海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
追いかけていた相手が、ようやく手の届く位置まで来た。そんな瞬間が、仕事でも捜査でも訪れる場面があります。
その状態を言い表す「have someone in one’s sights」を、『メンタリスト』シーズン6第2話の序盤、CBI長官バートラムがジェーンを呼び止め、単独行動をしないよう釘を刺すシーンから、一緒に見ていきましょう。
「have someone in one’s sights」の意味とニュアンス
have someone in one’s sights
意味:〜を標的として捉えている、射程に入れている
sights は視界のことではなく、銃に取り付けられた照準装置を指します。標的がその照準の中に収まっている、つまりいつでも撃てる位置まで追い詰めている、という状態を表す表現です。
単に注目している、気にかけているという段階ではありません。相手の居場所や動きを把握し、決着をつけられるところまで来ている、という含みがあります。そのため捜査や訴追、企業買収、競争相手との争いなど、「仕留める」構図がある文脈で選ばれます。
人以外にも使えます。狙っている取引先、達成しようとしている記録、獲得したいポストなど、追いかける対象であれば同じ形が成立します。この場合は敵意の含みが消え、強い目標意識を表す言い方になります。
注意したいのは単数形との違いです。in one’s sight は「視界に入っている」、in one’s sights は「照準に捉えている」。s がひとつあるかないかで、見えているだけなのか狙っているのかが分かれます。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは照準器の十字にぴたりと収まった標的の像
- 注目しているのではなく、仕留められる位置まで来ているという一言
- 単数 sight と複数 sights で意味が変わるので、s を落とさないのがコツ
『メンタリスト』S06E02のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
リズボンが事件現場に居合わせた理由を、バートラムがジェーンに問いただしています。通報には彼女が向かうような要素はなかったはずで、長官は説明を求めます。はぐらかすジェーンに対し、秘密主義を容認する限界を示す言葉として、この表現が出てきます。
Bertram: So… why did Lisbon go there?
(では、なぜリズボンはあそこへ行ったんだ?)Jane: Don’t know. Following a hunch, I guess.
(さあ。勘に従ったんじゃないですかね)Bertram: Jane, I-I understand your appetite for secrecy. I’m even willing to tolerate it… within limits. But I’m telling you again. If you have Red John in your sights, I will be there. Clear?
(ジェーン、君が秘密を好むのは分かっている。ある程度までなら大目に見よう。だがもう一度言っておく。レッド・ジョンを照準に捉えたときは、私もその場にいる。いいな?)Jane: Completely.
(完璧に)The Mentalist Season6 Episode2 (Black-Winged Redbird)
シーン解説と心理考察
バートラムはまず、ジェーンの秘密主義を理解していると認めます。譲歩を先に置いてから条件を突きつける運び方に、この人物の交渉の癖が表れています。
in your sights という言い方を選んでいる点に、この会話の要があります。「見つけたら」でも「近づいたら」でもなく、撃てる位置に捉えた瞬間を指定しているため、ジェーンが単独で決着をつけようとしていることを見抜いている、という含みがこの一言に重なっています。within limits(限度内で)という但し書きも、すでに限度が近いという警告として響きます。
対するジェーンの返事は Completely. の一語だけです。了解の言葉としては最上級でありながら、何ひとつ約束していない。この短さが、二人のあいだに残っている距離をやわらかく見せています。長官の要求を正面から拒まずに受け流す、この人物らしい応じ方です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
銃身の上にある照準器に標的が収まった状態を思い浮かべてみてください。in one’s sights の sights は、照準に使う装置をまとめて指す慣用的な複数形です。個々の照準器や光学式サイトを指すときは単数形 sight も使われるため、「必ず二つの部品だから複数」と覚えるより、成句全体で複数形と覚えるのが安全です。
長官が机越しに「捉えたときは私もその場にいる」と告げる場面は、まさに照準が合う一瞬を指定した言い方です。追う側の指がまだ引き金にかかっていない、その手前の緊張ごと絵にして覚えると、「見えている」と「狙っている」の差がはっきりします。
例文で覚える「have someone in one’s sights」
追う側からも追われる側からも使えるこの表現を、3つの場面で確認していきます。
The prosecutor has him in her sights, and she won’t let this go.
(検察官は彼を標的に定めていて、この件を見逃す気はない)
報道された事件について話す場面です。法執行の文脈がもっとも自然で、劇中の使い方にも近い形になります。
We’ve had that account in our sights for two years.
(あの取引先は2年前から狙っていた)
営業チームで長期の見込み顧客を話題にする場面。人以外を対象にすると、敵意ではなく執念の色が出ます。
A: Think we’re safe now that the report’s filed?
B: Don’t relax yet. The auditors still have us in their sights.
(A:報告書を出したから、もう大丈夫かな?)
(B:まだ気を抜かないで。監査はこちらを見据えたままだよ)
狙われる側から言うやり取りです。主語を入れ替えるだけで、緊張感のある警告になります。
あわせて覚えたい関連表現
set one’s sights on
(〜に狙いを定める)
have が「すでに捉えている状態」を指すのに対し、set は「狙いを定める動作」を指します。目標を新たに掲げる場面ではこちらが自然です。
have someone in one’s crosshairs
(〜を照準の十字線に捉えている)
同じ銃の比喩ですが、より直接的で攻撃的な響きがあります。批判や追及の対象になっているという含みが強く、報道文で好まれます。
be on someone’s radar
(〜の視野に入っている)
認識されている段階にとどまり、仕留める含みがありません。in one’s sights の一段階手前を表す表現として押さえておくと、距離感を言い分けられます。
Note|照準器という装置が英語に残したもの
sights というありふれた語が、なぜ「狙い」を意味するのか。その答えは、銃身の上に載った小さな金具にあります。
英語の sight には、視覚や光景といった一般的な意味のほかに、照準を合わせるための装置そのものを指す用法があります。in one’s sights の sights は照準器をまとめて指す慣用的な複数形ですが、単一の装置を a sight と表すこともあります。したがって、この成句で複数形になることと、個々の照準器の数は分けて考えるのが正確です。
この装置に由来する表現は、現代英語の中に一群をなしています。set one’s sights on(狙いを定める)、raise one’s sights(目標を高く掲げる)、lower one’s sights(目標を下げる、妥協する)。いずれも照準の高さを、そのまま目標水準の比喩に置き換えています。銃口を上げれば遠くを狙え、下げれば近くで手を打つ。物理的な角度の話が、そのまま野心の大小を語る言葉になったわけです。
こうして見ると、have someone in one’s sights が持つ緊張感の出どころもはっきりします。目標を「掲げる」でも「定める」でもなく、すでに照準の中に「入れている」と言っているのですから、話は最終段階に近い。長官が使ったのはまさにその段階を指す言葉でした。
小さな金具ふたつが、英語の中では野心と追跡の両方を担っている。道具が言葉に残す痕跡としては、ずいぶん働き者です。
まとめ|「捉えた」と言える瞬間はいつか
have someone in one’s sights は、相手を認識している段階ではなく、決着をつけられる位置まで詰めた状態を指す表現です。照準の中に標的が収まった一瞬を、そのまま言葉にしています。
段階を言い分けられるようになると、状況の説明が正確になります。まだ気づいた程度なら on someone’s radar、狙いを定めたところなら set one’s sights on、捉えたところで in one’s sights。同じ「狙う」でも、距離の違いを伝えられます。
追いかけているものとの距離を測る目盛りとして読み取れる表現と言えます。


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