海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回扱うのは、『ビッグバン★セオリー』シーズン2 第16話に登場する、お互いに便宜を図り合う関係を言い表す英語表現です。研究資金や新しい機材をめぐるレズリーとハワードのやりとりには、持ちつ持たれつの関係を軽く言い表す表現と、その裏にある力関係を言葉にする表現が重なって描かれています。
「You scratch my back, I scratch yours.」という一言から見ていきます。
「持ちつ持たれつ」を体の動きで言い表す表現
大学のカフェテリアで、予算削減の話をしていたレナードたちのところへレズリーがやって来て、ハワードに新しい試作機の予算が承認されたことを伝えます。
Leslie: You scratch my back, I scratch yours.
(持ちつ持たれつ、ってやつよ。)TBBT Season2 Episode16 (The Cushion Saturation)
You scratch my back, I scratch yours. は、「お互いに背中を掻き合う」という体の動きを借りて、便宜を図り合う関係を言い表す定番表現です。一方が動いてくれたら、もう一方も同じように動く、という対等な貸し借りのイメージが伝わってきます。
この一言を聞いていたレナードとシェルドンの反応は対照的です。
Leonard: Yeah, okay, but what’s with the back-scratching and the meow!
(いや、それはいいけど、その背中を掻くのと、猫の鳴き真似は何なんだ!)Sheldon: I believe the back-scratching metaphor generally describes a quid pro quo situation.
(その背中を掻く比喩は、一般的にはquid pro quoの状況を指すと僕は思う。)TBBT Season2 Episode16 (The Cushion Saturation)
What’s with … and the …! は、目の前で起きた複数の出来事をまとめて「一体何なんだ」と問いただす言い方です。レズリーの一言とその直後の鳴き真似、二つの違和感をひとまとめに指摘しているのが伝わってきます。それに対しシェルドンは、くだけた比喩表現をそのまま硬い言葉 quid pro quo に言い換えて説明します。日常的な言い回しを、ラテン語由来の専門的な表現に置き換えて解説し直す、このキャラクターらしい応答です。この後もシェルドンは、レズリーの鳴き声がアフリカジャコウネコの鳴き声に似ていたという余談を続け、レナードに「もう終わったのか」と聞かれてようやく話をやめます。一つの比喩表現をきっかけに、本題とは無関係な方向へ話が広がっていくところも、このキャラクターらしい癖として観察できます。
便宜の裏にある力関係を言葉にする表現
エピソード終盤、新しい機材や出張の機会を重ねて受け取ってきたハワードは、その裏にある力関係を初めて言葉にします。
Howard: Because it’s like you’re controlling me with new equipment and research trips.
(だって、新しい機材や出張でコントロールされてるみたいな感じがするから。)Leslie: Well, if I weren’t controlling you with new equipment and research trips, then I’d be uncomfortable.
(じゃあ、新しい機材や出張でコントロールしてなかったら、私のほうが居心地悪くなるわ。)Howard: How so?
(どうして?)Leslie: ‘Cause then we’d be in, like, a real relationship with feelings and all that crap.
(だって、そうなると気持ちがどうとかいう、ちゃんとした関係になっちゃうから。)TBBT Season2 Episode16 (The Cushion Saturation)
it’s like you’re -ing me with … は、はっきり非難するのではなく「まるで〜されているみたいだ」と婉曲に不満を伝える言い方です。controlling という強い動詞を使いながらも、it’s like を添えることで表現を和らげています。レズリーの返しも、controlling という同じ動詞をそのまま引き取りながら、自分の側の事情に置き換えて切り返しています。さらに How so? と理由を尋ねられると、レズリーは a real relationship with feelings and all that crap という言い方で、気持ちを伴うきちんとした関係になることへの距離感を示します。all that crap という投げやりな言い添えが、機材や出張で便宜を図り合う今の関係のほうを選んでいる態度を際立たせています。
このやりとりの少しあと、レズリーはハワードに対する自分の立場を一言でまとめます。
Leslie: No. No, not at all. You’re also arm candy.
(いいえ、全然そんなことないわ。あなたは、着飾るための連れでもあるの。)TBBT Season2 Episode16 (The Cushion Saturation)
arm candy は、腕(arm)に添えるキャンディーという言い方で、人前で連れて歩く飾りのような存在を指す表現です。You scratch my back, I scratch yours. という体の動きの比喩から、controlling、arm candy と、比喩から比喩へ言葉を重ねながら関係を説明していく流れが、この場面の面白さです。
まとめ|比喩を重ねて関係を言い表す面白さ
You scratch my back, I scratch yours.、it’s like you’re controlling me with …、arm candy。持ちつ持たれつの関係も、その裏にある力関係も、比喩を使って言い表されている点は共通しています。一つの比喩をきっかけに、別の比喩へと言葉が重なっていく流れを追うと、直接的な言い方を避けながら関係の距離感を伝える、英語らしい遠回しな言い方の型が見えてきます。
次回も『ビッグバン★セオリー』の会話を通して、英語表現の型をじっくり見ていきましょう。
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