海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回扱うのは、『ビッグバン★セオリー』シーズン2 第23話に登場する、決心がつかず堂々巡りするときの英語表現です。深夜、レナードの部屋を訪ねたシェルドンは、北極への遠征に誘われたことを打ち明けながら、行くべきか行かざるべきかで揺れ動きます。理屈の上ではまたとない好機なのに、気持ちがどうしても追いつかない、という状況です。
ひとつの決まり文句と、同じ疑問文の型を裏返しながら続く掛け合いのリズムから、板挟みの気持ちの伝え方を見ていきます。真夜中に叩き起こされる側のレナードの受け答えにも注目です。
板挟みの状態をひとことで言う “on the horns of a dilemma”
深夜2時、シェルドンはレナードの部屋のドアを3回ノックして名前を呼ぶいつもの作法で訪問を告げます。レナードは寝ぼけながら「今、夜中の2時だぞ」とこぼしますが、シェルドンは学長の家まで押しかけたことをむしろ誇らしげに語ります。
用件は、大学の学長から直々に持ちかけられた話でした。磁北極でゆっくり動く磁気単極子を検出するための、NSF(全米科学財団)による北極遠征に、直前になって空きが出て招待されたというのです。理論物理学者として願ってもない好機である一方、シェルドンは寒さが大の苦手で、映画館で氷入りの飲み物を飲みすぎて頭が痛くなり、途中退席せざるを得なかったことまで持ち出し、迷いを断ち切れずにいます。
Sheldon: I’m on the horns of a dilemma. Can you imagine me, Sheldon Cooper, at the North Pole?
(僕は板挟みの状態にあるんだ。このシェルドン・クーパーが北極にいる姿を想像できるかい?)TBBT Season2 Episode23 (The Monopolar Expedition)
on the horns of a dilemma は、二つの選択肢のどちらを取っても痛手を負う板挟みの状態を、牛の角の間に挟まれるイメージで表す言い回しです。dilemma だけでも「板挟み」の意味は伝わりますが、horns を添えることで、どちらに動いても突き刺さる、逃げ場のない切迫感がひとことで際立ちます。シェルドンはわざわざ自分のフルネームを添えて「このシェルドン・クーパーが北極にいる姿を想像できるか」と口にしており、極寒の地に立つ自分がどうにも思い描けない困惑ぶりが、この一文にすでに滲んでいます。
理論物理学者として一生に一度の好機を前にしながら、寒さが大の苦手という個人的な事情がそれを邪魔する。どちらの言い分にも理屈が立ってしまい、頭では答えが出ているのに気持ちが追いつかない、という状態を端的に言い表すときに使える言い回しです。仕事の昇進とプライベートの都合が両立しないときや、条件のいい誘いに気乗りしないときなど、日常の判断に迷う場面にもそのまま応用できます。
似た意味の in a dilemma や on a dilemma’s horns という言い方も辞書には載っていますが、シェルドンが口にする on the horns of a dilemma は定冠詞つきの決まり文句としてまとまりがよく、口に出したときのリズムも印象に残りやすい形です。困っている状況を大げさに、それでいて正確に言い表したいときの選択肢として押さえておきたい表現です。
同じ疑問文を裏返しながら続く、堂々巡りのやり取り
レナードが助言しても、シェルドンはすぐにそれを覆してしまいます。同じ疑問文の型を使い分けながら、非難と困惑の両方をぶつけてくる掛け合いです。眠りを妨げられた側のレナードが、面倒くさそうに相槌を打つ温度差も見どころです。
Leonard: Well, then don’t go.
(じゃあ、行かなきゃいいだろ。)Sheldon: How can you say that? The scientific opportunity of a lifetime presents itself and my best friend says don’t go.
(よくそんなことが言えるね。一生に一度の科学的好機が訪れたのに、親友が行くなと言うのか。)Leonard: All right, then go.
(わかった、じゃあ行けよ。)Sheldon: Listen to you. How can I possibly go?
(よく言うよ。どうして僕に行けるっていうんだ。)Leonard: Sheldon, what are the words I can say right now to end this conversation and let me go back to sleep?
(シェルドン、今この会話を終わらせて僕を寝かせるには、何と言えばいいんだ。)TBBT Season2 Episode23 (The Monopolar Expedition)
How can you say that? と How can I possibly go? は、どちらも「How can + 主語 …?」という同じ疑問文の型を使っています。前者は相手の発言への非難、後者は自分自身への問いかけという形で困惑を表しており、同じ構文が正反対の方向に使われているのが面白いところです。レナードの Well, then don’t go. と All right, then go. も、まったく同じ言葉を裏返しただけの助言で、シェルドンの言い分に合わせて意見を反転させています。相手がどちらを言っても文句が返ってくる、堂々巡りのやり取りそのものが会話の構造として見えてきます。
会話を切り上げたいときの What are the words I can say right now to end this conversation and let me go back to sleep? も、うんざりしながら直接的な拒絶を避け、婉曲的に話を終わらせようとする言い方として覚えておきたい表現です。「何て言えば終わらせられるか」と相手に丸投げする形を取ることで、突き放さずに疲れをにじませているのが特徴です。堂々巡りの相手に付き合いきれなくなったときや、結論の出ない相談に延々と付き合わされたときに、そのまま応用が利く言い方と言えます。
この直後、シェルドンは「学長にもまったく同じことを聞かれた」と返しますが、レナードの問いかけそのものへの答えにはなっていません。堂々巡りは相手を変えても解消されず、むしろ話をそらす形で先延ばしにされてしまう、というオチまで含めて、この場面のやり取りは一貫しています。同じ問いを二度も投げかけられるほど、シェルドンの決断の先延ばしぶりが徹底しているとも言えます。
まとめ|堂々巡りの気持ちにも、型がある
on the horns of a dilemma、How can you say that?、What are the words I can say to end this conversation。板挟みの気持ちを表す言い方も、同じ疑問文の型を裏返して使う堂々巡りの掛け合いも、決心がつかないときの心理をそのまま言葉にしたものと言えます。深夜の会話ならではの、答えの出ない押し問答のテンポも味わいどころです。
次回も『ビッグバン★セオリー』の会話を通して、英語表現の型を見ていきましょう。
このエピソードの英語表現は、フレーズ記事やエピソードまとめでも扱っています。


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