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誰かに次々と質問を重ねられて、答えれば答えるほど自分が不利になっていく気がして、これ以上は専門家に任せたいと思わず口を閉ざしたくなった経験は、誰にでも一度くらいあるのではないでしょうか。
そんな場面にぴったりの「lawyer up」を、『ホワイトカラー』シーズン1第5話、盗難事件の関係者として浮上した人物が、FBI捜査官ピーターの追及をかわすようにあっという間に弁護士を立てた場面から、一緒に見ていきましょう。
「lawyer up」の意味とニュアンス
lawyer up
意味:弁護士を急いで立てる、法的な助言を得るために弁護士を雇う
lawyer upは、名詞のlawyer(弁護士)に、動詞的な役割を持たせるupがついてできた口語表現です。man upやteam upと同じ作り方で、名詞そのものが「その役割の態勢を整える」という動詞に転じています。警察の取り調べやニュースの逮捕報道で頻繁に使われ、容疑者や関係者が質問に答える前に弁護士を立てることを指します。単にlawyerを名詞のまま使うより、「素早く、防御的に」という切迫したニュアンスが強く出るのが特徴です。ニュートラルなget a lawyerと比べると、lawyer upには「これ以上は答えない」という一線を引く強い意志が感じられます。実際には有罪を意味する言葉ではなく、自分の権利を守るための行動を指す表現である点も押さえておきたいところです。ニュースキャスターがコメントを避ける関係者の様子を伝えるときにも使われるほど、日常的に定着した言い回しでもあります。
【ここがポイント!】
- 「lawyer up」の核は、名詞lawyerに動詞のup(態勢を整える)がくっついたイメージ
- 弁護士を急いで立てる行動そのものを指し、疑わしさを匂わせる文脈でよく使われる表現
- 有罪の証明にはならない、身を守るための当然の権利行使という側面も持つ一言
『ホワイトカラー』S01E05のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
盗まれた名画をめぐる捜査で、被害者の家に居合わせた「叔父ゲイリー」に事情聴取が及びます。ところがゲイリーはあっという間に弁護士を立てて以降の質問に一切答えなくなり、FBI捜査官のピーターと相棒ニールは、その素早さに違和感を覚えながら次の一手を相談し始めます。
Peter: I’ve never seen a guy lawyer up that fast. I’ve got that he’s a stock trader on Wall Street, and that his attorney will answer any further questions I might have.
(あんなに素早く弁護士を呼んだ男は見たことがないな。分かっているのは、あいつがウォール街の株トレーダーで、これ以上の質問には弁護士が答えるということだけだ。)Neal: So, uncle Gary tips off the thief, splits the take.
(つまり、ゲイリーおじさんが泥棒に手引きして山分けした、ということかな。)Peter: More likely uncle Gary owes money to somebody, and he got tired of staring at 2 million bucks hanging on the wall. Now he shuts up, and we do this the hard way.
(それより、ゲイリーおじさんは誰かに借金があって、壁に掛かった200万ドルを眺め続けるのに嫌気が差したんだろうな。これで奴は口を閉ざした、面倒なやり方でいくしかない。)Neal: The hard way?
(面倒なやり方?)White Collar Season1 Episode5 (The Portrait)
シーン解説と心理考察
あんなに素早く弁護士を呼んだ男は見たことがない、というピーターの一言には、長年の捜査経験に裏打ちされた鋭い違和感が表れています。事情聴取が終わるより先に弁護士が立ちはだかったという事実そのものが、ピーターにとってはゲイリーの立場を読み解く材料になっています。一方でニールが真っ先に挙げた「泥棒への内通」という仮説を、ピーターはあっさり退け、借金という地に足のついた動機を提示していきます。この対比から、直感で人物像を組み立てるニールと、状況証拠を積み上げて筋道を立てるピーターという、二人の捜査スタイルの違いが浮かび上がります。ゲイリーが口を閉ざした瞬間、正攻法での聴取が手詰まりになり、二人はここから搦め手の作戦に切り替えていくことになります。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
lawyer upを覚えるときは、シャッターがガラガラと勢いよく下りて、店先が一瞬で閉ざされる様子をイメージしてみましょう。ゲイリーが弁護士を立てた瞬間、それまで開いていた会話の窓口が一気に閉じてしまったのが、このシーンの核心です。lawyerという名詞にupが付くだけで、「弁護士という盾を素早く構える」動作に変わる感覚をつかんでおくと、とっさの場面でも自然に口から出てくるようになります。質問という攻めに対して、シャッターを下ろすような防御の一手、そのイメージとセットで覚えておくと定着しやすい表現です。
例文で覚える「lawyer up」
lawyer upは、犯罪絡みの深刻な場面に限らず、トラブルの気配を感じた瞬間に身を守ろうとする日常のシーンでも使われます。3つの例文で、実際の使い方を確認していきましょう。
My neighbor lawyered up the second the city sent a warning about his fence.
(隣人は、市からフェンスについての警告が届いた途端、すぐに弁護士を立てた。)
近隣トラブルや行政からの通知に対して、早めに専門家の助けを求める場面で使えます。大げさに聞こえるかもしれない対応が、案外自然に響く表現です。
The company lawyered up as soon as rumors of a lawsuit started spreading.
(その会社は、訴訟の噂が広まり始めるとすぐに弁護士を立てた。)
ビジネスの場面では、風評やクレームが法的な問題に発展しそうなときの初期対応としてよく使われます。会社全体としての防御姿勢が伝わる言い方です。
A: Did he say anything when the police showed up?
B: Nothing. He lawyered up before they even finished reading him his rights.
(A:警察が来たとき、彼は何か話した?)
(B:何も。権利を読み上げ終わる前に、もう弁護士を立てていたよ。)
友人同士がニュースやドラマの一場面について話すような、軽い雑談の中でも使いやすい言い方です。あっという間の展開に対する驚きがにじみます。
あわせて覚えたい関連表現
plead the fifth
(黙秘権を行使する)
アメリカ合衆国憲法修正第5条を根拠に、自分に不利な証言を拒む権利を指す表現です。lawyer upが弁護士を立てるという行動そのものを表すのに対し、こちらは発言そのものを拒否する権利の主張に焦点があります。
clam up
(貝のように口を閉ざす)
法律的な文脈に限らず、緊張や気まずさから急に無口になる様子を広く表す表現です。lawyer upが弁護士という具体的な防御手段を伴うのに対し、clam upは単に黙り込む状態そのものを指します。
get legal representation
(弁護士による代理を立てる)
lawyer upと同じ意味を、よりフォーマルな響きで伝える言い方です。ニュース記事や公式な文書ではこちらが好まれ、lawyer upは会話やくだけた記事で使われる傾向があります。
Note|黙って弁護士を呼ぶことは、なぜ「賢い選択」なのか
ゲイリーが弁護士を立てた行動は、ドラマの中では疑わしさの演出として描かれていますが、現実の法律の世界では、むしろ理にかなった振る舞いとして位置づけられています。
その背景にあるのが、1966年のアメリカ連邦最高裁判決、通称ミランダ判決とされています。アリゾナ州で逮捕されたアーネスト・ミランダという人物の裁判をきっかけに、この判決以降、アメリカの警察官は容疑者を取り調べる前に、黙秘権と弁護士を立てる権利があることを告げる義務を負うようになったと言われています。テレビドラマでおなじみの「あなたには黙秘権があります。発言は法廷で不利な証拠として用いられる可能性があります。あなたには弁護士を立てる権利があります」という決まり文句は、この判決に由来するとされています。法律や心理の専門家の間では、こうした権利を告げられた直後に弁護士を求めることは、有罪を意味する行動ではなく、取り調べという圧力の強い状況から自分の発言を守るための合理的な選択だと考えられています。落ち着いて状況を判断できないまま長時間の質問にさらされると、無実の人でも不利な発言をしてしまうリスクが指摘されており、弁護士を間に立てることはそのリスクを減らす手段として機能します。
ピーターが「あんなに素早く」と驚いたゲイリーの行動も、見方を変えれば、権利をよく理解した上での冷静な判断だったとも言えます。lawyer upという一言の裏には、疑わしさの演出だけでなく、自分の言葉を守るという法的な知恵が隠れています。
怪しく見える沈黙の奥に、権利を知る人の落ち着きが潜んでいることもあります。
まとめ|ゲイリーの早すぎる沈黙から学ぶこと
lawyer upは、質問に答える前に弁護士を立てて自分の発言を守る、という行動を指す表現です。ゲイリーの素早い対応にピーターが漏らした驚きの一言には、長年の捜査経験に裏打ちされた鋭さと、一筋縄ではいかない相手への警戒がにじんでいました。
このフレーズは、犯罪絡みの深刻な場面に限らず、近隣トラブルやビジネス上の紛争、行政からの問い合わせなど、身を守る必要が生じたさまざまな日常の場面でも応用できます。
疑わしく見えるかどうかより、自分の言葉をどう守るかを優先する、その判断の速さこそがこの表現の核にある一言だったと言えます。


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