、『メンタリスト』シーズン5第20話の序盤、恋愛相談ラジオの熱心な聴取者であることをジェーンに見抜かれてしまうリズボンのシーンから、一緒に見ていきましょう。
「a guilty pleasure」の意味とニュアンス
a guilty pleasure
意味:くだらない、あるいは人には言いにくいと思いながら、つい楽しんでしまうもの
guilty は「罪悪感のある」、pleasure は「楽しみ」です。二つが並ぶことで、後ろめたさと楽しさが同居している状態そのものを、ひとつの名詞として名指します。
指す対象は幅広く、恋愛リアリティ番組、古いヒット曲、深夜のスナック菓子、通販番組など、質の高さでは説明できないのに手が伸びてしまうものが典型です。ここでの罪悪感は道徳的な悪さではなく、「趣味として褒められたものではない」という程度の軽い気恥ずかしさにとどまります。
名詞句なので、My guilty pleasure is … や It’s a guilty pleasure of mine. のように主語や補語に置きます。複数形にして everyone has their guilty pleasures と言えば、誰にでもあるものだと相手を許す響きになります。
自分について言えば自己申告の照れになり、相手について言えばからかい混じりの許しになる。同じ形のまま立ち位置が変わるところも、この表現の特徴です。
【ここがポイント!】
- 後ろめたさと楽しさが同居した状態を、まるごと名詞にしてしまう一言
- 罪悪感といっても道徳の話ではなく、趣味として褒められない程度の軽さ
- 相手に向けると、からかいと許しが同時に伝わるのがおもしろいところ
『メンタリスト』S05E20のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者夫婦が恋愛相談ラジオ番組に出演していたことが分かり、ジェーンとリズボンは司会者のバディ・ヘニングスを訪ねることになります。ところがリズボンは、番組名も司会者の名前も、聞かれる前からすらすらと口にしていました。しかも現場の聞き込みを部下に任せてまで、自分がラジオ局に行くと言い出します。ジェーンがその不自然さを見逃すはずもありません。
Lisbon: Van Pelt and Rigsby can handle that. I’ll go to the radio station with you.
(ヴァン・ペルトとリグスビーに任せるわ。ラジオ局は私が一緒に行く)Jane: Ahh… that’s ‘cause you’re a fan.
(ああ……番組のファンなんだね)Lisbon: I am not! Look, I just think he’s a viable lead.
(違うわよ! ただ、有力な手がかりだと思っただけ)Jane: It’s all right, Lisbon. We all have our guilty pleasures.
(いいんだよ、リズボン。後ろめたい楽しみは誰にでもあるものだから)The Mentalist Season5 Episode20 (Red Velvet Cupcakes)
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シーン解説と心理考察
リズボンの否定の速さに、この一言の効きめが表れています。I am not! と反射的に返し、そのあとで「有力な手がかりだ」と職業上の理由を足す。順番が逆になっているところに、本音の在りかがのぞきます。
ジェーンの側は、指摘してから逃げ道を用意するという運びを取っています。you’re a fan で追い込んでおきながら、We all have our guilty pleasures. で全員を同じ側に引き入れる。責める言葉ではなく許す言葉で締めるところに、この人物の会話の作り方がにじみます。
そして guilty pleasure という語が選ばれたことで、リズボンの趣味は「隠すほどのことではないが、隠したくなるもの」として位置づけられました。理詰めで生きている捜査官が、恋愛相談番組を車の中でこっそり聴いている。その落差が、以降のラジオ局の場面すべてに軽い可笑しみを添えています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
片手にリモコン、片手にお菓子。部屋のドアが開いた瞬間に、慌ててチャンネルを変える。その一瞬の動きを思い浮かべてみてください。
慌てて隠すけれど、実際には誰も咎めていない。この「隠す動作と、隠すほどでもない中身」のずれが、guilty pleasure という言葉のかたちそのものです。
このシーンのリズボンも、まったく同じ動きをしています。指摘された瞬間に否定して、理屈で上書きしようとする。あの反射のスピードごと覚えておくと、guilty がどれくらいの重さの罪悪感なのかまで、感覚で残ります。
例文で覚える「a guilty pleasure」
名詞句なので、そのまま主語や補語に置けます。三つの場面で、後ろめたさの向け先の違いを見てみましょう。
Reality TV is my guilty pleasure.
(リアリティ番組が、私のやめられない楽しみです)
自己紹介や雑談で好きなものを打ち明ける場面です。先に guilty と断ることで、趣味を語る照れをやわらげられます。
These cookies are a total guilty pleasure.
(このクッキー、後ろめたいけど止まらないんですよ)
差し入れのお菓子を前にした職場での会話です。total を足すと、開き直りに近い軽さが出ます。
A: You still listen to that podcast?
B: It’s a guilty pleasure. Don’t judge me.
(A:まだあのポッドキャスト聴いてるの?)
(B:後ろめたい楽しみなんだよ。責めないで)
友人にからかわれて素直に認めてしまう場面です。Don’t judge me. を添えると、認めながら守るという構図がはっきりします。
あわせて覚えたい関連表現
a soft spot for
(〜に目がない、つい甘くなる)
好きなものを打ち明ける点は共通しますが、後ろめたさは含みません。guilty pleasure が言い訳を伴うのに対し、こちらは素直な愛着を表します。
an acquired taste
(慣れないと良さが分からないもの)
評価が分かれるものを指す点で近い表現です。ただし向きが逆で、guilty pleasure は自分の側に非があり、acquired taste は相手の慣れの問題として扱います。
indulge in
(〜にふける、思い切り楽しむ)
guilty pleasure を動詞の側から言い表した形です。控えるべきものをあえて味わう、という含みが共通しています。
Note|「後ろめたい楽しみ」に一語をあてる英語
guilty pleasure を日本語にしようとすると、途端に説明が長くなります。「くだらないと分かっているのにやめられない楽しみ」。訳としては正しいのですが、これは定義であって、名前ではありません。
日本語にも近い言い方はあります。ただ「悪趣味」は評価が厳しすぎ、「趣味が悪い」は他人が下す判定です。近年広まった「ギルティ」というカタカナは、夜食や甘いものに向けられることが多く、対象が食べ物へ偏っています。つまり日本語側には、後ろめたさと楽しさが同居した状態そのものを、価値判断を下さずに名指す一語が用意されていません。
英語がこの語を持てたのは、guilty が法的な有罪から離れて、日常の軽い自責までを広く担ってきたからです。feel guilty about skipping the gym(ジムをさぼって後ろめたい)のように、罪の重さと無関係に使えます。この軽さがあるからこそ、pleasure と並べても告白めいた重さにならず、雑談の話題として成立します。
さらにこの語は、相手にも使えます。everyone has their guilty pleasures と言えば、後ろめたさを共有物として扱い、責めるかわりに許す働きをします。個人の趣味を、集団で笑って引き受ける装置になっているわけです。
ジェーンがリズボンに向けたのも、まさにこの働きでした。ファンであることを言い当てておきながら、guilty pleasure という枠に入れた瞬間、それは弱みではなく誰にでもあるものへ変わります。日本語で同じことをしようとすると、一度説明を挟まなければなりません。
名前がついている感情は、それだけで少し扱いやすくなります。
まとめ|隠すほどではない、けれど隠したくなるもの
a guilty pleasure が名指しているのは、対象そのものではなく、後ろめたさと楽しさが同居した状態です。中身が何であるかは問題になりません。隠したくなる気持ちのほうに名前がついている、という構造の言葉です。
この一言があると、好きなものの打ち明け方が変わります。先に guilty と置いてしまえば、趣味の良し悪しをめぐる話を避けて、楽しんでいる事実だけを差し出せます。相手に向ければ、からかいと許しを同時に渡せます。
誰にでもひとつはある後ろめたい楽しみを、笑って認められる言葉なのですね。


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