海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回取り上げるのは『メンタリスト』シーズン1の第2話。レストランの厨房でシェフが語った何気ない一言が、物語の終盤でジェーンの人物評として回収される場面があります。「indulgence(耽溺・贅沢)」という語の変化に注目していきます。同じエピソードから3本のコラムを予定しており、これはその3本目・最終回にあたります。
同じ語がどんな姿で現れ直すのか、順を追って見ていきましょう。
「no shame in it」と「indulgence and necessity all in one」— シェフのバター哲学
被害者の勤め先だったレストランの厨房で、シェフのマルコムが料理を振る舞いながら語る場面です。
Jane: Mmm, and a lot of butter.
(うーん、それにバターもたっぷり。)Malcolm: No, there’s no shame in it. A lot of butter. That’s the great thing about food. It’s indulgence and necessity all in one.
(いやいや、悪びれることはありませんよ。バターはたっぷり使います。それが料理のいいところでしてね。贅沢と必要が一つになっているんです。)The Mentalist Season1 Episode2 (Red Hair and Silver Tape)
there’s no shame in it は「それは恥じることではない」、つまり「悪びれる必要はない」という意味の口語表現です。ジェーンがバターの多さをやんわり指摘したのに対し、マルコムは開き直るでもなく、むしろ誇らしげにその多さを肯定しています。
続く indulgence and necessity all in one は、「贅沢」と「必要」という一見矛盾する二つの言葉を一つに束ねた言い回しです。indulgence は「自分を甘やかすこと・耽溺」を意味する語で、マルコムにとってバターは単なる贅沢ではなく、料理に欠かせないものだと語られています。この時点では、料理人の自負が伝わってくる一言に聞こえます。
「self-indulgent」— 同じ語が暴く、シェフの人物像
物語の終盤、モーテルの一室でジェーンはリズボンに自分の推理を語ります。厨房で目にしたバターの量が、そのままシェフの人物評につながっていく場面です。
Jane: He’s a gluttonous baby. He’s self-indulgent. He wants what he wants and he takes it.
(あの男は食い意地の張った子どもみたいなものです。わがまま放題、欲しいものは欲しいだけ手に入れる。)Lisbon: Too much butter?
(バターの量が多すぎるって、それだけで?)Jane: Yeah.
(ええ。)Lisbon: It’s fascinating the way your mind works. One thing, though—Malcolm was in the kitchen with 20 people when Melanie was taken. He couldn’t have done it.
(あなたの頭の中の働き方、実に興味深いわね。でも一つ言っておくと——メラニーが連れ去られた時間、マルコムは20人と一緒に厨房にいたのよ。彼にはできなかったはず。)The Mentalist Season1 Episode2 (Red Hair and Silver Tape)
self-indulgent は、先ほどの名詞 indulgence に self- が付いた形容詞で、「自分を甘やかしがちな」「わがままな」という意味になります。厨房では料理への誇りとして肯定的に語られていた indulgence が、ここでは一転して人物の欠点を言い当てる言葉として使われているのが興味深いところです。同じ語の根が、場面によって違う顔を見せています。
もっとも、リズボンの返しにもある通り、この推理はこの段階ではまだ穴があります。バターの量だけで人となりを言い当てるジェーンらしい着眼点ですが、証拠としての裏付けはまた別の話として描かれています。
まとめ|一語の変化が語る観察眼
indulgence という語根が、厨房では料理への誇りとして、終盤では人物の欠点として、姿を変えて現れます。no shame in it の開き直りと self-indulgent の評価は、地続きの一つの性質を別の角度から言い当てているとも言えます。同じ単語が場面ごとにどんな顔を見せるか、意識しながら英語のセリフを追ってみると、新しい発見があります。
このエピソードの英語表現は、フレーズ記事やエピソードまとめでも扱っています。
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