海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
一つのトラブルをどうにか切り抜けたと思った直後に、また別の困った状況に飛び込んでしまうような瞬間が、日常にもあります。
そんな巡り合わせを表す「out of the frying pan, into the fire」ということわざをもじった一言を、『ホワイトカラー』シーズン5第1話の中盤、消防署に潜入して金貨を回収しようとするニールとモジーが、想定外の展開に見舞われる場面から、一緒に見ていきましょう。
「out of the frying pan, into the firehouse」の意味とニュアンス
out of the frying pan, into the fire
意味:一難去ってまた一難
これは英語の定番ことわざ「out of the frying pan, into the fire」(フライパンから逃れたと思ったら火の中、の意味で「一難去ってまた一難」を表す)を、劇中の舞台である消防署(firehouse)にかけてもじった表現です。fireをfirehouseに変えることで、「火」という共通のイメージを保ちながら、その場の状況に合わせたウィットのある言い回しになっています。
一つの困難を切り抜けた直後に、別の困難に見舞われるという2段階の展開を表す点が特徴で、日常会話からビジネスの場面まで幅広く使われることわざです。定番のことわざだからこそ、状況に合わせてアレンジする言葉遊びが効果的に響きます。frying panとfireのどちらも「熱さ」を連想させる語である点が、悪化していく状況をより体感的に伝えてくれます。
【ここがポイント!】
- 核は、一つの困難を逃れた先で別の困難に陥るという2段階の展開
- 定番のことわざをもじって状況に合わせてアレンジできる柔軟な表現
- fryingとfireの音の響きも印象的な、覚えやすいことわざの一つ
『ホワイトカラー』S05E01のシーンで見てみよう
意味を確認したところで、実際のシーンに移りましょう。金貨を積んだタンクを消防署の中でこっそり回収するはずが、モジーはとっさの判断でタンクを一旦手放してしまいます。次から次へと降りかかる想定外の事態に、モジーがどんな一言をこぼすのかに注目です。
Neal: Did I miss something? Why’d you just give away our gold?
(何か見逃したかな? どうして僕たちの金を、今渡してしまったんだい?)Mozzie: They would’ve seen my face. I’ll grab the coins once the lieutenant’s back is turned.
(顔を見られるところだったんだ。隊長が背を向けた隙に、金貨を回収するさ。)Neal: I think his back is now turned.
(今、背を向けたと思うよ。)Mozzie: So out of the frying pan, into the firehouse. I didn’t have a choice.
(フライパンを逃れたと思ったら、今度は消防署の中か。他に選択肢がなかったんだ。)White Collar Season5 Episode1 (At What Price)
シーン解説と心理考察
金貨を積んだタンクを消防署の中でこっそり回収する計画だったはずが、モジーは顔を見られそうになったことを理由に、タンクを一旦手放してしまいます。「どうして僕たちの金を、今渡してしまったんだい」と問い詰めるニールに、モジーは「顔を見られるところだったんだ。隊長が背を向けた隙に、金貨を回収するさ」と釈明します。とっさの判断で計画を修正せざるを得なかった、緊迫した現場の空気が伝わってきます。
「今、背を向けたと思うよ」というニールの言葉を受けて、モジーは「フライパンを逃れたと思ったら、今度は消防署の中か」とぼやきます。これは定番のことわざを、舞台となっている消防署にかけてもじった一言であり、次から次へと降りかかる想定外の事態への、モジーらしい皮肉めいたユーモアが光る場面です。緊迫した状況の中でも軽口を忘れないところに、修羅場を何度もくぐり抜けてきたモジーの余裕がにじみます。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
out of the frying pan, into the fireを覚えるコツは、熱いフライパンから必死に逃げたら、その先には火が待っていたという「逃げた先がもっと悪い場所だった」情景を思い浮かべることです。
劇中では、その「火」が「消防署」に置き換えられており、皮肉にも「火を消す場所」に逃げ込んでしまったという二重のユーモアになっています。定番のことわざを状況に合わせてもじる感覚ごと覚えておくと、次々とトラブルが重なる場面でも軽やかに言葉にできます。もじりの型さえ身につければ、frying panとfireの部分を自分の状況に合わせて自由に置き換えられるようになります。
例文で覚える「out of the frying pan, into the fire」
out of the frying pan, into the fireは、仕事のトラブルから日常の困り事まで、状況が悪化する場面で幅広く使われることわざです。3つの例文で確認していきましょう。
I fixed one bug, but now there’s a bigger one. Out of the frying pan, into the fire.
(一つのバグを直したら、もっと大きいのが出てきた。一難去ってまた一難だ。)
トラブル対応で新たな問題が発生した場面です。but nowを使うことで、解決したはずが逆に悪化した流れが伝わります。
Leaving that job for this one was out of the frying pan, into the fire.
(あの仕事を辞めてこっちに来たのは、結局フライパンから火の中へ、だった。)
転職後にさらに大変な状況になった場面です。leaving…forの形で、選んだ結果が裏目に出た流れを説明できます。
A: How was the new apartment?
B: Out of the frying pan, into the fire—the neighbors are even louder.
(A:新しいアパートはどうだった?)
(B:一難去ってまた一難だよ、近所の人がもっとうるさいんだ。)
引っ越し後の新たな悩みを話す、友人同士のカジュアルな会話です。evenを添えると、以前より悪化した様子が強調されます。
あわせて覚えたい関連表現
from bad to worse
(悪化する一方、さらに悪い状態になる)
out of the frying pan into the fireが一つの困難から逃れた先で別の困難に陥るという2段階の展開を表すのに対し、from bad to worseは単純に状況が悪化していく様子を表します。
jump from the frying pan into the fire
(フライパンから火の中へ飛び込む)
同じことわざの動詞形で、動作としての「飛び込む」ニュアンスがやや強調される言い方です。
one thing after another
(次から次へと、トラブルなどが続く)
out of the frying pan into the fireが2つの困難の対比に焦点があるのに対し、one thing after anotherは3つ以上のトラブルが連続する状況にも幅広く使えます。困難の数が2つに絞れない、慌ただしい一日を振り返るときに向いた言い方です。
Note|out of the frying pan, into the fireということわざの由来
out of the frying pan, into the fireということわざは、いつ頃から使われてきたのでしょうか。その由来を少し覗いてみましょう。
このことわざの起源は古く、16世紀のヨーロッパの文献にまで遡るとされています。もともとはギリシャ語やラテン語の古い言い回しに類似の表現があったとも言われ、英語では16世紀の宗教論争を記録した文献の中に、現在とほぼ同じ形で登場する例が確認されています。フライパン(frying pan)という調理器具と、火(fire)という要素を対比させることで、一つの困難を逃れたつもりが、実はより深刻な状況に飛び込んでしまったという皮肉な巡り合わせを、誰にでもイメージしやすい台所の情景で表現している点が、このことわざが長く使われ続けている理由の一つだと考えられます。似た構造のことわざは他の言語にも存在し、一つの災いを逃れて別の災いに落ちるという発想自体が、文化を超えて共感を呼びやすいテーマであることがうかがえます。
本編でモジーが口にした「フライパンを逃れたと思ったら、今度は消防署の中か」という一言も、まさにこの数百年前から受け継がれてきたことわざの構造を、目の前の状況にぴったり当てはめたものでした。
古いことわざの型が、現代のセリフの中にも生き続けています。数百年前の言い回しが、消防署という現代的な舞台にすんなり馴染んでいる点も興味深いところです。
まとめ|モジーのぼやきに見る、想定外を笑い飛ばす力
out of the frying pan, into the fireは、一つの困難を逃れた先で別の困難に見舞われるという、一難去ってまた一難の状況を表すことわざです。
仕事のトラブルや日常の困り事が重なったときも、この一言があればその巡り合わせを的確に、そして少しユーモラスに表現できます。深刻になりすぎず、状況を笑い話に変える力を持った言い回しでもあります。
消防署という舞台にかけてことわざをもじったモジーの一言に、想定外の事態さえ笑いに変える余裕が滲んでいた場面でした。次にトラブルが重なったときは、このことわざを思い出してみると、少し肩の力が抜けるかもしれません。


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