海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
誰かの提案に、驚くほど独特な理由をつけて尻込みしてしまう瞬間が、ドラマには時々あります。
そんな場面で使われる「go through something」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン12第19話の中盤、感覚遮断タンクを勧められたシェルドンが独特な理由で渋る場面から、一緒に見ていきましょう。
「go through something」の意味とニュアンス
go through something
意味:つらい経験をする、経験を乗り越える
go throughは本来「何かを通り抜ける」という物理的な移動を表す句動詞ですが、目的語に試練や困難な出来事を置くことで、「つらい経験をする」「大変な時期を乗り越える」という意味に広がります。トンネルを実際にくぐり抜けるように、その渦中にいる間は先が見えず、抜け出して初めて「経験した」と言えるようになる、そんな過程を表す表現です。
病気、離婚、失業、引っ越しなど、人生の節目で起きる大きな出来事を語るときによく使われ、単に「大変だった」と言うよりも、そのプロセス全体を経て今の自分がいる、というニュアンスを添えられます。目的語には試練や困難を表す言葉が来ることが多く、軽い日常の出来事にはあまり使われません。
進行形で使うと「今まさにその渦中にいる」ことを表し、過去形で使うと「あの経験を通り抜けてきた」という達成感を含んだ響きになります。時制を変えるだけで、経験している最中の視点と、振り返る側の視点を使い分けられる点も、この表現の面白いところです。
【ここがポイント!】
- 「go through something」の核は、トンネルを通り抜けるように困難のただ中を進むイメージ
- 病気や離婚など、人生の大きな出来事を語るときに使われる幅広さ
- 経験の渦中にいる感覚と、抜け出した後の実感の両方を運べるのがコツ
『ビッグバン★セオリー』S12E19のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
レナードから息抜きに感覚遮断タンクを提案され、エイミーがすぐに賛同を示す中、シェルドンだけはいったん戸惑いを見せます。それでもエイミーに一緒にやろうと誘われ、思わぬ理由を持ち出して同じタンクには入りたくないと言い出す流れに注目です。
Leonard: What are you talking about? All you ever do is complain about how things smell, feel and sound.
(何言ってるんだよ。いつも匂いだの感触だの音だの、文句ばっかり言ってるのは君じゃないか。)Sheldon: Oh, I’m right here. Why are you shouting?
(おい、僕はここにいるんだが。何を怒鳴っているんだ?)Amy: What do you say? We could both use a break. Come on, I’ll do it with you.
(どう?二人ともちょっと息抜きが必要でしょ。ほら、一緒にやりましょう。)Sheldon: Okay, but not in the same tank. I already shared a uterus with my twin sister. I don’t need to go through that again.
(わかった、でも同じタンクは嫌だ。双子の妹とはもう子宮を共有した仲だからね。あれをもう一度経験するのはごめんだ。)The Big Bang Theory Season12 Episode19 (The Inspiration Deprivation)
シーン解説と心理考察
レナードが提案した感覚遮断タンクに、エイミーはすぐさま賛同を示します。ところがシェルドンが「感覚を全部遮断されるのはどうだろう」と渋ると、レナードは「いつも匂いや感触に文句ばかり言っているくせに」とツッコミを入れます。ノーベル賞をめぐるプレッシャーで気を張り詰めていた二人にとって、感覚を遮断して静かな空間で過ごすという提案は、珍しく前向きな息抜きとして描かれています。
それでもシェルドンは、双子の妹とすでに子宮を共有した経験があるという独自の理由を持ち出し、同じタンクに入ることを拒みます。感覚遮断タンクという未知の体験を、遠い昔の胎内での出来事と結びつけて語る発想の飛躍に、このキャラクターらしい思考回路が表れています。深刻な提案をあっさり茶化してしまう切り返しの軽やかさが、この場面の温度をやわらげる一幕です。
普段は科学的な根拠を重んじるシェルドンが、ここでは検証しようのない胎内の記憶を理由に挙げているところも、このやり取りをより印象的にしています。理屈っぽい人物ほど、時々突拍子もない理屈を持ち出すというギャップが、笑いにつながっている場面です。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
暗いトンネルの中を手探りで進み、出口の光が見えるまで歩き続ける様子を思い浮かべてみましょう。渦中にいる間は先が見えなくても、通り抜けた先には必ず出口がある、というのがgo through somethingの芯にあります。
シェルドンが「あれをもう一度経験するのはごめんだ」と拒んだのも、一度通り抜けたトンネルには二度と戻りたくないという気持ちの表れです。同じ道を繰り返し歩きたくない、という感覚とセットで覚えておくと、つらい経験を語る場面でこの表現がすっと出てくるはずです。トンネルの出口にたどり着いたときの安堵感まで想像しておくと、経験を語るときの言葉に自然と実感がこもります。一度通り抜けた道だからこそ、その大変さが具体的に語れるようになる、という順序も一緒に覚えておくとイメージが定着しやすくなります。
例文で覚える「go through something」
つらい経験を語るときによく使われるgo through somethingを、3つの例文で確認していきましょう。
I don’t want to go through that kind of stress again.
(あんなストレスをもう一度経験したくない。)
過去のつらい出来事を振り返る場面です。againを添えることで、同じ経験を繰り返したくないという気持ちがはっきり伝わります。
A: How was your recovery? B: It was rough, but I’m glad I went through it.
(A:回復はどうだった? B:大変だったけど、経験してよかったと思う。)
病気からの回復について話す会話です。glad I went through itのように振り返ることで、つらい経験そのものへの前向きな評価に変わります。
Employees who went through the merger last year still talk about how stressful it was.
(昨年の合併を経験した社員たちは、今でもどれほど大変だったか話している。)
会社の変化を振り返るビジネスの場面です。still talkと組み合わせることで、その経験の影響がまだ残っていることが伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
go through the motions
(心を込めずに形だけ物事をこなす)
go through somethingが実際につらい経験をすることを指すのに対し、こちらは経験するのではなく上っ面だけ形式的にこなすという違いがあります。
go through with something
(計画や約束を最後までやり遂げる)
go through somethingが受動的に経験することを指すのに対し、こちらは自分の意志で計画などを実行し切るという能動的なニュアンスが強くなります。
get through something
(困難を乗り切る、切り抜ける)
go through somethingが経験のプロセス自体を指すのに対し、こちらは乗り越えて終わらせるという達成のニュアンスが強い表現です。
Note|「go through」「go through with」「get through」の使い分け
似た形をした3つの句動詞は、どれも困難と関わる表現でありながら、視点の置き方がそれぞれ異なります。
go through somethingは、渦中にいる時間そのものに焦点を当てた表現です。つらい出来事の真ん中を通り抜けている最中の感覚を運びます。一方でgo through with somethingは、決めていた計画や約束を「最後までやり遂げる」という、自分の意志の強さに焦点があります。結婚式や手術のように、直前で迷いが生じやすい場面で「予定通り実行する」という文脈でよく使われる言い方です。そしてget through somethingは、困難を「乗り越えて終わらせる」という達成の瞬間に重きが置かれ、長いトンネルの出口にたどり着いた安堵感が強く出ます。
シェルドンが避けたかったのは、まさにgo through somethingが表す「渦中にいる感覚」そのものでした。双子の妹と過ごした胎内の状況を、感覚遮断に近いものになぞらえて語る発想自体が、この語がプロセス重視の表現であることを裏付けています。もし彼が「もう一度やり遂げたい」という意味で話していたなら、go through with somethingを選んでいたはずで、動詞ひとつで気持ちの向きがまったく逆になる点も興味深いところです。
似ているようで視点が違う、この3つの動詞の使い分けが見えてくると、経験の語り方に幅が出てきます。
まとめ|経験の真っただ中を歩き抜けるということ
go through somethingは、トンネルの中を通り抜けるように、つらい経験のただ中を進む過程そのものを表す表現です。
病気や離婚、転職など、人生の大きな節目を語るときに、そのプロセス全体を込めて伝えられる言い方です。
同じタンクには入りたくないと独自の理由で渋るシェルドンの姿は、一度通った道を二度と歩きたくないという気持ちを、思いがけない形で言い表していたのですね。


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